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第二章
夜会:中編2
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彼らと離れ少し心細くなる中、ふと辺りを見渡すと、周りの視線が私に集まっていることに気が付いた。
珍しい物を見るような視線や、ざわざわとこちらを見て話す男性たちの姿に、居た堪れない気持ちになると、私はそっと視線を落とす。
黒髪に黒い瞳は珍しいのだろうけれど……あまり見ないで欲しい……。
注目されることに慣れていない私は周りの視線から逃れるよう、せかす様に会場内を進んでいった。
騒がしい中、ふと女性の高い声が耳に届くと、私はそっと顔をあげ、辺りへ視線を向ける。
すると前を歩いていた騎士が静かに立ち止まると、こちらへと振り向き、女性が密集する場所へ私を誘っていった。
そのまま女性たちが集まる場所へ混ざると、騎士は私から体を離し綺麗に一礼をとった。
その姿に私も慌てて頭を下げると、騎士はなぜか驚いた様子を浮かべている。
どうしたのかしらと、じっと騎士を見上げていると、彼は慌てた様子で私に背を向け、その場を走り去っていった。
よくわからないまま、女性達へ視線を向けてみると……集まっていた女性たちの視線が私へと集中する。
苦笑いを浮かべる私の様子に、女性たちは何やらコソコソと話し始めたかと思うと……私を見定めるかのように視線を向けた。
この視線はいたたまれないわね……。
はぁ……どこの世界も同じね……。
私は顔を引き攣らせながらも、しっかりと前を見据えると、こんにちはと笑みを浮かべてみせる。
そのまま女子の輪へ入ろうと足を向けると、女性たちの奇異な視線にさらされた。
居心地の悪い空気に、私は踵を返し隅へと体を寄せると、人目を避けるように静かに佇む。
するとそんな私の元へ、威圧的な態度で数人の女性たちが近づいてきた。
「あなたが噂の異世界からきた女性かしら?う~ん、……お噂に聞くほどの事ではないわねぇ~」
ブロンドヘヤをクルクル巻きにした美しい令嬢は冷笑を浮かべると、見下す様に私へと視線を向ける。
そんな名も知らぬ令嬢の失礼な態度に、私は小さく息を吐きだした。
はぁ……鬱陶しいわ……。
やっぱり女の敵は女なのね……ここで静かにしていたいだけなんだから、ほっておいてくれればいいのに……。
「あら、図星を突かれてだんまりかしら?まぁいいわ。それであなた、何人の旦那を持ったの?」
「ダメよ、お姉様そんな質問。……ふふ、彼女の腕には結婚の印が一つもないじゃない」
どこからともなく現れたワインレッドの髪の女性は私の隣へ立つと、嘲笑うように私の腕を強く掴む。
結婚の印……?
私はそっと目の前の令嬢達の腕へ視線を向けると、腕には小さなキラキラした宝石がいくつもついてる。
四つ……五つ、……最初に話しかけてきたカールの令嬢は九つ以上の宝石が光っていた。
私は彼女達から視線を反らし、キョロキョロと辺りを見渡してみると、腕に宝石をつけていない女性は一人も見当たらない。
皆二つ以上の宝石を付いている女性ばかりだった。
「……印って言うのはその腕についている宝石の事かしら?」
私の質問に目の前の女性が嗤笑すると、ふと彼女の後ろに人影が映った。
「あら、異世界の方はそんな事もご存知ないの?この宝石は結婚の証。結婚の際、パートーに頂いて腕に魔法でつけて頂くのよ。まぁ~一つもないあなたなら知らなくて当然なのかもしれないわねぇ……ふふふっ。ついでにもう一つ、その結婚の印がないと、子供は授からないわ」
聞き覚えのあるその声に慌てて顔を向けると、そこにはピンク色の髪をした、あの男爵の娘が立っていた。
「お久しぶりねぇ……あの時はどうも。ふん、やっぱりブレイク様が、あなたを選んだなんて嘘だったのねぇ。……だってまだ結婚すらしていないなんて。やっぱり子供をつくるつもりもない、只の遊び相手だったって事ね~」
男爵の娘は蔑むような視線を浮かべると、私を強く睨みつける。
そういえば……ここにゴムなんてないわよね。
魔法があるこの世界なら、別のやり方で避妊していると思い込んでいたけれど、まさかこの印がないと子供が出来ないとは思わなかったわ。
でもそれなら……もし万が一強姦にあっても……妊娠する心配はないのね。
「まぁ~そうよねぇ。珍しいと言っても、あなたのその黒髪に黒い瞳、正直気味が悪いわ。ねぇ~皆もそう思いませんこと?あははっ」
男爵の甲高い笑い声に周りの女性も同調するように、私は詰られるように女たちに囲まれる。
はぁ……どうしてこんな事に……。
ここで言い返しても、なんにもならないだろうし、飽きるまで好きに言わせておいた方が無難かしら……。
私は委縮することなくしっかりを彼女に視線をあわせると、ニッコリと微笑んで見せる。
そんな私の様子に男爵はひどく苛立った様子を見せる中、会場内が突然騒がしくなった。
その瞬間、私の周りに集まっていた女性達が勢いよくどこかへと走り去っていく。
突然の事に動揺する中、私は騒ぎの方へ目を向けると、そこにはアーサーとセーフィロの姿があった。
「きゃぁぁ!セーフィロ様よ!今日は絶対話しかけなくっちゃ!」
「私が話しかけるのよ、あなたはアーサー王子にでもしておきなさいよ」
「いやよ、あんな出来損ないの王子。顔以外何の取りえもないわ」
「そうよねぇ~、セーフィロ様が戻ってきたんだから、もうアーサー殿下は用無しでしょ」
セーフィロが帰ってきた為か……アーサーを侮辱する言葉が、あちらこちらで聞こえてくる。
こんな中で暮らすのは大変だったわよね……。
そんな事を考えながら私はアーサーへ視線を向けると、堂々たる姿で舞台に上がる姿をじっと見つめていた。
珍しい物を見るような視線や、ざわざわとこちらを見て話す男性たちの姿に、居た堪れない気持ちになると、私はそっと視線を落とす。
黒髪に黒い瞳は珍しいのだろうけれど……あまり見ないで欲しい……。
注目されることに慣れていない私は周りの視線から逃れるよう、せかす様に会場内を進んでいった。
騒がしい中、ふと女性の高い声が耳に届くと、私はそっと顔をあげ、辺りへ視線を向ける。
すると前を歩いていた騎士が静かに立ち止まると、こちらへと振り向き、女性が密集する場所へ私を誘っていった。
そのまま女性たちが集まる場所へ混ざると、騎士は私から体を離し綺麗に一礼をとった。
その姿に私も慌てて頭を下げると、騎士はなぜか驚いた様子を浮かべている。
どうしたのかしらと、じっと騎士を見上げていると、彼は慌てた様子で私に背を向け、その場を走り去っていった。
よくわからないまま、女性達へ視線を向けてみると……集まっていた女性たちの視線が私へと集中する。
苦笑いを浮かべる私の様子に、女性たちは何やらコソコソと話し始めたかと思うと……私を見定めるかのように視線を向けた。
この視線はいたたまれないわね……。
はぁ……どこの世界も同じね……。
私は顔を引き攣らせながらも、しっかりと前を見据えると、こんにちはと笑みを浮かべてみせる。
そのまま女子の輪へ入ろうと足を向けると、女性たちの奇異な視線にさらされた。
居心地の悪い空気に、私は踵を返し隅へと体を寄せると、人目を避けるように静かに佇む。
するとそんな私の元へ、威圧的な態度で数人の女性たちが近づいてきた。
「あなたが噂の異世界からきた女性かしら?う~ん、……お噂に聞くほどの事ではないわねぇ~」
ブロンドヘヤをクルクル巻きにした美しい令嬢は冷笑を浮かべると、見下す様に私へと視線を向ける。
そんな名も知らぬ令嬢の失礼な態度に、私は小さく息を吐きだした。
はぁ……鬱陶しいわ……。
やっぱり女の敵は女なのね……ここで静かにしていたいだけなんだから、ほっておいてくれればいいのに……。
「あら、図星を突かれてだんまりかしら?まぁいいわ。それであなた、何人の旦那を持ったの?」
「ダメよ、お姉様そんな質問。……ふふ、彼女の腕には結婚の印が一つもないじゃない」
どこからともなく現れたワインレッドの髪の女性は私の隣へ立つと、嘲笑うように私の腕を強く掴む。
結婚の印……?
私はそっと目の前の令嬢達の腕へ視線を向けると、腕には小さなキラキラした宝石がいくつもついてる。
四つ……五つ、……最初に話しかけてきたカールの令嬢は九つ以上の宝石が光っていた。
私は彼女達から視線を反らし、キョロキョロと辺りを見渡してみると、腕に宝石をつけていない女性は一人も見当たらない。
皆二つ以上の宝石を付いている女性ばかりだった。
「……印って言うのはその腕についている宝石の事かしら?」
私の質問に目の前の女性が嗤笑すると、ふと彼女の後ろに人影が映った。
「あら、異世界の方はそんな事もご存知ないの?この宝石は結婚の証。結婚の際、パートーに頂いて腕に魔法でつけて頂くのよ。まぁ~一つもないあなたなら知らなくて当然なのかもしれないわねぇ……ふふふっ。ついでにもう一つ、その結婚の印がないと、子供は授からないわ」
聞き覚えのあるその声に慌てて顔を向けると、そこにはピンク色の髪をした、あの男爵の娘が立っていた。
「お久しぶりねぇ……あの時はどうも。ふん、やっぱりブレイク様が、あなたを選んだなんて嘘だったのねぇ。……だってまだ結婚すらしていないなんて。やっぱり子供をつくるつもりもない、只の遊び相手だったって事ね~」
男爵の娘は蔑むような視線を浮かべると、私を強く睨みつける。
そういえば……ここにゴムなんてないわよね。
魔法があるこの世界なら、別のやり方で避妊していると思い込んでいたけれど、まさかこの印がないと子供が出来ないとは思わなかったわ。
でもそれなら……もし万が一強姦にあっても……妊娠する心配はないのね。
「まぁ~そうよねぇ。珍しいと言っても、あなたのその黒髪に黒い瞳、正直気味が悪いわ。ねぇ~皆もそう思いませんこと?あははっ」
男爵の甲高い笑い声に周りの女性も同調するように、私は詰られるように女たちに囲まれる。
はぁ……どうしてこんな事に……。
ここで言い返しても、なんにもならないだろうし、飽きるまで好きに言わせておいた方が無難かしら……。
私は委縮することなくしっかりを彼女に視線をあわせると、ニッコリと微笑んで見せる。
そんな私の様子に男爵はひどく苛立った様子を見せる中、会場内が突然騒がしくなった。
その瞬間、私の周りに集まっていた女性達が勢いよくどこかへと走り去っていく。
突然の事に動揺する中、私は騒ぎの方へ目を向けると、そこにはアーサーとセーフィロの姿があった。
「きゃぁぁ!セーフィロ様よ!今日は絶対話しかけなくっちゃ!」
「私が話しかけるのよ、あなたはアーサー王子にでもしておきなさいよ」
「いやよ、あんな出来損ないの王子。顔以外何の取りえもないわ」
「そうよねぇ~、セーフィロ様が戻ってきたんだから、もうアーサー殿下は用無しでしょ」
セーフィロが帰ってきた為か……アーサーを侮辱する言葉が、あちらこちらで聞こえてくる。
こんな中で暮らすのは大変だったわよね……。
そんな事を考えながら私はアーサーへ視線を向けると、堂々たる姿で舞台に上がる姿をじっと見つめていた。
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