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5平穏と悲劇
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あの事件があってから3年……私は立派な引きこもりになっていた。
母にはあの夜会で私が知らない男と寝た事実はばれていない。
はぁ……まったく外へ出ると本当に碌なことがない。
こうやって部屋に籠って魔道具を触っている事が何よりの幸せだ。
あの事件後、姉が母を説得してくれたようで、パーティーや夜会へ参加しろと言われる事はなくなった。
今まで婚約者を作れだの、交友関係を広めろだの、との言葉が嘘のように母は何も言わなくなったんだ。
そして外出することもないから、あの男と再会する事もなく、穏やかな日常を過ごしている。
あぁ、姉様に相談して本当によかった。
カチャガチャと鉱石に触れる中、今日も部屋へ引きこもり魔道具を造りに生をだす。
ガリガリガリ、シュシュバリン。
えーと、ここがこうなるから……。
いやっ、待てよ、やっぱりこっちのほうが発動させやすいか。
ガチャバリッ、キュッギュッ
バァーン!!!
「できた!」
「もう!いつまで部屋に引きこもっているつもりなの!」
私が作っていた魔道具の完成音と、母が扉を開けた音が重なった。
「こんなに可愛く生んであげたのに、毎日毎日部屋に引きこもって魔道具を作ってばかり……。ある程度成果を出しているのも知ってるわ!でもね、あなたは女性なの!いつかはちゃんと公爵家の娘として結婚を考えるだろうと思って見守っていたけど、そろそろ限界よ!!!」
ヒステリックな叫び声に、慌てて後ろを振り返ると、鬼の形相をした母が真後ろで仁王立ちをしていた。
「あなた今いくつだと思っているの?20歳よ!いき遅れもいいところなのよ!昔っから夜会にも全然参加しない、婚約者も作らない!エイミーが言うから黙っていたけれど、あぁ!!もう!!」
キーンと響くその声に、私は徐に背筋を伸ばすと、手を膝の上に置き、首を垂れる。
「エイミーは王子と結婚したし、弟も婚約者を作り結婚は目前よ!残りはあなただけよ」
耳が痛い、ここまで怒るのは久しぶりだな。
まぁでもいつもの事だ、と私は黙って静々と母の小言に耳を傾けていると、次第に母の声のトーンが落ちていった。
そんな母の様子にチラッと視線を向けると、真剣な表情でこちらをじっと見据えていた。
「今すぐ決断しなさい。結婚するか、教師になるか」
うん?結婚か先生?なんだその二択。
「ほら、早く決めなさい。さもないと、その手にしている魔法道具を叩き割るわよ」
その言葉に私は膝の上に置いていた魔道具を素早く背中に隠すと、気不味げに視線を逸らせた。
「え……と、結婚と先生なら……先生がいいです」
母の剣幕に圧倒され、ビクビクしながらもなんとかそう言葉を絞り出す。
「よし、決まりね。明日は出掛ける準備をしておきなさい」
バタンッ
勢いよく扉が閉まり、嵐が去った事に、ふぅと息を吐きだすと、私はまた魔道具を作り始めた。
翌朝いつものように目覚めると、またも鬼の形相した母が佇んでいた。
私はビクビクしながら起き上がると、とりあえずベットの上で徐に正座をしてみる。
昨日、湯あみ後にすぐに寝てしまった為、髪はボサボサだ。
加えて、作業着のまま寝ていたため服は皺皺になっていた。
「昨日言ったわよね?出かける準備をしなさいと……。まだベッドに居るのはどうしてなのかしら?」
「あー、えーと、これで出かけます!」
私はそばにあったローブを勢いよくかぶると、母に苦笑いを浮かべた。
「ふーん、まぁいいわ。さっさと立ちなさい!」
えっ、いいの!?
呆然と母を眺めていると、早くしなさい!!!と怒鳴り声が部屋に響いた。
私は母に言われるままに屋敷を出ると、急ぎ足で母の後を追いかける。
久しぶりに浴びる太陽の光に目がくらむと、母はあきれた表情を見せ私の手を強く引っ張る。
そのまま馬車へ押し込まれると、私はゆらゆらと運ばれていった。
母にはあの夜会で私が知らない男と寝た事実はばれていない。
はぁ……まったく外へ出ると本当に碌なことがない。
こうやって部屋に籠って魔道具を触っている事が何よりの幸せだ。
あの事件後、姉が母を説得してくれたようで、パーティーや夜会へ参加しろと言われる事はなくなった。
今まで婚約者を作れだの、交友関係を広めろだの、との言葉が嘘のように母は何も言わなくなったんだ。
そして外出することもないから、あの男と再会する事もなく、穏やかな日常を過ごしている。
あぁ、姉様に相談して本当によかった。
カチャガチャと鉱石に触れる中、今日も部屋へ引きこもり魔道具を造りに生をだす。
ガリガリガリ、シュシュバリン。
えーと、ここがこうなるから……。
いやっ、待てよ、やっぱりこっちのほうが発動させやすいか。
ガチャバリッ、キュッギュッ
バァーン!!!
「できた!」
「もう!いつまで部屋に引きこもっているつもりなの!」
私が作っていた魔道具の完成音と、母が扉を開けた音が重なった。
「こんなに可愛く生んであげたのに、毎日毎日部屋に引きこもって魔道具を作ってばかり……。ある程度成果を出しているのも知ってるわ!でもね、あなたは女性なの!いつかはちゃんと公爵家の娘として結婚を考えるだろうと思って見守っていたけど、そろそろ限界よ!!!」
ヒステリックな叫び声に、慌てて後ろを振り返ると、鬼の形相をした母が真後ろで仁王立ちをしていた。
「あなた今いくつだと思っているの?20歳よ!いき遅れもいいところなのよ!昔っから夜会にも全然参加しない、婚約者も作らない!エイミーが言うから黙っていたけれど、あぁ!!もう!!」
キーンと響くその声に、私は徐に背筋を伸ばすと、手を膝の上に置き、首を垂れる。
「エイミーは王子と結婚したし、弟も婚約者を作り結婚は目前よ!残りはあなただけよ」
耳が痛い、ここまで怒るのは久しぶりだな。
まぁでもいつもの事だ、と私は黙って静々と母の小言に耳を傾けていると、次第に母の声のトーンが落ちていった。
そんな母の様子にチラッと視線を向けると、真剣な表情でこちらをじっと見据えていた。
「今すぐ決断しなさい。結婚するか、教師になるか」
うん?結婚か先生?なんだその二択。
「ほら、早く決めなさい。さもないと、その手にしている魔法道具を叩き割るわよ」
その言葉に私は膝の上に置いていた魔道具を素早く背中に隠すと、気不味げに視線を逸らせた。
「え……と、結婚と先生なら……先生がいいです」
母の剣幕に圧倒され、ビクビクしながらもなんとかそう言葉を絞り出す。
「よし、決まりね。明日は出掛ける準備をしておきなさい」
バタンッ
勢いよく扉が閉まり、嵐が去った事に、ふぅと息を吐きだすと、私はまた魔道具を作り始めた。
翌朝いつものように目覚めると、またも鬼の形相した母が佇んでいた。
私はビクビクしながら起き上がると、とりあえずベットの上で徐に正座をしてみる。
昨日、湯あみ後にすぐに寝てしまった為、髪はボサボサだ。
加えて、作業着のまま寝ていたため服は皺皺になっていた。
「昨日言ったわよね?出かける準備をしなさいと……。まだベッドに居るのはどうしてなのかしら?」
「あー、えーと、これで出かけます!」
私はそばにあったローブを勢いよくかぶると、母に苦笑いを浮かべた。
「ふーん、まぁいいわ。さっさと立ちなさい!」
えっ、いいの!?
呆然と母を眺めていると、早くしなさい!!!と怒鳴り声が部屋に響いた。
私は母に言われるままに屋敷を出ると、急ぎ足で母の後を追いかける。
久しぶりに浴びる太陽の光に目がくらむと、母はあきれた表情を見せ私の手を強く引っ張る。
そのまま馬車へ押し込まれると、私はゆらゆらと運ばれていった。
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