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第一章
愛しい彼の最後の手紙
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4度目の君へ
久しぶりだね。
この手紙を読んでいるという事は、エヴァンは俺の最後の試練を達成したんだろう。
まず最初に、ごめんね……突然君の前から姿を消してしまって。
でも君を救うためには、こうするしか方法がなかったんだ。
君が他の男に抱かれると考えると、嫉妬でどうにかなりそうだ。
それでも君が幸せに生きていく為には、必要な事なんだ……。
今は混乱していると思うけど、聞いて欲しい。
俺はこの世界で優秀な魔導士の間に生まれたんだ。
両親は俺が物心つく頃には、亡くなっていた。
どうして死んでしまったのかはわからないけれど、俺に残されたのは両親が幸せそうな笑顔で俺を抱く絵だけだ。
そんな俺は生まれつき魔力が強く、どんな魔法でも使いこなせた。
様々な魔法を取得していった俺は、とうとう禁忌である時間を移動する魔法に手を出したんだ。
過去に戻る事で俺は自分を生んだ絵画の両親に、もう一度会いたかった。
でも時間転送を行った俺の体は、世界から弾かれ、君の世界へ飛ばされた。
そこで君に出会ったんだ。
君を好きになって、俺は君と愛しあった。
でもその事で、君にこんな迷惑をかけることになるなんて、思わなかったんだ。
あの日、最初に出会った君は事故で死んだ。
俺はその事実を受け入れられなくて、また禁忌の術を使って過去へ戻った。
君の世界で俺の魔法は成功した。
そうして二度目の君にあって、俺は君が事故で死ぬの防ごうとした。
でもダメだった。
君がそこで死ぬことを変える事は出来なかった。
三度目の君にあって、俺は君が死ぬまで、君との時間を大事に過ごした。
そうしてもう一度君の命を救おうとした。
けれどやっぱり助けることは出来なくて……俺は君の死後、自分も死のうとしたんだ。
でも死ぬ瞬間、君の魂を感じた。
君が生きているかも知れない事実に、俺は魔法を使って、君の魂を追いかけたんだ。
その時初めて知った。
君は俺と体をつなげた事で、死んだ後、君がこの世界に飛ばされてしまったことを……。
君は俺の魔力の影響で、死んだ魂が俺の世界へ導かれてしまったんだと思う。
飛ばされた君はこの世界で、貴族の娼婦となり、屋敷に閉じ込められ愛玩人形として生きていた。
そんな現実を知って、俺は君を救おうと魔法を唱えると、君の居る俺の世界へ向かった。
でも君が飛ばされた俺の世界に、俺は入ることができなかった。
何度試してもダメだった。
どうしてダメなのか原因を探ってみると、君が飛ばされた世界は俺が居た世界よりも100年以上進んでいた。
俺が死んだ後の世界に、俺という存在は受け入れられないのだと、そう結論づけた。
君が暗闇の中、泣くことも笑う事もなく、人形のように扱われ心が死んでいく。
逃げ出すことも、死ぬことも出来ない、そんな君を見て、俺はまた過去の君に会いに行った。
死ぬ事実は変えられない、でも君が飛ばされる先なら……変えられるかもしれないと考えて……。
4度目の君に会って、俺は君が飛ばされる時間を変えようと、試行錯誤した。
あの日、君にシルバーのリングを渡しただろう?
君はずっと大事に身に着けていてくれた。
あれはね、君と離れていても、ずっと君とつながっていられるようにと思って渡したんだ……。
君が俺の用意したシルバーのリングを、嬉しそうに受け取った姿は今でも覚えているよ。
そうして俺は、君の運命を変える為に、俺が時間転送を使った直前の、俺の世界に戻ったんだ。
自分の慣れ親しんだ世界に戻って、俺はあることに気が付いた。
何度も禁忌の魔法を使った事で、俺の体が衰弱していることを……。
そうそう、この世界で俺はずっと君の事を考えていたよ。
温かくて、明るくて、真っすぐで……天真爛漫な君の姿。
そんな君の姿は、瞼の裏にすぐ浮かんだ。
そうして君が一人で泣いているであろう姿も……。
俺は自国で魔法書を読み漁り、その中に召喚魔法を見つけたんだ。
すぐに取得することは出来たんだけど、この魔法で人間を召喚することは出来なかった。
それでも諦めることができなくて……詳しく調べ試行錯誤していくうちに、君をこの世界に引き寄せ、定住させる方法を見つけたんだ。
1.異世界の者は魔力を持っていなければならない。
2.呼び出したい者の明確な位置を知って居なければならない。
3.この召喚魔法を使用して異世界から人間を召喚する場合は、王族の許可が必要となる。
4.異界から連れてきた者をこの地へ定住させるには、この世界で5人の魔力を受け取らねばならない。
5. 異世界の者が定住するまで、この事は一切、異世界の者に話してはいけない。
この五つが君をこの世界に呼び寄せ、つなぎとめる為に必要だった。
2については、君がシルバーのリングをつけ続けてくれたから大丈夫。
一番厄介なのは、魔力を受け取る事だ。
魔力を受け取る即ち……君がこの世界の男に抱かれなければいけない。
男に抱かれる事で、異世界の者は魔力を貰う事が出来るから……。
だから1の魔力については、俺が君へ渡したから大丈夫だよね。
でも君の世界と、俺の世界の時間軸は違う。
俺の衰弱した体ではきっと、君の世界で君が死ぬまでは、生き続けることはできない。
まぁ、俺が生きているうちに召喚しても良かったんけどね……。
君は君の世界を愛していただろう?
どの君も毎日夜遅くまで難しい勉強して、大学生活を楽しんで、それで夢だった会社へ就職して……。
嬉しそうに俺に報告してきた姿を、今でも覚えている。
だから俺は弟子を探し出し、君の事を託したんだ。
君がなるべく長く、君が君の世界に居られるように……。
君が死ぬであろう日に合わせて、呼び寄せるように指示を出しておいたんだ。
こんな勝手な俺を許してほしい。
君の傍に居られなかった俺を……。
君はここで俺の事は忘れて、新しい生活を送ってほしいんだ。
幸せになってほしい……誰よりも。
きっと優秀な弟子の事だ、君が過ごしやすい様手配してくれているに違いない。
弟子はとても優秀だからね、俺の自慢なんだ。
さようなら。
タクミ
久しぶりだね。
この手紙を読んでいるという事は、エヴァンは俺の最後の試練を達成したんだろう。
まず最初に、ごめんね……突然君の前から姿を消してしまって。
でも君を救うためには、こうするしか方法がなかったんだ。
君が他の男に抱かれると考えると、嫉妬でどうにかなりそうだ。
それでも君が幸せに生きていく為には、必要な事なんだ……。
今は混乱していると思うけど、聞いて欲しい。
俺はこの世界で優秀な魔導士の間に生まれたんだ。
両親は俺が物心つく頃には、亡くなっていた。
どうして死んでしまったのかはわからないけれど、俺に残されたのは両親が幸せそうな笑顔で俺を抱く絵だけだ。
そんな俺は生まれつき魔力が強く、どんな魔法でも使いこなせた。
様々な魔法を取得していった俺は、とうとう禁忌である時間を移動する魔法に手を出したんだ。
過去に戻る事で俺は自分を生んだ絵画の両親に、もう一度会いたかった。
でも時間転送を行った俺の体は、世界から弾かれ、君の世界へ飛ばされた。
そこで君に出会ったんだ。
君を好きになって、俺は君と愛しあった。
でもその事で、君にこんな迷惑をかけることになるなんて、思わなかったんだ。
あの日、最初に出会った君は事故で死んだ。
俺はその事実を受け入れられなくて、また禁忌の術を使って過去へ戻った。
君の世界で俺の魔法は成功した。
そうして二度目の君にあって、俺は君が事故で死ぬの防ごうとした。
でもダメだった。
君がそこで死ぬことを変える事は出来なかった。
三度目の君にあって、俺は君が死ぬまで、君との時間を大事に過ごした。
そうしてもう一度君の命を救おうとした。
けれどやっぱり助けることは出来なくて……俺は君の死後、自分も死のうとしたんだ。
でも死ぬ瞬間、君の魂を感じた。
君が生きているかも知れない事実に、俺は魔法を使って、君の魂を追いかけたんだ。
その時初めて知った。
君は俺と体をつなげた事で、死んだ後、君がこの世界に飛ばされてしまったことを……。
君は俺の魔力の影響で、死んだ魂が俺の世界へ導かれてしまったんだと思う。
飛ばされた君はこの世界で、貴族の娼婦となり、屋敷に閉じ込められ愛玩人形として生きていた。
そんな現実を知って、俺は君を救おうと魔法を唱えると、君の居る俺の世界へ向かった。
でも君が飛ばされた俺の世界に、俺は入ることができなかった。
何度試してもダメだった。
どうしてダメなのか原因を探ってみると、君が飛ばされた世界は俺が居た世界よりも100年以上進んでいた。
俺が死んだ後の世界に、俺という存在は受け入れられないのだと、そう結論づけた。
君が暗闇の中、泣くことも笑う事もなく、人形のように扱われ心が死んでいく。
逃げ出すことも、死ぬことも出来ない、そんな君を見て、俺はまた過去の君に会いに行った。
死ぬ事実は変えられない、でも君が飛ばされる先なら……変えられるかもしれないと考えて……。
4度目の君に会って、俺は君が飛ばされる時間を変えようと、試行錯誤した。
あの日、君にシルバーのリングを渡しただろう?
君はずっと大事に身に着けていてくれた。
あれはね、君と離れていても、ずっと君とつながっていられるようにと思って渡したんだ……。
君が俺の用意したシルバーのリングを、嬉しそうに受け取った姿は今でも覚えているよ。
そうして俺は、君の運命を変える為に、俺が時間転送を使った直前の、俺の世界に戻ったんだ。
自分の慣れ親しんだ世界に戻って、俺はあることに気が付いた。
何度も禁忌の魔法を使った事で、俺の体が衰弱していることを……。
そうそう、この世界で俺はずっと君の事を考えていたよ。
温かくて、明るくて、真っすぐで……天真爛漫な君の姿。
そんな君の姿は、瞼の裏にすぐ浮かんだ。
そうして君が一人で泣いているであろう姿も……。
俺は自国で魔法書を読み漁り、その中に召喚魔法を見つけたんだ。
すぐに取得することは出来たんだけど、この魔法で人間を召喚することは出来なかった。
それでも諦めることができなくて……詳しく調べ試行錯誤していくうちに、君をこの世界に引き寄せ、定住させる方法を見つけたんだ。
1.異世界の者は魔力を持っていなければならない。
2.呼び出したい者の明確な位置を知って居なければならない。
3.この召喚魔法を使用して異世界から人間を召喚する場合は、王族の許可が必要となる。
4.異界から連れてきた者をこの地へ定住させるには、この世界で5人の魔力を受け取らねばならない。
5. 異世界の者が定住するまで、この事は一切、異世界の者に話してはいけない。
この五つが君をこの世界に呼び寄せ、つなぎとめる為に必要だった。
2については、君がシルバーのリングをつけ続けてくれたから大丈夫。
一番厄介なのは、魔力を受け取る事だ。
魔力を受け取る即ち……君がこの世界の男に抱かれなければいけない。
男に抱かれる事で、異世界の者は魔力を貰う事が出来るから……。
だから1の魔力については、俺が君へ渡したから大丈夫だよね。
でも君の世界と、俺の世界の時間軸は違う。
俺の衰弱した体ではきっと、君の世界で君が死ぬまでは、生き続けることはできない。
まぁ、俺が生きているうちに召喚しても良かったんけどね……。
君は君の世界を愛していただろう?
どの君も毎日夜遅くまで難しい勉強して、大学生活を楽しんで、それで夢だった会社へ就職して……。
嬉しそうに俺に報告してきた姿を、今でも覚えている。
だから俺は弟子を探し出し、君の事を託したんだ。
君がなるべく長く、君が君の世界に居られるように……。
君が死ぬであろう日に合わせて、呼び寄せるように指示を出しておいたんだ。
こんな勝手な俺を許してほしい。
君の傍に居られなかった俺を……。
君はここで俺の事は忘れて、新しい生活を送ってほしいんだ。
幸せになってほしい……誰よりも。
きっと優秀な弟子の事だ、君が過ごしやすい様手配してくれているに違いない。
弟子はとても優秀だからね、俺の自慢なんだ。
さようなら。
タクミ
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