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番外編
11
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ドラマみたいなセリフに、ちょっと強引に私の腕を引っ張る手。
すっかり見慣れた洗練された外見。
それらのせいで真緒も静花と同じタイプだったということをすっかり忘れていた。
思い出したのは、真緒が乗って来たバイクの後ろに乗せられアパートの一室に押し込まれてから。
いや、正確には─
「手、出してください」
玄関で靴も脱がないうちに、指示が飛んだ。
「手?こうでいい?」
握手でもするのかなと片手を差し出すと、思わぬダメ出しを食らった。
「そうじゃなくて。両手。顔の前で合わせて」
言われるがままに、『いただきます』をするように両手を顔の前で合わせた。
─そして、真緒が羽織っていたシャツで私の両手を縛ったときだった。
「えっ、ちょ、何するのよ…っ!?」
私だって真緒にたくさん触れたいのに、これじゃあ思うように動けない。
抗議すると、真緒は至って真面目な顔で返事をした。
「言ったじゃないですか。『攫う』って」
「…って、誘拐の意味だったの!?」
トン、とベッドに転がされると、一気に真緒の匂いに包まれた。
こんな状況なのに、それだけでお腹の奥がキュンと切なく疼く。
「こうでもしないと、あなた、またどこかに飛んで行っちゃうでしょう?」
馬乗りになって呟いた真緒は、既に縛っていた私の両腕を頭上で押さえつけ、唇を奪った。
飢えた獣のような、荒々しいキス。
「ふっ、んんっ…、ハッ」
少し苦しいのに、不思議とすごく気持ちがいい。
絡まり合う舌から、溶けてしまいそうだ。
気づけば自分から強請るように舌を絡ませていた。
「…ほら、好きでもない男とキスしただけでこんなやらしい顔して。いちいち思わせぶりなんですよ。あなたは!」
「…違っ!」
自業自得だ。
真緒はちゃんと気持ちを伝えてくれたのに、私はキスだけで気持ちが通じ合っていた気になっていた。
「何が違うんですか!ついさっきまでこのカラダを、他の男に抱かせてたんでしょう?さっき否定しなかったじゃないですか!!」
「誤解だってば!さっき出て来たとき一人だったでしょう!?」
まだ理性は残っているらしい。
「そう言えば…」
私の言葉に真緒は真顔で首を傾げた後、期待と不安の入り混じった顔で尋ねた。
「…何で、ですか?」
「真緒以外に触られても、気持ちよくならなかったから」
真っ直ぐに目を見て伝える。
真緒も、私の気持ちを見定めようとしているのか逸らさない。
「嘘、だ。そんなワケない」
と言いつつも、私の両手を強く押さえつけていた自分の手を慌てて引っ込めようとした。
それを、すかさず縛られたままの手で捕まえ、引き寄せ、頬擦りをした。
「嘘じゃない。真緒が好きだから。他の男じゃダメだったの」
すっかり見慣れた洗練された外見。
それらのせいで真緒も静花と同じタイプだったということをすっかり忘れていた。
思い出したのは、真緒が乗って来たバイクの後ろに乗せられアパートの一室に押し込まれてから。
いや、正確には─
「手、出してください」
玄関で靴も脱がないうちに、指示が飛んだ。
「手?こうでいい?」
握手でもするのかなと片手を差し出すと、思わぬダメ出しを食らった。
「そうじゃなくて。両手。顔の前で合わせて」
言われるがままに、『いただきます』をするように両手を顔の前で合わせた。
─そして、真緒が羽織っていたシャツで私の両手を縛ったときだった。
「えっ、ちょ、何するのよ…っ!?」
私だって真緒にたくさん触れたいのに、これじゃあ思うように動けない。
抗議すると、真緒は至って真面目な顔で返事をした。
「言ったじゃないですか。『攫う』って」
「…って、誘拐の意味だったの!?」
トン、とベッドに転がされると、一気に真緒の匂いに包まれた。
こんな状況なのに、それだけでお腹の奥がキュンと切なく疼く。
「こうでもしないと、あなた、またどこかに飛んで行っちゃうでしょう?」
馬乗りになって呟いた真緒は、既に縛っていた私の両腕を頭上で押さえつけ、唇を奪った。
飢えた獣のような、荒々しいキス。
「ふっ、んんっ…、ハッ」
少し苦しいのに、不思議とすごく気持ちがいい。
絡まり合う舌から、溶けてしまいそうだ。
気づけば自分から強請るように舌を絡ませていた。
「…ほら、好きでもない男とキスしただけでこんなやらしい顔して。いちいち思わせぶりなんですよ。あなたは!」
「…違っ!」
自業自得だ。
真緒はちゃんと気持ちを伝えてくれたのに、私はキスだけで気持ちが通じ合っていた気になっていた。
「何が違うんですか!ついさっきまでこのカラダを、他の男に抱かせてたんでしょう?さっき否定しなかったじゃないですか!!」
「誤解だってば!さっき出て来たとき一人だったでしょう!?」
まだ理性は残っているらしい。
「そう言えば…」
私の言葉に真緒は真顔で首を傾げた後、期待と不安の入り混じった顔で尋ねた。
「…何で、ですか?」
「真緒以外に触られても、気持ちよくならなかったから」
真っ直ぐに目を見て伝える。
真緒も、私の気持ちを見定めようとしているのか逸らさない。
「嘘、だ。そんなワケない」
と言いつつも、私の両手を強く押さえつけていた自分の手を慌てて引っ込めようとした。
それを、すかさず縛られたままの手で捕まえ、引き寄せ、頬擦りをした。
「嘘じゃない。真緒が好きだから。他の男じゃダメだったの」
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