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第五章
新章2:船旅編
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彼らと過ごした懐かしい暮らしが脳裏によみがえる中、私はほっと一息つくと、今一度魔力を感じてみる。
やっぱり……魔法は使えそうにないわね。
色々試してみるが……どうも魔力を一点に集中させることが出来ない。
だけど……呪文での魔法は可能なのね。
試しにオールと唱えてみると、手のひらに小さな光が浮かびあがった。
う~ん……でもエヴァンに教えてもらった呪文は少ないわ。
呪文について色々と説明してくれた記憶はあるのだけれど……実際に唱えた事があるのは、この三種の呪文だけ。
あぁ……もっと呪文について、しっかり聞いておくべきだったわ……。
でもねぇ……イメージすればどんな魔法でも使えるのよ……。
それならわざわざ呪文なんて必要ないと思ったのよね……。
はぁ……まさかこんなところで……必要になる日がくるなんて……。
まぁでも……魔法が使えない事は不安だけれど……遣い魔もこの船内では使えないようだし……危険はないかな…。
うん、そう信じましょう……。
よしっ……とりあえず黒蝶も送った事だし、今日はもう休みましょう。
私は小さく息を吐き出しながらに、脱衣所へと足を向けると、疲れを洗い流す為に浴槽へと向かった。
そうして翌朝目覚めると、目の前にはなぜかシナンの姿がぼんやりと浮かび上がる。
あれ……シナン……珍しいわね。
いつも私が目覚めた時は寝ているか……一階へおりているのに……。
ぼうっとする意識の中、微かな揺れを感じると、いつもとは違う部屋の匂いに気が付いた。
ここは……そうだわ、船の中……。
眠気眼を擦りながらによく見てみると、やはりシナンで間違いないようだ。
うん?……シナンは別の部屋で眠ったはず……うぅぅん!?
「きゃっ、えっ、なんで!?どうしてシナンがここにいるの!?」
あまりの驚きにベッドから飛び起きると、シナンはパッと目を輝かせながらに笑みを浮かべてみせた。
「おはようございます、よく眠れましたか。あの……朝食の準備が整っているようなので、起こしに来ました」
「えっ、ありがとう。いやいや……カギは閉めていたはずよね!?」
「えへへ、鍵は受付の方からスペアーを借りてきたんです」
シナンは徐にカギを取り出すと、私の前に差し出してみせる。
ちょっとそんな簡単にスペアーキーを渡しちゃうの!?
「ちょ、ちょっとダメよシナン。人の部屋へ勝手に入ってはいけないわ」
「えっ……だって……僕、お姉さんが居なくて寂しくて……早く顔を見たかったんです……。その……ごめんなさい」
シナンは悲しそうな瞳を浮かべながらに、ギュッとカギを握りしめると、耳が萎れ、尻尾がシュンと力なく落ちていく。
その姿に胸の奥がキュンッと高鳴ると、私は可愛さのあまりに思わずシナンを抱きよせた。
するとシナンは嬉しそうに顔を埋めてみせると、尻尾が嬉しそうに揺れていた。
あぁ、可愛すぎるわ……どうしましょうこの子。
やっぱり同じ部屋に……いやいやダメよ、ダメ!
しっかりしなさい自分!
ここは厳しくいかないと……この先シナンと離れることになっても、彼が大丈夫なように……。
私はそう自分に言い聞かせると、準備をするからと彼を部屋から追い出したのだった。
そうしてシナンと一緒に船内にあるレストランルームへとやってくると、そこにはドレスを来た貴族女性や、正装姿の男性たちがテーブル席を囲んでいた。
ローブ姿で来た私たちは明らかに浮いた存在のようだ。
突然に現れた私たちの姿に失笑する声が耳に届く中、空席を見つけると、シナンの手を取り腰かける。
隣のテーブルには、真っ赤なドレスをきた妙齢な美しい女性と、渋い男性が訝し気な瞳を浮かべ、不快な様子を見せる。
そんな二人は何やらコソコソと話し始めると、料理が半分も食べきらないままに席を立っていった。
うぅ……気まずいわね。
まぁ……ここいる人たちを見る限り、誰が見てもこの姿は場違いよね……。
はぁ……でもドレスなんて持ってきていないし、ここは開き直るしかないわ。
さっさと済ませて、ここを出ましょう。
そう気を持ち直すと、私は運ばれてくる朝食を急いで口へと運んでいった。
そういえばカミールはどうなのかしら?
私はパンを一口サイズにちぎりながらに、彼の姿を探すよう辺りを見渡してみるが……カミールの姿は見当たらない。
まだ来ていないのか、来ないのか……将又もう食べ終わったのか……。
まぁ……また後で会った時にでも聞いてみようかしらね。
そう安易に考えていたのだが……なかなかカミールと話す機会は巡ってこない。
時折船内で見かけるのだが……いつも違う女を連れ、部屋へと戻っていく。
さすがに女性連れの彼に話かける勇気はない。
はぁ……全くお盛んな事で……。
その姿に呆れる中、私は彼と話すことを早々にあきらめると、初めての豪華客船を純粋に楽しみ始めてた。
やっぱり……魔法は使えそうにないわね。
色々試してみるが……どうも魔力を一点に集中させることが出来ない。
だけど……呪文での魔法は可能なのね。
試しにオールと唱えてみると、手のひらに小さな光が浮かびあがった。
う~ん……でもエヴァンに教えてもらった呪文は少ないわ。
呪文について色々と説明してくれた記憶はあるのだけれど……実際に唱えた事があるのは、この三種の呪文だけ。
あぁ……もっと呪文について、しっかり聞いておくべきだったわ……。
でもねぇ……イメージすればどんな魔法でも使えるのよ……。
それならわざわざ呪文なんて必要ないと思ったのよね……。
はぁ……まさかこんなところで……必要になる日がくるなんて……。
まぁでも……魔法が使えない事は不安だけれど……遣い魔もこの船内では使えないようだし……危険はないかな…。
うん、そう信じましょう……。
よしっ……とりあえず黒蝶も送った事だし、今日はもう休みましょう。
私は小さく息を吐き出しながらに、脱衣所へと足を向けると、疲れを洗い流す為に浴槽へと向かった。
そうして翌朝目覚めると、目の前にはなぜかシナンの姿がぼんやりと浮かび上がる。
あれ……シナン……珍しいわね。
いつも私が目覚めた時は寝ているか……一階へおりているのに……。
ぼうっとする意識の中、微かな揺れを感じると、いつもとは違う部屋の匂いに気が付いた。
ここは……そうだわ、船の中……。
眠気眼を擦りながらによく見てみると、やはりシナンで間違いないようだ。
うん?……シナンは別の部屋で眠ったはず……うぅぅん!?
「きゃっ、えっ、なんで!?どうしてシナンがここにいるの!?」
あまりの驚きにベッドから飛び起きると、シナンはパッと目を輝かせながらに笑みを浮かべてみせた。
「おはようございます、よく眠れましたか。あの……朝食の準備が整っているようなので、起こしに来ました」
「えっ、ありがとう。いやいや……カギは閉めていたはずよね!?」
「えへへ、鍵は受付の方からスペアーを借りてきたんです」
シナンは徐にカギを取り出すと、私の前に差し出してみせる。
ちょっとそんな簡単にスペアーキーを渡しちゃうの!?
「ちょ、ちょっとダメよシナン。人の部屋へ勝手に入ってはいけないわ」
「えっ……だって……僕、お姉さんが居なくて寂しくて……早く顔を見たかったんです……。その……ごめんなさい」
シナンは悲しそうな瞳を浮かべながらに、ギュッとカギを握りしめると、耳が萎れ、尻尾がシュンと力なく落ちていく。
その姿に胸の奥がキュンッと高鳴ると、私は可愛さのあまりに思わずシナンを抱きよせた。
するとシナンは嬉しそうに顔を埋めてみせると、尻尾が嬉しそうに揺れていた。
あぁ、可愛すぎるわ……どうしましょうこの子。
やっぱり同じ部屋に……いやいやダメよ、ダメ!
しっかりしなさい自分!
ここは厳しくいかないと……この先シナンと離れることになっても、彼が大丈夫なように……。
私はそう自分に言い聞かせると、準備をするからと彼を部屋から追い出したのだった。
そうしてシナンと一緒に船内にあるレストランルームへとやってくると、そこにはドレスを来た貴族女性や、正装姿の男性たちがテーブル席を囲んでいた。
ローブ姿で来た私たちは明らかに浮いた存在のようだ。
突然に現れた私たちの姿に失笑する声が耳に届く中、空席を見つけると、シナンの手を取り腰かける。
隣のテーブルには、真っ赤なドレスをきた妙齢な美しい女性と、渋い男性が訝し気な瞳を浮かべ、不快な様子を見せる。
そんな二人は何やらコソコソと話し始めると、料理が半分も食べきらないままに席を立っていった。
うぅ……気まずいわね。
まぁ……ここいる人たちを見る限り、誰が見てもこの姿は場違いよね……。
はぁ……でもドレスなんて持ってきていないし、ここは開き直るしかないわ。
さっさと済ませて、ここを出ましょう。
そう気を持ち直すと、私は運ばれてくる朝食を急いで口へと運んでいった。
そういえばカミールはどうなのかしら?
私はパンを一口サイズにちぎりながらに、彼の姿を探すよう辺りを見渡してみるが……カミールの姿は見当たらない。
まだ来ていないのか、来ないのか……将又もう食べ終わったのか……。
まぁ……また後で会った時にでも聞いてみようかしらね。
そう安易に考えていたのだが……なかなかカミールと話す機会は巡ってこない。
時折船内で見かけるのだが……いつも違う女を連れ、部屋へと戻っていく。
さすがに女性連れの彼に話かける勇気はない。
はぁ……全くお盛んな事で……。
その姿に呆れる中、私は彼と話すことを早々にあきらめると、初めての豪華客船を純粋に楽しみ始めてた。
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