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番外編
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「お願いだから泣かないでください。あなたに泣かれるとどうしていいか分からない」
こんな風に、ガラス細工を扱うような、慎重な手つきで触れられた経験はあまりない。
イヤではないけど、物足りない。
何より、まだ私の気持ちが伝わっていない気がして。
もっと強く抱きしめて欲しいのに。
「誰のせいだと…!こんなに好きって言ってるのに真緒が信じてくれないからでしょう!!」
腕の中で暴れようとすると、真緒は今度こそ私の体を抱き竦めて叫んだ。
「信じる!信じますから!!」
私を宥めるために、その場凌ぎで言っているようにしか聞こえないけれど。
オロオロと慌てふためく姿に免じて許してあげることにする。
自由になった両手で思いきり抱きしめ返し、頭上の真緒に不敵に笑って見せた。
「よし。じゃ、今からイヤってほど分からせてあげるから覚悟してね」
─なんて宣言したくせに、覚悟するのは私の方だった。
「ぁっ、真緒…ソコばっかヤだぁ!」
「ソコって奥ですか?イヤって言ってる割にグリグリする度にものすごく気持ちよさそうですけど?」
本当は、今日も勃たなかったら口でご奉仕してあげるつもりだったのに。
そんで、私のテクで泣かせてやるつもりだったのに!
前回と同じく私からベッドに押し倒せば、真緒のマオは即臨戦体制で。
『あの時は初めてで緊張してたし、手慣れてるあなたにショック受けてたし。何よりあなた、まだ俺のこと好きじゃなかったでしょう?』
と、言い放たれ、例のバカ丁寧なキスに溶かされ、あっという間に主導権を奪われてしまって、今終盤。
「もっと…声聞かせて…名前、呼んでください。あなたが俺のものだって、信じさせて」
「あっ…あんっ、真緒っ、真緒!!」
すでに私のナカいっぱいに膨張していたものが、更に圧を増す。
「真緒もっ…呼んで!ちゃんと、わた…しの、名前」
「…みず、き…みずき!」
「―――――っっ!」
たった三音。
熱に浮かされたような声に、どうしようもなく満たされ、私が達すると、真緒も一緒に吐精した。
*
「真緒は私がプロデュースしたコ達の中でダントツ覚えがよかったんだよねぇ」
事後、真緒が手渡してくれたミネラルウォーターを啜りながら、しみじみしてしまった。
「必死でしたから。瑞希…さんに少しでも良く思われたくて、陰でかなり努力してました。まっったく相手にされてませんでしたけど」
呼び方さん付けになってるし。
ちょっと嫌味だし。
ついこちらも意地悪になってしまう。
「…じゃあセックスの覚えもこんなに良いってことは、あれから誰かといっぱい練習したってこと?」
わざとちょっと怒った顔をしてみせると、真緒が青ざめて弁解を始めた。
「ご、誤解です!してません!!イメトレしかしてません!!俺には瑞希さんだけですから!!」
お世辞にも広いとは言えない部屋に、大量生産品の家具。
ロマンチックな夜景どころか、とっくに天高く陽が高く登っている。
それでも、最高に心地良い疲労感とミネラルウォーターの冷たさを、私は生涯忘れることはなかった。
もちろん、真緒の隣で。
Hard to say 番外編
The End
こんな風に、ガラス細工を扱うような、慎重な手つきで触れられた経験はあまりない。
イヤではないけど、物足りない。
何より、まだ私の気持ちが伝わっていない気がして。
もっと強く抱きしめて欲しいのに。
「誰のせいだと…!こんなに好きって言ってるのに真緒が信じてくれないからでしょう!!」
腕の中で暴れようとすると、真緒は今度こそ私の体を抱き竦めて叫んだ。
「信じる!信じますから!!」
私を宥めるために、その場凌ぎで言っているようにしか聞こえないけれど。
オロオロと慌てふためく姿に免じて許してあげることにする。
自由になった両手で思いきり抱きしめ返し、頭上の真緒に不敵に笑って見せた。
「よし。じゃ、今からイヤってほど分からせてあげるから覚悟してね」
─なんて宣言したくせに、覚悟するのは私の方だった。
「ぁっ、真緒…ソコばっかヤだぁ!」
「ソコって奥ですか?イヤって言ってる割にグリグリする度にものすごく気持ちよさそうですけど?」
本当は、今日も勃たなかったら口でご奉仕してあげるつもりだったのに。
そんで、私のテクで泣かせてやるつもりだったのに!
前回と同じく私からベッドに押し倒せば、真緒のマオは即臨戦体制で。
『あの時は初めてで緊張してたし、手慣れてるあなたにショック受けてたし。何よりあなた、まだ俺のこと好きじゃなかったでしょう?』
と、言い放たれ、例のバカ丁寧なキスに溶かされ、あっという間に主導権を奪われてしまって、今終盤。
「もっと…声聞かせて…名前、呼んでください。あなたが俺のものだって、信じさせて」
「あっ…あんっ、真緒っ、真緒!!」
すでに私のナカいっぱいに膨張していたものが、更に圧を増す。
「真緒もっ…呼んで!ちゃんと、わた…しの、名前」
「…みず、き…みずき!」
「―――――っっ!」
たった三音。
熱に浮かされたような声に、どうしようもなく満たされ、私が達すると、真緒も一緒に吐精した。
*
「真緒は私がプロデュースしたコ達の中でダントツ覚えがよかったんだよねぇ」
事後、真緒が手渡してくれたミネラルウォーターを啜りながら、しみじみしてしまった。
「必死でしたから。瑞希…さんに少しでも良く思われたくて、陰でかなり努力してました。まっったく相手にされてませんでしたけど」
呼び方さん付けになってるし。
ちょっと嫌味だし。
ついこちらも意地悪になってしまう。
「…じゃあセックスの覚えもこんなに良いってことは、あれから誰かといっぱい練習したってこと?」
わざとちょっと怒った顔をしてみせると、真緒が青ざめて弁解を始めた。
「ご、誤解です!してません!!イメトレしかしてません!!俺には瑞希さんだけですから!!」
お世辞にも広いとは言えない部屋に、大量生産品の家具。
ロマンチックな夜景どころか、とっくに天高く陽が高く登っている。
それでも、最高に心地良い疲労感とミネラルウォーターの冷たさを、私は生涯忘れることはなかった。
もちろん、真緒の隣で。
Hard to say 番外編
The End
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えむ3さん、ありがとうございます✨
ショージくんにはこれからも瑞希に振り回されっ放しでいて欲しいですね😅
新作は、あまり期間を空けないよう頑張りまーす。その時はまた応援よろしくお願いします(^人^)
早速ありがとうございます😊
瑞希は根っからの女王様気質なので、思い切りワガママ言える相手と幸せになって欲しくて。落ち着くとこに落ち着かせられて一安心です。
静花の結婚式での二人の様子も書けたら良かったんですが、体力的に限界で、最後駆け足気味になってしまいました。
少しでも楽しんでいただけたなら頑張った甲斐がありました✨
応援ありがとうございました!
朝ですけど!朝だからこそ!!w
よく考えたら静花とタカミネも朝から盛り上がってましたからね。
でも、ショージくんはショージくんなので、このまま終わるんでしょうか´д` ;