[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第一章

愛しい彼の最後の手紙

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4度目の君へ

久しぶりだね。

この手紙を読んでいるという事は、エヴァンは俺の最後の試練を達成したんだろう。

まず最初に、ごめんね……突然君の前から姿を消してしまって。

でも君を救うためには、こうするしか方法がなかったんだ。

君が他の男に抱かれると考えると、嫉妬でどうにかなりそうだ。

それでも君が幸せに生きていく為には、必要な事なんだ……。

今は混乱していると思うけど、聞いて欲しい。

俺はこの世界で優秀な魔導士の間に生まれたんだ。

両親は俺が物心つく頃には、亡くなっていた。

どうして死んでしまったのかはわからないけれど、俺に残されたのは両親が幸せそうな笑顔で俺を抱く絵だけだ。

そんな俺は生まれつき魔力が強く、どんな魔法でも使いこなせた。

様々な魔法を取得していった俺は、とうとう禁忌である時間を移動する魔法に手を出したんだ。

過去に戻る事で俺は自分を生んだ絵画の両親に、もう一度会いたかった。

でも時間転送を行った俺の体は、世界から弾かれ、君の世界へ飛ばされた。

そこで君に出会ったんだ。

君を好きになって、俺は君と愛しあった。

でもその事で、君にこんな迷惑をかけることになるなんて、思わなかったんだ。

あの日、最初に出会った君は事故で死んだ。

俺はその事実を受け入れられなくて、また禁忌の術を使って過去へ戻った。

君の世界で俺の魔法は成功した。

そうして二度目の君にあって、俺は君が事故で死ぬの防ごうとした。

でもダメだった。

君がそこで死ぬことを変える事は出来なかった。

三度目の君にあって、俺は君が死ぬまで、君との時間を大事に過ごした。

そうしてもう一度君の命を救おうとした。

けれどやっぱり助けることは出来なくて……俺は君の死後、自分も死のうとしたんだ。

でも死ぬ瞬間、君の魂を感じた。

君が生きているかも知れない事実に、俺は魔法を使って、君の魂を追いかけたんだ。

その時初めて知った。

君は俺と体をつなげた事で、死んだ後、君がこの世界に飛ばされてしまったことを……。

君は俺の魔力の影響で、死んだ魂が俺の世界へ導かれてしまったんだと思う。

飛ばされた君はこの世界で、貴族の娼婦となり、屋敷に閉じ込められ愛玩人形として生きていた。

そんな現実を知って、俺は君を救おうと魔法を唱えると、君の居る俺の世界へ向かった。

でも君が飛ばされた俺の世界に、俺は入ることができなかった。

何度試してもダメだった。

どうしてダメなのか原因を探ってみると、君が飛ばされた世界は俺が居た世界よりも100年以上進んでいた。

俺が死んだ後の世界に、俺という存在は受け入れられないのだと、そう結論づけた。

君が暗闇の中、泣くことも笑う事もなく、人形のように扱われ心が死んでいく。

逃げ出すことも、死ぬことも出来ない、そんな君を見て、俺はまた過去の君に会いに行った。

死ぬ事実は変えられない、でも君が飛ばされる先なら……変えられるかもしれないと考えて……。

4度目の君に会って、俺は君が飛ばされる時間を変えようと、試行錯誤した。

あの日、君にシルバーのリングを渡しただろう?

君はずっと大事に身に着けていてくれた。

あれはね、君と離れていても、ずっと君とつながっていられるようにと思って渡したんだ……。

君が俺の用意したシルバーのリングを、嬉しそうに受け取った姿は今でも覚えているよ。

そうして俺は、君の運命を変える為に、俺が時間転送を使った直前の、俺の世界に戻ったんだ。

自分の慣れ親しんだ世界に戻って、俺はあることに気が付いた。

何度も禁忌の魔法を使った事で、俺の体が衰弱していることを……。

そうそう、この世界で俺はずっと君の事を考えていたよ。

温かくて、明るくて、真っすぐで……天真爛漫な君の姿。

そんな君の姿は、瞼の裏にすぐ浮かんだ。

そうして君が一人で泣いているであろう姿も……。

俺は自国で魔法書を読み漁り、その中に召喚魔法を見つけたんだ。

すぐに取得することは出来たんだけど、この魔法で人間を召喚することは出来なかった。

それでも諦めることができなくて……詳しく調べ試行錯誤していくうちに、君をこの世界に引き寄せ、定住させる方法を見つけたんだ。

1.異世界の者は魔力を持っていなければならない。

2.呼び出したい者の明確な位置を知って居なければならない。

3.この召喚魔法を使用して異世界から人間を召喚する場合は、王族の許可が必要となる。

4.異界から連れてきた者をこの地へ定住させるには、この世界で5人の魔力を受け取らねばならない。

5.  異世界の者が定住するまで、この事は一切、異世界の者に話してはいけない。

この五つが君をこの世界に呼び寄せ、つなぎとめる為に必要だった。

2については、君がシルバーのリングをつけ続けてくれたから大丈夫。

一番厄介なのは、魔力を受け取る事だ。

魔力を受け取る即ち……君がこの世界の男に抱かれなければいけない。

男に抱かれる事で、異世界の者は魔力を貰う事が出来るから……。

だから1の魔力については、俺が君へ渡したから大丈夫だよね。

でも君の世界と、俺の世界の時間軸は違う。

俺の衰弱した体ではきっと、君の世界で君が死ぬまでは、生き続けることはできない。

まぁ、俺が生きているうちに召喚しても良かったんけどね……。

君は君の世界を愛していただろう?

どの君も毎日夜遅くまで難しい勉強して、大学生活を楽しんで、それで夢だった会社へ就職して……。

嬉しそうに俺に報告してきた姿を、今でも覚えている。

だから俺は弟子を探し出し、君の事を託したんだ。

君がなるべく長く、君が君の世界に居られるように……。

君が死ぬであろう日に合わせて、呼び寄せるように指示を出しておいたんだ。

こんな勝手な俺を許してほしい。

君の傍に居られなかった俺を……。

君はここで俺の事は忘れて、新しい生活を送ってほしいんだ。

幸せになってほしい……誰よりも。

きっと優秀な弟子の事だ、君が過ごしやすい様手配してくれているに違いない。

弟子はとても優秀だからね、俺の自慢なんだ。

さようなら。

タクミ

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