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番外編

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“今夜行けるよ”

捕まったのは同じ年の蒼太。
外資系保険会社で営業の仕事をしていて、服のセンスもなかなかいい。
何人かいるお気に入りのの中でもテクも相性・・もトップクラスの一人だ。

良かった。
ほっと胸を撫で下ろす。

でも、不安定な心は、直後に受け取ったメッセージに、すぐにバランスを崩された。

“いつものホテルに10時でいい?”

─ということは、真緒と過ごした部屋になるかもしれない?

…って、何動揺してるの?
あのホテルにはスイートは二部屋あるから、あの日と同じ部屋になるとは限らない。
いや、むしろ同じ部屋で、記憶を上書きしてもらえばいいだけのこと。

テンション高めの承諾スタンプを送って、同じように自分にも言い聞かせた。

けれど─

運悪く、部屋は真緒と過ごしたのと同じ部屋。
そして、全然濡れないカラダ。

濡れる、濡れないの問題ではなく、どこに触れられても違和感が半端ない状態。

「…瑞希、今日なんか調子悪い?」

舐めても、弄っても、一向にナカから潤わないので、蒼太にもバレてしまったらしい。

「ごめん……何か、そうみたい」

「は?何だよそれ。自分から誘っといて」

完全に興醒めさせてしまったらしく、蒼太は服を着て、さっさと帰り支度を始めてしまった。

私自身初めてのことに戸惑い、引き留める言葉も見つからないまま、部屋にぽつんと取り残される。

寂しい。
寂しい。
寂しい。

私、このまま一生一人ぼっちなの?
死ぬまでにあと何回こんな夜を過ごせばいいの?

ロマンチックな夜景。
豪奢な調度品。
広い部屋。
いつもなら胸をときめかせ、気分を盛り上げてくれるはずのそれら全てが、私の孤独を一層煽り立てる。

かと言って、見栄っ張りの私には、こんな時間にチェックアウトする勇気もなくて。

不安と孤独に苛まれ、結局朝まで一睡もできなかった。

「うわ…酷…」

翌朝鏡に映る私の顔色は青白く、充血した目の下にはくっきりとクマがあり、眉間には深い皺が刻まれている。

専用ラウンジで手早くチェックアウトをして、ホテルを出た。
できるだけ人目につかないよう早足で歩き、エントランスを潜ったときだった。

「待ってください、社長!」

聞き覚えのある─でも、ここで、こんな時間にするはずのない声に、思わず足を止めて振り返る。

「真緒!?どうしてここに…?」

言い終える前に、私の体は真緒に抱きすくめられていた。
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