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奇襲
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「─森永、さん…?」
戸惑いながら呼びかけると、乗り込んできた方の森永さんが、私の姿を見つけて息を呑んだ。
「…やっぱり!音無静花…!!」
「どう、して…」
森永さんが「音無静花」を認識していたことに驚きを隠せない。
それに、この間事務所に行ったときは全く気づかれなかったのに。
遂に東海林くんの腕を掻い潜った森永さんが、紙袋から取り出したものを投げつけた。
「それ見て思い出したのよ!あと、そのダサい瓶底眼鏡!!」
足元に落ちたものを拾い上げる。
昨日、高嶺くんに渡したお弁当箱。
それも、高校生のころ高嶺くんの為に買ったものだ。
高嶺くんに再会するまで、彼のことを忘れたいと願っていたくせに、これだけはどうしても捨てられなくて、箱に入れてとっておいたのを、引っ張り出してきたものだった。
中は空っぽで、綺麗に洗ってある。
全部食べてくれてる…なんて喜ぶ暇なんてなく。
「よくもまたこんなもので景のことを誑かして…!」
森永さんが私に掴みかかろうとすると、瑞希が立ちはだかり、東海林くんが腕を掴んで止めてくれた。
「落ち着いてください。三角にお話があるようでしたら他のお客様のご迷惑になりますので、別室をご用意します。ただし、冷静にお願いします。受け入れてもらえないなら警察を呼びますよ」
最後の一言が効いたのか、森永さんは大人しく瑞希の案内に従い、社長室へと入って行った。
森永さんの正面に瑞希が、私はその隣に座って、話し合いが始まった。
何かあったとき用に、東海林くんもソファの横に待機している。
「森永さん─でしたっけ?高嶺さんとはどういうご関係なんですか?」
「…何で見ず知らずのあなたにそんなこと答えないといけなのよ?」
二人の間には、いきなりバッチバチに火花が散っている。
天然美人同士の戦いは迫力が凄過ぎて、当事者のはずなのにとても入っていけそうにない。
「失礼しました。私、こちらで代表をしている伊藤瑞希です。私の会社で騒ぎを起こされたからには、ご事情をお聞きする権利くらいあるかと」
「『私の会社』、ねぇ。その辺に転がってる石ころみたいな人間拾ってきて、適当に飾り立てて、結婚させてるんでしょ?本当、ご立派なお仕事ね」
聞き捨てならない台詞に立ち上がろうとする私の膝を、瑞希が押さえて止めた。
「その、『その辺に転がってる石ころみたいな人間』に負けてこんなところまで乗り込んで来た人に言われたくありませんけど」
明らかに小馬鹿にした笑みを浮かべた瑞希に、森永さんの顔がカッと赤くなった。
「う…るさいわね!負けてないわよ!!景がこんな女本気で相手にするとでも思ってんの!?自分の両親が離婚する原因になった女の娘なんて、ありえないでしょう!」
ついさっきまでLove Birds優勢だった部屋の空気がガラッと変わった。
「何を適当なことを…」と言いかけた瑞希を、今度は私が遮った。
「あの…今の、どういう…?」
「何度でも言ってあげるわよ。あんたの母親のせいで景の両親は離婚したのよ」
戸惑いながら呼びかけると、乗り込んできた方の森永さんが、私の姿を見つけて息を呑んだ。
「…やっぱり!音無静花…!!」
「どう、して…」
森永さんが「音無静花」を認識していたことに驚きを隠せない。
それに、この間事務所に行ったときは全く気づかれなかったのに。
遂に東海林くんの腕を掻い潜った森永さんが、紙袋から取り出したものを投げつけた。
「それ見て思い出したのよ!あと、そのダサい瓶底眼鏡!!」
足元に落ちたものを拾い上げる。
昨日、高嶺くんに渡したお弁当箱。
それも、高校生のころ高嶺くんの為に買ったものだ。
高嶺くんに再会するまで、彼のことを忘れたいと願っていたくせに、これだけはどうしても捨てられなくて、箱に入れてとっておいたのを、引っ張り出してきたものだった。
中は空っぽで、綺麗に洗ってある。
全部食べてくれてる…なんて喜ぶ暇なんてなく。
「よくもまたこんなもので景のことを誑かして…!」
森永さんが私に掴みかかろうとすると、瑞希が立ちはだかり、東海林くんが腕を掴んで止めてくれた。
「落ち着いてください。三角にお話があるようでしたら他のお客様のご迷惑になりますので、別室をご用意します。ただし、冷静にお願いします。受け入れてもらえないなら警察を呼びますよ」
最後の一言が効いたのか、森永さんは大人しく瑞希の案内に従い、社長室へと入って行った。
森永さんの正面に瑞希が、私はその隣に座って、話し合いが始まった。
何かあったとき用に、東海林くんもソファの横に待機している。
「森永さん─でしたっけ?高嶺さんとはどういうご関係なんですか?」
「…何で見ず知らずのあなたにそんなこと答えないといけなのよ?」
二人の間には、いきなりバッチバチに火花が散っている。
天然美人同士の戦いは迫力が凄過ぎて、当事者のはずなのにとても入っていけそうにない。
「失礼しました。私、こちらで代表をしている伊藤瑞希です。私の会社で騒ぎを起こされたからには、ご事情をお聞きする権利くらいあるかと」
「『私の会社』、ねぇ。その辺に転がってる石ころみたいな人間拾ってきて、適当に飾り立てて、結婚させてるんでしょ?本当、ご立派なお仕事ね」
聞き捨てならない台詞に立ち上がろうとする私の膝を、瑞希が押さえて止めた。
「その、『その辺に転がってる石ころみたいな人間』に負けてこんなところまで乗り込んで来た人に言われたくありませんけど」
明らかに小馬鹿にした笑みを浮かべた瑞希に、森永さんの顔がカッと赤くなった。
「う…るさいわね!負けてないわよ!!景がこんな女本気で相手にするとでも思ってんの!?自分の両親が離婚する原因になった女の娘なんて、ありえないでしょう!」
ついさっきまでLove Birds優勢だった部屋の空気がガラッと変わった。
「何を適当なことを…」と言いかけた瑞希を、今度は私が遮った。
「あの…今の、どういう…?」
「何度でも言ってあげるわよ。あんたの母親のせいで景の両親は離婚したのよ」
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