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新学期編

17 レイモンドとヘンリーの密会

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〈レイモンド目線〉







アイリーンに告白してからの一週間は最高だった。
あいつは俺がじっと見つめたり、笑いかけるだけで赤くなって挙動不審になる。

俺のことを意識しているのがまるわかりなのに、照れているのかまだ好きかわからないと言う。そんなところも可愛いが、早く俺のことを好きと認めてデートとかしてほしい。

でも心配事がない訳じゃない。
従兄のアルバートもアイリーンに惚れたとか言っていたのだ。
確かにアイリーンとアルバートが並ぶとお似合いだ。それを想像すると嫉妬なんてもんじゃない、どす黒い感情が芽生えてくる。

どうか、アイリーンがあいつを選びませんように。そんなことになったら俺はアイリーンにもアルバートにも、何をするか分からない。



俺は休日に図書館の裏に一人で来ていた。
先日アイリーンと図書館に行ったときに会ったアイリーンの弟にアイリーンと、一緒になる気があるなら、話があると耳打ちをされたのだ。
ふざけて言っている感じではなかった。



図書館裏に着くと既に弟はいた。

「話ってなんだ。」
「その前に、何があっても姉上を譲るつもりはないんだな?」
「ああ、勿論だ。」
「なら、話しておかなければならないことがある。だが勘違いするなよ。貴方のためじゃない。」

こいつもなかなか俺と同類のようだ。アイリーンを大切にしているのはわかるから敵とは思わないが。

「まず、貴方はこれまで姉上と関わって不思議に思うことがないか?」
「アイリーンが男が苦手と言っていることか?」
「それもある。まあ順を追って話そうか。」



そうして弟の話は始まった。



「姉上が11歳の頃くらいまで、姉上は母に連れられて社交界に挨拶程度に出ていたんだ。だがそれが不幸に繋がってしまった。どうしてなのか知らないがそこに来ていたブルーノ公爵様が姉上に惚れたと言い始めたんだ。」
「ちょっと待て、あの公爵はものすごいプレイボーイで愛人が沢山いるって噂だぞ。それに奴は今、30歳だ。年の差はどうした。」
「貴方が言うか!まあいい。
取り敢えずうちの両親はまだ姉上が若いことを理由に婚約は愚か会わせることも断った。実際の理由は公爵の女癖の悪さだ。見ての通り、姉上は潔癖な性格だ。いくら公爵が絶世の美男だと言われていても婚約をOKするわけがないと分かっていた両親は姉上には言わずに断った。」
「アイリーンは昔から賢かったからな。知ったら公爵相手に婚約を断れんと思ったんだろう。」
「その通りだ。両親は姉上に選択させてあげたいと思って判断した。しかし公爵は納得しなかった。」
「伯爵家に不利になるように働きかけたのか。」
「そうだ。裏から手を回してうちの領地の商品を不当に安くしか取引できないようにした。だが巧妙すぎて証拠がない。だから、うちの伯爵家が名ばかりの伯爵家になったのはほんの数年前からなんだ。姉上はそれを知らないから自分がしっかりしなきゃと思っているようだけど。」

そうだ。アイリーンはそういうやつだ。また思い出して心が暖かくなる。

だが厄介なところを敵に回している。
現ブルーノ公爵は外務大臣で、わがミュラー家と匹敵する力を持った家だ。

俺は悔しさで手を握りしめた。

残念ながら今の俺では勝ち目はない。俺はまだ公爵じゃないし、年もあと1年たたないと婚約できる年にならない。

「そして我が家の悲劇はこれだけでは終わらなかったんだ。」
「まさか……。」
「そのまさかだよ。あの男に母は殺されたんだ。」






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