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肩を大きく揺らし、荒い息を繰り返しながら、彼の動きが止まった。
私は身をよじらせると、彼の腕から逃れ、口の布を取り起き上がる。
頬を伝う涙がシーツへ落ちると、乱れたシーツをギュッと握った。
「うぅッッ、パトリック、どうして……こんなことを……どうして……ッッ」
私は顔を逸らせ首を垂れると、後悔と罪の意識に苛まれる。
どうしてこんなことに……?
どうして彼は私を抱いたの?
私以外の女性を選んだ彼が、どうしてこんなことをするの?
私たちは姉弟で家族、愛情としてならばいきすぎている行為。
ぐるぐると同じ言葉が何度も浮かぶが答えは出ない。
姉として私を好いてくれているのは知っている。
だけどそれは恋情ではないのもわかっている。
なのにどうして……。
何が何だかさっぱりわからない。
だけどはっきりと言えるのは、私がパトリックに抱かれたと知られ、ウェインの家と関係が悪く
なれば、家に迷惑がかかる
それに家族として育ててくれた私が、彼とこんな関係になってしまったとわかれば……父と母はショックを受けるだろう。
ここまで育ててくれた恩を仇で返すことになってしまう。
そうわかっているのに、どんな理由であれ、彼が私を求めてくれた、それを嬉しいと感じる自分が情けない。
「ねぇさん、胸元を見て」
パトリックは谷間を指さすと、そこには赤い花びらがいくつも浮かんでいる。
これってまさかキスマーク……いつのまに!?
まるで彼の物だと知らしめているように、あちらこちらに散らばっていた。
「なっ、そんなどうして……ッッ」
「ふふん、あいつがそれを見たらなんて思うかな?消えるまで数日はかかるよ」
パトリックはニヤリと黒い笑みを浮かべると、赤い花びらへ唇を寄せる。
私の体を引き寄せると、チュッと吸い付いた。
「あっ、やぁッッ」
先ほども感じたチリッとした痛みが走り、また花びらが増える。
慌てて彼を引きはがすと、青い瞳がこちらを見上げた。
「僕に抱かれたと知ったら、あいつはなんて思うかな?」
挑発的な言葉に、私はグッと拳を握りしめると彼を睨みつける。
パトリックは一体どうしたいの?
早く離れたいのに……逃げたいだけなのに……。
彼が婚約してしまう前に。
なのにどうして、こんなことするの……。
私のものにならないのに、どうして……!!!
パトリックと繋がってしまったこの体では、普段の私ならもう彼に会えない、合わす顔がない。
けれどここで引くわけにはいかないの。
最低だとわかっていても、彼が婚約するまでに逃げ出さなければ、私が壊れてしまう。
そっと胸に浮かび上がる花びらへ触れると、怒りの奥から嬉しさがこみ上げる。
こんな状況下で、私は何を考えているのかしら。
なんて愚かで浅ましいのだろうか。
自分本位な私は、彼と同等の立場ではない。
男爵家の令嬢……いわば格下。
公爵家のご令嬢に勝てるはずなどない。
悔しさと惨めさに涙がまた溺れ落ちると、シーツの上にポタポタ落ちる。
彼の隣に並ぶのは私じゃない。
私は声を殺しポロポロ涙をこぼすと、顔を上げられなかった。
「泣かないでねぇさん、ごめんね」
彼の手が頭に触れると、その手が微かに震えていた。
子供の頃とは違う、大きく骨ばったその手。
触れられただけで嬉しいと、胸が高鳴ってしまうのだ。
そっと顔を上げると、青い瞳を見上げる。
彼は頬に伝う涙を親指で救い上げると、体を寄せ私を抱きしめた。
幼いころとは違う、たくましい体。
ドクドクと心拍数が上がると、私は慌てて彼の胸を押し返した。
この高鳴りに気が付かれてはいけないから。
プルプルと首を横へ振り離れようとすると、パトリックは傷ついた表情をみせたのだった。
私は身をよじらせると、彼の腕から逃れ、口の布を取り起き上がる。
頬を伝う涙がシーツへ落ちると、乱れたシーツをギュッと握った。
「うぅッッ、パトリック、どうして……こんなことを……どうして……ッッ」
私は顔を逸らせ首を垂れると、後悔と罪の意識に苛まれる。
どうしてこんなことに……?
どうして彼は私を抱いたの?
私以外の女性を選んだ彼が、どうしてこんなことをするの?
私たちは姉弟で家族、愛情としてならばいきすぎている行為。
ぐるぐると同じ言葉が何度も浮かぶが答えは出ない。
姉として私を好いてくれているのは知っている。
だけどそれは恋情ではないのもわかっている。
なのにどうして……。
何が何だかさっぱりわからない。
だけどはっきりと言えるのは、私がパトリックに抱かれたと知られ、ウェインの家と関係が悪く
なれば、家に迷惑がかかる
それに家族として育ててくれた私が、彼とこんな関係になってしまったとわかれば……父と母はショックを受けるだろう。
ここまで育ててくれた恩を仇で返すことになってしまう。
そうわかっているのに、どんな理由であれ、彼が私を求めてくれた、それを嬉しいと感じる自分が情けない。
「ねぇさん、胸元を見て」
パトリックは谷間を指さすと、そこには赤い花びらがいくつも浮かんでいる。
これってまさかキスマーク……いつのまに!?
まるで彼の物だと知らしめているように、あちらこちらに散らばっていた。
「なっ、そんなどうして……ッッ」
「ふふん、あいつがそれを見たらなんて思うかな?消えるまで数日はかかるよ」
パトリックはニヤリと黒い笑みを浮かべると、赤い花びらへ唇を寄せる。
私の体を引き寄せると、チュッと吸い付いた。
「あっ、やぁッッ」
先ほども感じたチリッとした痛みが走り、また花びらが増える。
慌てて彼を引きはがすと、青い瞳がこちらを見上げた。
「僕に抱かれたと知ったら、あいつはなんて思うかな?」
挑発的な言葉に、私はグッと拳を握りしめると彼を睨みつける。
パトリックは一体どうしたいの?
早く離れたいのに……逃げたいだけなのに……。
彼が婚約してしまう前に。
なのにどうして、こんなことするの……。
私のものにならないのに、どうして……!!!
パトリックと繋がってしまったこの体では、普段の私ならもう彼に会えない、合わす顔がない。
けれどここで引くわけにはいかないの。
最低だとわかっていても、彼が婚約するまでに逃げ出さなければ、私が壊れてしまう。
そっと胸に浮かび上がる花びらへ触れると、怒りの奥から嬉しさがこみ上げる。
こんな状況下で、私は何を考えているのかしら。
なんて愚かで浅ましいのだろうか。
自分本位な私は、彼と同等の立場ではない。
男爵家の令嬢……いわば格下。
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悔しさと惨めさに涙がまた溺れ落ちると、シーツの上にポタポタ落ちる。
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私は声を殺しポロポロ涙をこぼすと、顔を上げられなかった。
「泣かないでねぇさん、ごめんね」
彼の手が頭に触れると、その手が微かに震えていた。
子供の頃とは違う、大きく骨ばったその手。
触れられただけで嬉しいと、胸が高鳴ってしまうのだ。
そっと顔を上げると、青い瞳を見上げる。
彼は頬に伝う涙を親指で救い上げると、体を寄せ私を抱きしめた。
幼いころとは違う、たくましい体。
ドクドクと心拍数が上がると、私は慌てて彼の胸を押し返した。
この高鳴りに気が付かれてはいけないから。
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