"氷雪の爪"へようこそ!

がるふ

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幻想世界での光

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「どうした?リュウ」
「この本に宿ってる魔法が強くなった感じがしてびっくりしてさ」
「成長する本……だな。まさに」
「強くなった魔法試してみるよ」

(僕たちの周りに魔物がいないか調べてくれないか)

[索敵を開始します]

声が響いた後に赤い点が視界に映り始めた。

「うまくいったみたい」
「やったな!疲れたら言ってくれよ?」
「了解。辛くなったら教える」

少し先に赤の点が集まっているところが見えてくるも赤い点が少しずつ近づいてくることに気づいた
ちょうど目の前に見えていた小高い丘の向こう側だった。

「ラウ。目の前の丘の向こうから4体なんか近づいてきてる」
「あの丘の向こう側までわかるのか!?頼もしいな!」

ラウドは目を輝かせて期待と尊敬のまなざしを向けてくれた。
その丘は俺から300メートル先くらいにあり、丘の周りに沿って道が整地されていた。
曲がった先は見えないが曲がった先の方に赤い点が4つあり近づいてきていた。

「警戒しながら進むぞ!リュウ」
「了解!」

少し歩くと赤い点の正体が見えてきた。
緑色の肌に粗末な剣と盾に低めの背丈。

「ラウ。あれはゴブリン?」
「んー。そうだな。あってる。ゴブリンの記憶はあるんだな。会ったことあったか」
「多分強くなった魔法のおかげ……かな?」
「ほんとに心強い魔法だな」
(またやってしまった……。迂闊にゲームの記憶を口に出せないな)

「ささっと片付けるぜ!リュウ構えろ!」
「了解!」

腰に差していたオークスの森で拾った木の棒を抜き取り
迫ってくるゴブリン達を見据える。

「リュウ!俺が仕留めそこなったゴブリンのけん制頼んだぜ」
「精一杯やるよ!」

そういうとラウドは大剣を構えてゴブリンに向かって走っていく。
ゴブリン達は俺らを見つけるとギャギャと鳴き声を上げて走ってくる。
わりと早い足に気持ち悪さと驚きを覚えるもしっかりラウドの動きを確認する。
ラウドの一太刀目は一薙ぎでゴブリンを2体吹き飛ばし行動不能にした後、飛び掛かってきた3体目のゴブリンを下から切り上げ無力化する。
4体目のゴブリンはあっさり味方がやられ逃げようとしていた。

「止まれ!逃がさない!」
頭の中で冒険者のカードイメージするとカードが目の前にパッと現れた。その瞬間無意識にのゴブリンへ手を伸ばしていた手からカードが移動しすさまじい速さで飛んでいった。
ゴブリンまで飛んでいき光ると突然恐怖を覚えたかのように足を震わして動けなくなっていた。

「そらっ!」
すかさずラウドが距離を詰めてとどめを刺す

「やったな!リュウ!助かったぜ!」
「力になれてよかったよ!」
「リュウ!ハイタッチ!」

ラウドは俺に手の平を向け満面の笑みで待つ
ハイタッチか……前世ではあんまり経験する機会がなかった自分にはとてもうれしく感じる。
新しい人生を歩み始めてこんなに早く経験することに複雑さを感じながらもラウドの手のひらへハイタッチする。

「それにしても普段なら魔物に出会うこと自体珍しい道なのに…。帰ったらギルドに報告だな」

ラウは大剣を鞘に戻し、あごに手を当て考え込んだ。

そういえばゲームの中のラウドは道の異常や自然の中の違和感をギルドへ報告する義務があって
それに沿った調査をギルドが執り行っているってNPCが言っていたな。

ん?……大工の村ドルガン……ゴブリン……。
そうだ!ゲームでゴブリンの異常発生スタンピードが起こるイベントがあったな。
それと何か関係あるかもしれない。
この地域でゴブリンがどこに生息してるか確認してみるか。

「なぁラウ。」
「どうした?リュウ」
「ゴブリンはこの地域によくいるのか?」
「いや。俺が知る限りここら辺は穏やかで野生の動物が豊富にいる貴重な地域なんだゴブリンはもっとダンジョンの近くにいるからこの近くにはいないはずなんだよな」

ダンジョン……。
確かそんなのあったな。何て名前だったか……。
うーん。思い出せないのが歯がゆい。

「ダンジョンの近く?」
「あーそうか。リュウはダンジョンの記憶も無いのか。この大陸フレラントには烈風の谷ハリケーンバレーがあるんだ」


烈風の谷ハリケーンバレー
そうだ。風のギミックがめんどくさいダンジョンだ。

「名前だけで風が凄そうなのがわかるな。」
「だよなー。あそこには俺も行ったことあるけど毛が砂まみれになるから帰ってきた時がめんどくさいんだよ」

砂まみれの自分を思い出したのか体毛の汚れを払うように手を動かし始める。

「毛皮だと砂取るの大変そうだね。」
「他人事みたいに言うなー。本当に大変なんだからな!」

ラウドがぐりぐりと俺の頭を固定する。
手加減はしているのがわかるけどそれなりにいたい。

「いたたた。やめてぇー」

お互いに笑いあった後談笑しながら街道を歩いていると”大工の村ドルガン”と書かれた看板が見えてきた。
その先には光がともっている木の家がいくつも建って俺たちを迎え入れてくれた。
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