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第三章
旅の真実⑤
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落下していく中、脳が激しくシェイクされ、不快感が全身を駆け巡っていく。
何度も意識が飛びそうになる中、私は何とか瞼を持ち上げてみると、そこは何もない闇の中だった。
抗う事もできず風を切る音が耳に響くのを感じると、突然に私の体がどこかへ引き寄せられ、激しい痛みが全身に走る。
あまりの痛みに膝をつくと、闇の中にフワッとした光が見えた。
その光へ吸い込まれるように向かっていくと、私はあまりの眩しさに瞳を閉じる。
ガガガッ、ガガッ、ザアアアアアアアアア……
頭の中に雑音が入り込んでいると、それに交じってどこからか男の子が聞こえてきた。
「お……お前……もう帰ってきたのか?それで……両親に会う事は出来たのか?」
「あぁ、俺の両親は……魔導師だった。二人がどうして死んだのかは、わからなかったけれど……それでも俺の存在を快く迎い入れてくれた。もう俺に思い残すことはない!俺を騎士団へ突き出してくれ」
聞き覚えのある声に、ゆっくりと瞼を持ち上げてみると、光の先に少年のタクミと、セーフィロの姿映った。
「バカッ……僕は何も見ていない。ターキィーミは何も……何の魔法も使っていない」
そう言い切ったセーフィロは、今にも泣きそうな笑みを浮かべるタクミへと手を伸ばすと、二人は強く抱き合った。
そんな二人の姿を眺める中、抱き合っている彼らの姿に靄がかかっていく。
そのまま二人の姿が消えていくと、辺りは真っ白な世界に包みこまれていった。
今のが正しい世界なのかしら?
という事は……タクミはちゃんと、両親に会えていたって事?
でもそれは……客観的に見て……真実でしかない。
なら……タクミが両親に会えなかったという事と言うのは、過去の世界に戻れていないという事。
でもそれなら……別の人間を使って過去へ戻った事実を作れば改善されるでしょう。
いくら事実を変えようとしても、事実はそうなるように修正される。
人間の時間軸は関係ない。
ならどうして今回は修正されていないのかしら……?
様々な疑問が浮かぶ中、また目の前に薄っすらと景色が浮かび上がってくる。
子供らしい無邪気な笑みを浮かべ走る水色の瞳に、短髪のブラウンの髪を揺らした少年。
その男の子は蒼い髪を長く伸ばした、アメジストの瞳を浮かべた少年に駆け寄っていった。
「なぁ、見てくれ!俺の親父がいた研究室で、すごい魔法を見つけたんだ!」
「すごい魔法……一体どんな魔法なんだ?」
さっきとは別の場面だわ……。
二人がいるのは広場ではなく、白いお城をバックにした大きな建物の傍だった。
タクミは含みを持たせる笑みを浮かべると、セーフィロの手を引いて人気のない場所へと引っ張っていく。
タクミは用心深く周りを気にする中、彼は徐に杖を掲げると防音魔法を唱えた。
「ほら、これだよ。父さんはさぁ……すっげぇ魔法使いだったんだ!!!」
タクミは嬉しそうにセーフィロの前へよれよれになった紙を広げて見せると、それには時空移転魔法と記されている。
これは……タクミが魔法を見つけた時ね。
誤った世界のタクミは、私が落とした紙で時空移転魔法を見つけた。
正しい世界は……彼の両親が時空魔法移転を残していたのね……。
新たな事実に考え込んでいると、また二人の姿に霧がかかっていき、新たな場面に切り替わっていく。
空に大きな丸い月が浮かぶ広場には、私が書いた物と同じ魔法陣が描かれていた。
これは彼が魔法を使う瞬間……。
その魔法陣の中央にはタクミの姿が、はっきりと映し出されていく。
そうして魔法陣から強い光が発せられると、広場一面を照らしていた。
そんな光が集まる中央では、タクミがニッコリと笑みを浮かべながら、ボソボソと何かを唱えたかと思うと……彼の姿が霞んでいく。
眩い光線があたり一面に広がる中、軽い調子で、必ず戻るからな~!と手を振った瞬間、タクミの姿はその場から、跡形もなく消え去った。
彼が消え去った広場には、時空移転魔法で出来た道が目に映った。
咄嗟にその道へ手を伸ばしてみると、私の体が道の中へ吸い込まれていく。
私の体は強い風に吹かれるままに道の中を流れていく中、次第に道が大きく開き、眩い光が差し込むと、どこかへ勢いよく放り出された。
飛ばされたその先には……タクミが二人の人影と抱き合う姿見える。
目を凝らしてよく見てみると、人影が次第に鮮明になっていく。
男女二人は……どことなくタクミとよく似ている。
きっと彼の両親なのだろうと……そう結論づけると、私は彼らの姿を静かに見守っていた。
タクミは涙で顔をグシャグシャに、強く強く二人にしがみ付いていた。
やっぱり……正しい世界のタクミは過去の世界へ行ったのね……。
誤った世界のタクミは過去の世界は行けてない。
確か……彼の手紙に弾き飛ばされたって書いていたわ。
先ほど通ってきた道のどこかで弾き飛ばされた……?
その結論に至った瞬間、私の体が強く上へと引き上げられると、タクミの姿が消えて行った。
何度も意識が飛びそうになる中、私は何とか瞼を持ち上げてみると、そこは何もない闇の中だった。
抗う事もできず風を切る音が耳に響くのを感じると、突然に私の体がどこかへ引き寄せられ、激しい痛みが全身に走る。
あまりの痛みに膝をつくと、闇の中にフワッとした光が見えた。
その光へ吸い込まれるように向かっていくと、私はあまりの眩しさに瞳を閉じる。
ガガガッ、ガガッ、ザアアアアアアアアア……
頭の中に雑音が入り込んでいると、それに交じってどこからか男の子が聞こえてきた。
「お……お前……もう帰ってきたのか?それで……両親に会う事は出来たのか?」
「あぁ、俺の両親は……魔導師だった。二人がどうして死んだのかは、わからなかったけれど……それでも俺の存在を快く迎い入れてくれた。もう俺に思い残すことはない!俺を騎士団へ突き出してくれ」
聞き覚えのある声に、ゆっくりと瞼を持ち上げてみると、光の先に少年のタクミと、セーフィロの姿映った。
「バカッ……僕は何も見ていない。ターキィーミは何も……何の魔法も使っていない」
そう言い切ったセーフィロは、今にも泣きそうな笑みを浮かべるタクミへと手を伸ばすと、二人は強く抱き合った。
そんな二人の姿を眺める中、抱き合っている彼らの姿に靄がかかっていく。
そのまま二人の姿が消えていくと、辺りは真っ白な世界に包みこまれていった。
今のが正しい世界なのかしら?
という事は……タクミはちゃんと、両親に会えていたって事?
でもそれは……客観的に見て……真実でしかない。
なら……タクミが両親に会えなかったという事と言うのは、過去の世界に戻れていないという事。
でもそれなら……別の人間を使って過去へ戻った事実を作れば改善されるでしょう。
いくら事実を変えようとしても、事実はそうなるように修正される。
人間の時間軸は関係ない。
ならどうして今回は修正されていないのかしら……?
様々な疑問が浮かぶ中、また目の前に薄っすらと景色が浮かび上がってくる。
子供らしい無邪気な笑みを浮かべ走る水色の瞳に、短髪のブラウンの髪を揺らした少年。
その男の子は蒼い髪を長く伸ばした、アメジストの瞳を浮かべた少年に駆け寄っていった。
「なぁ、見てくれ!俺の親父がいた研究室で、すごい魔法を見つけたんだ!」
「すごい魔法……一体どんな魔法なんだ?」
さっきとは別の場面だわ……。
二人がいるのは広場ではなく、白いお城をバックにした大きな建物の傍だった。
タクミは含みを持たせる笑みを浮かべると、セーフィロの手を引いて人気のない場所へと引っ張っていく。
タクミは用心深く周りを気にする中、彼は徐に杖を掲げると防音魔法を唱えた。
「ほら、これだよ。父さんはさぁ……すっげぇ魔法使いだったんだ!!!」
タクミは嬉しそうにセーフィロの前へよれよれになった紙を広げて見せると、それには時空移転魔法と記されている。
これは……タクミが魔法を見つけた時ね。
誤った世界のタクミは、私が落とした紙で時空移転魔法を見つけた。
正しい世界は……彼の両親が時空魔法移転を残していたのね……。
新たな事実に考え込んでいると、また二人の姿に霧がかかっていき、新たな場面に切り替わっていく。
空に大きな丸い月が浮かぶ広場には、私が書いた物と同じ魔法陣が描かれていた。
これは彼が魔法を使う瞬間……。
その魔法陣の中央にはタクミの姿が、はっきりと映し出されていく。
そうして魔法陣から強い光が発せられると、広場一面を照らしていた。
そんな光が集まる中央では、タクミがニッコリと笑みを浮かべながら、ボソボソと何かを唱えたかと思うと……彼の姿が霞んでいく。
眩い光線があたり一面に広がる中、軽い調子で、必ず戻るからな~!と手を振った瞬間、タクミの姿はその場から、跡形もなく消え去った。
彼が消え去った広場には、時空移転魔法で出来た道が目に映った。
咄嗟にその道へ手を伸ばしてみると、私の体が道の中へ吸い込まれていく。
私の体は強い風に吹かれるままに道の中を流れていく中、次第に道が大きく開き、眩い光が差し込むと、どこかへ勢いよく放り出された。
飛ばされたその先には……タクミが二人の人影と抱き合う姿見える。
目を凝らしてよく見てみると、人影が次第に鮮明になっていく。
男女二人は……どことなくタクミとよく似ている。
きっと彼の両親なのだろうと……そう結論づけると、私は彼らの姿を静かに見守っていた。
タクミは涙で顔をグシャグシャに、強く強く二人にしがみ付いていた。
やっぱり……正しい世界のタクミは過去の世界へ行ったのね……。
誤った世界のタクミは過去の世界は行けてない。
確か……彼の手紙に弾き飛ばされたって書いていたわ。
先ほど通ってきた道のどこかで弾き飛ばされた……?
その結論に至った瞬間、私の体が強く上へと引き上げられると、タクミの姿が消えて行った。
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