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第二章
夜会:中編1
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アーサーは煌びやかな装飾された、ダブレットを着こなし、背には首元にファーが付いた大きなマントを羽織っている。
自信満々で堂々たる姿は、王子そのものだった。
キラキラとする彼の後方から、サファイヤの瞳が映る。
そちらへ視線を向けると、レックスも同様に貴族風のタブレットをラフに着こなし、髪をオールバックの風にかため、いつもとは違う大人の色気が溢れている。
少し乱れた彼の着こなしが、日ごろの医者の姿と相まって視線が釘付けになった。
そんな中、視界にチラッと優しく細められた金色の瞳が目に映るとそちらへと視線を向ける。
ブレイクは軍服っぽいチェニックに、紋章の入ったバッチが胸の上でキラキラと輝いていた。
物語の世界から飛び出してきたような彼の騎士姿に呆然としていると、目の間に真っ赤な瞳が現れる。
驚き後退り顔を上げると、ネイトは民族衣装なのだろうか……チョハのような黒い長いコートを着こなし、腰には短刀が刺さっていた。
なにこれ……ちょっとみんなかっこよすぎるんじゃないの!?
いつもと雰囲気の違う彼らにドギマギしてしまう中、私は何も言葉にすることが出来ないまま、呆然とその姿を眺めていると、エヴァンがそっと私の手を取った。
彼にひかれるままに扉の外へ足を進めると、現れた私の姿に大きく目を見開き固まった。
熱い彼らの視線に思わず顔を赤らめると、私は恥ずかしさのあまり彼らから顔を背ける。
ドキドキと激しく胸が波打つ中、私は身を隠す様に後退しようとすると、アーサーが私の手をとり、流れるような所作で私の手の甲へキスを落とした。
「綺麗だな。想像以上だ……俺の選んだドレスがよく似合っている。……今すぐにでもあんたを抱きたくなるな」
甘い言葉に一気に熱が高まるのを感じると、私は慌てて彼の手から逃れた。
すると自由になった私の手をブレイクが優しく引き寄せる。
「美しい……僕の送ったグローブ、あなたの黒い髪と漆黒の瞳ピッタリですね。いつものあなたも可憐ですが、今のあなたに勝る女性はいないでしょう」
ブレイクは、うっとりするような笑みを浮かべながら私へ微笑みかける。
思わずその視線から逃れるようにそっぽを向くと、その先に居たレックスと視線が絡む。
「見違えたなぁ、とても綺麗だ。俺が選んだストール、それにハイヒールもあんたに良く似合ってる」
レックスは私の体に巻かれたストールに手を添えると、愛しむように笑みを浮かべた。
どう反応していいのかわからぬまま戸惑っていると、ネイトが私の耳元へ顔を寄せる。
「姫、私の送ったピアスをつけてくれてありがとう。とても似合っている。……いつも綺麗だが、今日はさらに美しい。あまりに美しすぎて、私は少し心配だ」
彼らの賛辞の嵐に耐え切れなくなると、私は皆を振り切り咄嗟にエヴァンの背へと隠れる。
そんな私の様子にエヴァンは小さく笑うと、私にしか聞こえない小さな声で囁いた。
「綺麗ですよ。誰よりも……」
思ってもみなかった突然の言葉に目を丸くする中、エヴァンは何事もなかったように私の手を引くと、廊下へと誘っていく。
うぅぅ……またからかわれたのね……っっ。
顔の熱は引かぬままに、彼ら5人に厳重に囲まれると、私たちは静かに廊下を進んでいった。
豪華な装飾が施されたエントランスを抜けると、そこには多くの騎士が立ち並んでいた。
騎士たちは私たちの姿に深く礼を取る中、静かな通路に足音が響く。
そのまま大きな門を潜り、広い会場へ入ると、そこは人で埋め尽くされていた。
以前ブレイクと赴いた街の様子とは打って変わって、そこは艶やかな雰囲気に包まれている。
彼らの隙間から会場内を見渡してみると、タキシードや民族衣装、正装で身を包む男性たちが、何やら浮足立つ様子で、ソワソワと落ち着きがない。
わぁぉ……、婚活パーティーみたいね……。
それにしても……本当に男の人ばかり……。
女性はどこにいるのかしら……?
私は覗き込むように目を凝らしてみると、会場の中央に見えるポッカリと空いた空間には、数十名の女性の姿が見えた。
煌びやかなドレスを着た美しい女性や、年端も行かぬ少女、大人の色気が溢れる妖麗な女性、フリフリのドレスを着た可愛らしい女性など様々だ。
ふとその中に見覚えのある女の子が目に映ると、私の視線はそこで固定された。
あの子……以前街で見かけた……確か男爵家の娘さん……。
じっとその女性を眺めていると、彼女はこちらに気が付いたのか……私の姿に酷く怯えた様子を見せると、女性の輪の中へ紛れ込んでいく。
あぁ……いっちゃった……まぁ、威勢よく言い返してしまったものね……。
彼女の態度に肩を落とす中、前を歩くアーサーが立ち止まる姿に、私も慌てて足を止めた。
ブレイクが何やら会場の入り口立っていた男性へ声をかけたかと思うと、私の手を握りしめる。
「彼女を中央へ案内してくれ」
私は彼らの輪の中から引っ張り出されると、騎士は深く礼をとり私の前についた。
するとどこからか別の騎士が現れると、私の後ろへとつく。
前の佇む騎士がついてきてくださいとの声に私は深く頷くと、皆から離れ、会場の中央へと進んでいった。
自信満々で堂々たる姿は、王子そのものだった。
キラキラとする彼の後方から、サファイヤの瞳が映る。
そちらへ視線を向けると、レックスも同様に貴族風のタブレットをラフに着こなし、髪をオールバックの風にかため、いつもとは違う大人の色気が溢れている。
少し乱れた彼の着こなしが、日ごろの医者の姿と相まって視線が釘付けになった。
そんな中、視界にチラッと優しく細められた金色の瞳が目に映るとそちらへと視線を向ける。
ブレイクは軍服っぽいチェニックに、紋章の入ったバッチが胸の上でキラキラと輝いていた。
物語の世界から飛び出してきたような彼の騎士姿に呆然としていると、目の間に真っ赤な瞳が現れる。
驚き後退り顔を上げると、ネイトは民族衣装なのだろうか……チョハのような黒い長いコートを着こなし、腰には短刀が刺さっていた。
なにこれ……ちょっとみんなかっこよすぎるんじゃないの!?
いつもと雰囲気の違う彼らにドギマギしてしまう中、私は何も言葉にすることが出来ないまま、呆然とその姿を眺めていると、エヴァンがそっと私の手を取った。
彼にひかれるままに扉の外へ足を進めると、現れた私の姿に大きく目を見開き固まった。
熱い彼らの視線に思わず顔を赤らめると、私は恥ずかしさのあまり彼らから顔を背ける。
ドキドキと激しく胸が波打つ中、私は身を隠す様に後退しようとすると、アーサーが私の手をとり、流れるような所作で私の手の甲へキスを落とした。
「綺麗だな。想像以上だ……俺の選んだドレスがよく似合っている。……今すぐにでもあんたを抱きたくなるな」
甘い言葉に一気に熱が高まるのを感じると、私は慌てて彼の手から逃れた。
すると自由になった私の手をブレイクが優しく引き寄せる。
「美しい……僕の送ったグローブ、あなたの黒い髪と漆黒の瞳ピッタリですね。いつものあなたも可憐ですが、今のあなたに勝る女性はいないでしょう」
ブレイクは、うっとりするような笑みを浮かべながら私へ微笑みかける。
思わずその視線から逃れるようにそっぽを向くと、その先に居たレックスと視線が絡む。
「見違えたなぁ、とても綺麗だ。俺が選んだストール、それにハイヒールもあんたに良く似合ってる」
レックスは私の体に巻かれたストールに手を添えると、愛しむように笑みを浮かべた。
どう反応していいのかわからぬまま戸惑っていると、ネイトが私の耳元へ顔を寄せる。
「姫、私の送ったピアスをつけてくれてありがとう。とても似合っている。……いつも綺麗だが、今日はさらに美しい。あまりに美しすぎて、私は少し心配だ」
彼らの賛辞の嵐に耐え切れなくなると、私は皆を振り切り咄嗟にエヴァンの背へと隠れる。
そんな私の様子にエヴァンは小さく笑うと、私にしか聞こえない小さな声で囁いた。
「綺麗ですよ。誰よりも……」
思ってもみなかった突然の言葉に目を丸くする中、エヴァンは何事もなかったように私の手を引くと、廊下へと誘っていく。
うぅぅ……またからかわれたのね……っっ。
顔の熱は引かぬままに、彼ら5人に厳重に囲まれると、私たちは静かに廊下を進んでいった。
豪華な装飾が施されたエントランスを抜けると、そこには多くの騎士が立ち並んでいた。
騎士たちは私たちの姿に深く礼を取る中、静かな通路に足音が響く。
そのまま大きな門を潜り、広い会場へ入ると、そこは人で埋め尽くされていた。
以前ブレイクと赴いた街の様子とは打って変わって、そこは艶やかな雰囲気に包まれている。
彼らの隙間から会場内を見渡してみると、タキシードや民族衣装、正装で身を包む男性たちが、何やら浮足立つ様子で、ソワソワと落ち着きがない。
わぁぉ……、婚活パーティーみたいね……。
それにしても……本当に男の人ばかり……。
女性はどこにいるのかしら……?
私は覗き込むように目を凝らしてみると、会場の中央に見えるポッカリと空いた空間には、数十名の女性の姿が見えた。
煌びやかなドレスを着た美しい女性や、年端も行かぬ少女、大人の色気が溢れる妖麗な女性、フリフリのドレスを着た可愛らしい女性など様々だ。
ふとその中に見覚えのある女の子が目に映ると、私の視線はそこで固定された。
あの子……以前街で見かけた……確か男爵家の娘さん……。
じっとその女性を眺めていると、彼女はこちらに気が付いたのか……私の姿に酷く怯えた様子を見せると、女性の輪の中へ紛れ込んでいく。
あぁ……いっちゃった……まぁ、威勢よく言い返してしまったものね……。
彼女の態度に肩を落とす中、前を歩くアーサーが立ち止まる姿に、私も慌てて足を止めた。
ブレイクが何やら会場の入り口立っていた男性へ声をかけたかと思うと、私の手を握りしめる。
「彼女を中央へ案内してくれ」
私は彼らの輪の中から引っ張り出されると、騎士は深く礼をとり私の前についた。
するとどこからか別の騎士が現れると、私の後ろへとつく。
前の佇む騎士がついてきてくださいとの声に私は深く頷くと、皆から離れ、会場の中央へと進んでいった。
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