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恋人の条件
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言われたのと同時に、腕と腰を掴まれ。壁際に追い込まれた。
続いて迫ってくる夏目さんの顔を慌てて避ける。
「そ、そういう意味じゃなくて!」
「じゃあどういう意味だよ。人のこと散々煽っといて」
「煽ってなんて…!」
「俺の過去には眉ひとつ動かさないくせに、自分は『キスくらい』なんて平然と言って退けるって…煽ってる以外ないだろう!」
そんなこと言われても。
夏目さんには一哉とのことも話してしまっているのに、今更純情ぶるのは何か違うし。
実際、夏目さんだってそれなりに遊んでるくせに、変に謝ったり照れたりするからおかしなことになってるんだし。
「なっ、夏目さんってそんなキャラでしたっけ!?」
「俺も今日初めて知ったよ。相手が例え弟であっても、凛と同じ布団で寝るなんて我慢ならないくらい嫉妬深いなんてな」
「そんな、他人事みたいに!」
「仕方がないだろう。惚れた女が手に届くところにいること自体、俺にとっては奇跡みたいなものなんだから」
ああ、嫌だ。
今度は気のせいなんかじゃない。
はっきりと、強烈に胸が痛む。
人のことを散々責めておいて、自分の方がよっぽど性質が悪いじゃない。
私は、一哉とのことは完全に過去のことなのに。
この年になるまで好きな相手とキスしたことすらないなんて、どれだけ好きだったのよ、そのコのこと。
なのに、私なんかが好きって本当なの?
夏目さん、本当は、まだそのコのこと好きなんじゃないの?
そう思うと、どうしようもなく腹が立って─
「いいですよ、キスくらい」
苛立ちを隠すことなく、ほとんど喧嘩腰に吐き捨てると、夏目さんは小さく舌打ちをしてから、私の背中を壁に押し付け、唇に食らいついた。
「ん…ぅう…っ、ハ…むっ」
さっき、漣の前でしたキスとは全然違う。
深くて、激しい。
頬の内側も、上顎も、大きな舌で撫で回されて、上手く息ができない。
段々頭がクラクラしてくる。
酸欠一歩手前のところでやっと唇は離されたけれど、熱を帯びた目は私を捉えたまま離さない。
「凛のせいだからな」
夏目さんはそう呟いて、私の体を掬い上げた。
そのまま日当たりの良い寝室に運ばれ、なだれ込むようにベッドに押し倒された。
制止の言葉を言わせまいと、再び激しいキスが降り注ぐ。
ダメなのに、嫌じゃない。
むしろ、強く求められていることが、気持ちいい。
このまま心も体も溶けあいたい。
そして、夏目さんの中からあのコの存在を消し去ってしまいたい。
そんなことを考えてしまうなんて、自分で思っているよりずっと、夏目さんのことが好きなのだと気付かされる。
いい大人同士が付き合っているんだから、遅かれ早かれ体の関係には進むんだし。
だったら早い方がいい。
変にオアズケして、後戻りできないほど好きになってからコトに及んでダメだったとき、傷つくのは私の方だ。
私たちがこのまま付き合っていけるかいけないか。
全ては夏目さん次第。
夏目さんの唇が首筋を伝い始め、漸く自由になった口を動かす。
「…つめ、さんっ」
呼びかけても聞こえないふりをしているのか、夏目さんは首筋を舐めたり甘噛みしたりするのを止めてくれない。
「部屋…明るいっの、ヤだッ」
くすぐったさを堪えて、何とか絞り出すと、夏目さんはサイドテーブルにあったリモコンに手を伸ばした。
驚いたことに、自動でカーテンが閉まり、部屋は薄暗くなった。
第一段階は、クリアだ。
「あと…上の服は脱がさないで。…胸、コンプレックスなんです。お願い、します」
続いて迫ってくる夏目さんの顔を慌てて避ける。
「そ、そういう意味じゃなくて!」
「じゃあどういう意味だよ。人のこと散々煽っといて」
「煽ってなんて…!」
「俺の過去には眉ひとつ動かさないくせに、自分は『キスくらい』なんて平然と言って退けるって…煽ってる以外ないだろう!」
そんなこと言われても。
夏目さんには一哉とのことも話してしまっているのに、今更純情ぶるのは何か違うし。
実際、夏目さんだってそれなりに遊んでるくせに、変に謝ったり照れたりするからおかしなことになってるんだし。
「なっ、夏目さんってそんなキャラでしたっけ!?」
「俺も今日初めて知ったよ。相手が例え弟であっても、凛と同じ布団で寝るなんて我慢ならないくらい嫉妬深いなんてな」
「そんな、他人事みたいに!」
「仕方がないだろう。惚れた女が手に届くところにいること自体、俺にとっては奇跡みたいなものなんだから」
ああ、嫌だ。
今度は気のせいなんかじゃない。
はっきりと、強烈に胸が痛む。
人のことを散々責めておいて、自分の方がよっぽど性質が悪いじゃない。
私は、一哉とのことは完全に過去のことなのに。
この年になるまで好きな相手とキスしたことすらないなんて、どれだけ好きだったのよ、そのコのこと。
なのに、私なんかが好きって本当なの?
夏目さん、本当は、まだそのコのこと好きなんじゃないの?
そう思うと、どうしようもなく腹が立って─
「いいですよ、キスくらい」
苛立ちを隠すことなく、ほとんど喧嘩腰に吐き捨てると、夏目さんは小さく舌打ちをしてから、私の背中を壁に押し付け、唇に食らいついた。
「ん…ぅう…っ、ハ…むっ」
さっき、漣の前でしたキスとは全然違う。
深くて、激しい。
頬の内側も、上顎も、大きな舌で撫で回されて、上手く息ができない。
段々頭がクラクラしてくる。
酸欠一歩手前のところでやっと唇は離されたけれど、熱を帯びた目は私を捉えたまま離さない。
「凛のせいだからな」
夏目さんはそう呟いて、私の体を掬い上げた。
そのまま日当たりの良い寝室に運ばれ、なだれ込むようにベッドに押し倒された。
制止の言葉を言わせまいと、再び激しいキスが降り注ぐ。
ダメなのに、嫌じゃない。
むしろ、強く求められていることが、気持ちいい。
このまま心も体も溶けあいたい。
そして、夏目さんの中からあのコの存在を消し去ってしまいたい。
そんなことを考えてしまうなんて、自分で思っているよりずっと、夏目さんのことが好きなのだと気付かされる。
いい大人同士が付き合っているんだから、遅かれ早かれ体の関係には進むんだし。
だったら早い方がいい。
変にオアズケして、後戻りできないほど好きになってからコトに及んでダメだったとき、傷つくのは私の方だ。
私たちがこのまま付き合っていけるかいけないか。
全ては夏目さん次第。
夏目さんの唇が首筋を伝い始め、漸く自由になった口を動かす。
「…つめ、さんっ」
呼びかけても聞こえないふりをしているのか、夏目さんは首筋を舐めたり甘噛みしたりするのを止めてくれない。
「部屋…明るいっの、ヤだッ」
くすぐったさを堪えて、何とか絞り出すと、夏目さんはサイドテーブルにあったリモコンに手を伸ばした。
驚いたことに、自動でカーテンが閉まり、部屋は薄暗くなった。
第一段階は、クリアだ。
「あと…上の服は脱がさないで。…胸、コンプレックスなんです。お願い、します」
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