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手繰り寄せた奇跡の夜【本編最終章】

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それから私達は、私のお母さんにも挨拶をしに行った。
(お母さんが、高嶺くんのお父さんとのことを思い出してしまって色々と大変だったので、早々に退散したけれど。)

高嶺くんのお父さんにも形だけの挨拶を簡単に済ませ、今日、南の島の教会で、二人だけで式を挙げた。

披露宴は後日。
瑞希がどうしてもと言って聞かないので、日本でする予定だ。

今は、豪華ホテルディナーを、お腹が千切れそうなほど食べた後、腹ごなしに真っ白な砂浜の続くプライベートビーチを二人きりで歩いている。
空には満点の星が輝いていて─

「…幸せ過ぎて、怖い」

波の音でかき消されるほどの小さな独り言を、隣の高嶺くんは聞き逃さなかった。

「出た。静花の幸せ貧乏性」

「だ、だって!」

「いいんだよ、これくらい。慰謝料みたいなもんだから」

「い、慰謝料?」

首をかしげる私に、高嶺くんは砂浜に座って、私にもそうするようにと地面を叩いた。

「この前ちょっとした臨時収入が入ってさ」

「臨時収入??」

「フォレストって会社知ってる?」

「確か…IT関係の、割と老舗の会社だよね?」

「そう、そこ、来望の親の会社なんだよ。昔から黒い噂があって、訴訟依頼もあったけど、利害関係があるから断ってたんだ。でも、今はもう何の関係もなくなったから、な」

間接的に、私の代わりに森永さんに仕返しをしてくれたらしい。

ゾットするほど腹黒い笑み。

森永さんのことなんて、すっかり忘れていたのに。
考えたこともなかったけど、絶対敵に回しちゃダメな人だ。

それにしても…

私なんかに憐れまれたくないだろうけど、
幼馴染で、
周りから付き合ってると誤解されるほどの仲で、
公私ともにずっと支えて来たのに─

地味でダサくて暗くて(以下略)な私に高嶺くん掻っ攫われて。
止めに裁判で実家の会社を敗訴させられるって。

私にしたことを差し引いても森永さん、転生できるレベルで可哀想な気が…(リアル悪役令嬢だし)。

などと、遠い日本にいるであろう森永さんに思いを馳せていたら、不意に肩を引き寄せられた。

「何考えごとしてるんだよ?ハネムーン中だぞ。俺のこと以外考えるなよ」

そのまま唇を重ねようとする高嶺くんを、慌てて押し返す。

「ちょ、ここ、外!人に見られちゃう」

「気にするなよ。暗いし、知り合いがいるわけじゃないんだから」

そう言って強行突破しようとする高嶺くんを止めたのは、聞き覚えのない女性の声だった。

「…その声、もしかして高嶺先生?」
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