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本当の嘘
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本当の、嘘…?
謎掛けのような言葉の意味を、私が導き出すより早く、高嶺くんが私の顔からスッと眼鏡を引き抜いた。
おかしい。
裸眼なのに、高嶺くんの顔がぼやけない。
とことは、つまり─
高嶺くんの鼻が、私の鼻を掠めたところで異変に気付き、勢いよく首を90度に傾けると、ボキボキボキッと首の骨が鳴った。
「…何思い切り避けてんだよ?すごい音したぞ」
「だっ、だって!!高嶺くんこそ何でいきなり!!?」
「…ちょっと『キス』って10回言ってみ?」
パニクる私なんてお構いなしに、また意味不明な命令が下る。
「え?何で??」
「いいから言ってみろって」
何の罰ゲーム?と思いつつも、指折り数えながら、呟く。
「…き、キスキスキスキスキスキスキスキスキスキ、んっ」
最後の「ス」は、音になることなく高嶺くんに食べられた。
「…っ!!?」
「ずっと…お前がちゃんと俺に好きって言えるようになったら、『俺も好きだ』って言ってからしようと思ってたんだよ」
そんなこと。
「知らな…」
「結局俺から告わせやがって。お前なんて一生地味で暗くてダサいまんまでよかったのに」
悪態を吐きながら、高嶺くんはもう一度、さっきより深く唇を重ねた。
夢、みたいだ。
高嶺くんとキスしてるなんて。
高嶺くんが、私を好きだなんて。
一度目はほんの一瞬だったけど。
二度目はちゃんと覚えていたくて、必死に感触を確かめようとした。
上唇と下唇を交互に喰む高嶺くんの唇は、少し乾いている。
緊張、してくれたのかな。
そう考えると、キスだけでいっぱいっぱいの心臓が、バグを起こしそうになる。
高嶺くんが唇をくっつけたまま、私の下顎を引いて口を開けさせた拍子に、大きく息を吸い込んだ。
私の乱れた呼吸に気付いてくれたのかと思ったけれど、違ったらしい。
直後に口内の酸素を押しのけるように、熱く濡れた舌が侵入してきた。
初めての他人の舌の感触に純粋に驚き、思わず頭を後ろに引いてしまうと、すかさず後頭部を抱え込まれてしまった。
「ぅ…」
「もっと口開けて…舌も出せよ」
チュクチュクと水音をさせながら、舌を絡めたり、私の口の中をこれでもかというほど舐め回す。
「ハ…ん、はぁ、んんっ」
ちゃんと覚えてるなんて到底無理なほどの長い長いキス。
ようやく唇を離した頃には、私の口の周りはどちらのものとも分からない涎でベタベタになっていた。
「…ハハッ、情けない顔。そんなんじゃ誰にも会えないな」
高嶺くんは満足そうに笑った後、もう一度キスをしながら呟いた。
「…その顔…俺以外誰にも見せるなよ、絶対」
色々と処理の追いついていない頭を小刻みに縦に振っていると、不意に体が浮かんだ。
「寝室、入っていいか?」
いつも強引なくせに、いちいち聞かないで欲しい。
死ぬほど恥ずかしくて、また頷くことしかできない。
こんなの、「同意します」って言ってるみたいなものだ。
私を抱きかかえたまま、寝室の扉が開かれた。
そのままベッドに押し倒されるのかと思いきや。
高嶺くんは、入り口でフリーズしている。
次の展開を期待しているみたいだけど、恥を忍んで
「あの…どうかした?」
と、聞くしかない。
「…『どうかした?』じゃないだろ。お前、男と住んでたのか?」
ヤバい。
声が、ヤバい。
さっき釘を刺されたときよりも遥かに怖い。
「ない!そんな事あるわけないよ!高校卒業してからずっと一人暮らしだもん」
「じゃあいつでも仕事で気に入った男連れ込めるようにしてるのか?」
自分の台詞に怒髪天を衝かれたように、高嶺くんが私の体をベッドに縫い付けた。
「待っ、そんなことしたことない!」
「じゃあ何でベッドがダブルなんだよ!?」
やっと突然の激昂の理由が分かった。
今にも首筋に噛みつきそうな高嶺くんに向かって必死で叫ぶ。
「誤解だってば!これは瑞希からの誕生日プレゼント!!」
謎掛けのような言葉の意味を、私が導き出すより早く、高嶺くんが私の顔からスッと眼鏡を引き抜いた。
おかしい。
裸眼なのに、高嶺くんの顔がぼやけない。
とことは、つまり─
高嶺くんの鼻が、私の鼻を掠めたところで異変に気付き、勢いよく首を90度に傾けると、ボキボキボキッと首の骨が鳴った。
「…何思い切り避けてんだよ?すごい音したぞ」
「だっ、だって!!高嶺くんこそ何でいきなり!!?」
「…ちょっと『キス』って10回言ってみ?」
パニクる私なんてお構いなしに、また意味不明な命令が下る。
「え?何で??」
「いいから言ってみろって」
何の罰ゲーム?と思いつつも、指折り数えながら、呟く。
「…き、キスキスキスキスキスキスキスキスキスキ、んっ」
最後の「ス」は、音になることなく高嶺くんに食べられた。
「…っ!!?」
「ずっと…お前がちゃんと俺に好きって言えるようになったら、『俺も好きだ』って言ってからしようと思ってたんだよ」
そんなこと。
「知らな…」
「結局俺から告わせやがって。お前なんて一生地味で暗くてダサいまんまでよかったのに」
悪態を吐きながら、高嶺くんはもう一度、さっきより深く唇を重ねた。
夢、みたいだ。
高嶺くんとキスしてるなんて。
高嶺くんが、私を好きだなんて。
一度目はほんの一瞬だったけど。
二度目はちゃんと覚えていたくて、必死に感触を確かめようとした。
上唇と下唇を交互に喰む高嶺くんの唇は、少し乾いている。
緊張、してくれたのかな。
そう考えると、キスだけでいっぱいっぱいの心臓が、バグを起こしそうになる。
高嶺くんが唇をくっつけたまま、私の下顎を引いて口を開けさせた拍子に、大きく息を吸い込んだ。
私の乱れた呼吸に気付いてくれたのかと思ったけれど、違ったらしい。
直後に口内の酸素を押しのけるように、熱く濡れた舌が侵入してきた。
初めての他人の舌の感触に純粋に驚き、思わず頭を後ろに引いてしまうと、すかさず後頭部を抱え込まれてしまった。
「ぅ…」
「もっと口開けて…舌も出せよ」
チュクチュクと水音をさせながら、舌を絡めたり、私の口の中をこれでもかというほど舐め回す。
「ハ…ん、はぁ、んんっ」
ちゃんと覚えてるなんて到底無理なほどの長い長いキス。
ようやく唇を離した頃には、私の口の周りはどちらのものとも分からない涎でベタベタになっていた。
「…ハハッ、情けない顔。そんなんじゃ誰にも会えないな」
高嶺くんは満足そうに笑った後、もう一度キスをしながら呟いた。
「…その顔…俺以外誰にも見せるなよ、絶対」
色々と処理の追いついていない頭を小刻みに縦に振っていると、不意に体が浮かんだ。
「寝室、入っていいか?」
いつも強引なくせに、いちいち聞かないで欲しい。
死ぬほど恥ずかしくて、また頷くことしかできない。
こんなの、「同意します」って言ってるみたいなものだ。
私を抱きかかえたまま、寝室の扉が開かれた。
そのままベッドに押し倒されるのかと思いきや。
高嶺くんは、入り口でフリーズしている。
次の展開を期待しているみたいだけど、恥を忍んで
「あの…どうかした?」
と、聞くしかない。
「…『どうかした?』じゃないだろ。お前、男と住んでたのか?」
ヤバい。
声が、ヤバい。
さっき釘を刺されたときよりも遥かに怖い。
「ない!そんな事あるわけないよ!高校卒業してからずっと一人暮らしだもん」
「じゃあいつでも仕事で気に入った男連れ込めるようにしてるのか?」
自分の台詞に怒髪天を衝かれたように、高嶺くんが私の体をベッドに縫い付けた。
「待っ、そんなことしたことない!」
「じゃあ何でベッドがダブルなんだよ!?」
やっと突然の激昂の理由が分かった。
今にも首筋に噛みつきそうな高嶺くんに向かって必死で叫ぶ。
「誤解だってば!これは瑞希からの誕生日プレゼント!!」
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