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【四章】王と魔王

七話

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 俺を動揺させた張本人は、報告できて満足したとばかりにウルダから受け取ったお茶をニコニコ飲んでいる。


「召喚対象を悪魔のみに絞れば難しくないし、カースの元の召喚魔術が優秀だったから改良も簡単だったぜ~。力入れる所と抜く所がわかってるっていうかさ、無駄がねーの。ほんと、あいつが天才ってのは疑いの余地ねーな。真面目に研究してたら俺らを簡単に超えたんじゃねーかなぁ」


 リヴァロは何でもないようにカースを褒め称えているが、素直に他人を認める事が最も難しかったりする。
 本人は気付いていないが、そこがリヴァロの強みだ。
 しかし、何かに手を加える事が得意なリヴァロは、魔術師からとても嫌われている。自分で描いた絵に筆を勝手に入れられるのが辛いのと同じで、魔術も芸術作品なのだ。

 カースもクワルクもそうだが、魔術師はプライドの高い者が多い。 
 それでもクワルクがリヴァロを認めているのは、元作品に敬意を払っている事を知っているからだ。

 リヴァロは手を加えたものでも元の術式に戻せと言われたらすぐに戻せる。
 完全に別物に変更するという事はしない。あくまでも補助としての立場を崩さず、リヴァロは0を1にした者への最大の敬意を忘れないのだ。
 その上で、制作者と同等、もしくはそれ以上に理解しているからこその改良案を出してくる。その熱意と愛情は制作者にとっては最高のご褒美だろう。
 自分以上に作品を愛してくれているのであればと、リヴァロを認める魔術師はクワルク以外にも徐々に増えていった。

 それでも改良を許せない者は頑なにリヴァロを認めない。
 その気持ちも理解できるから、リヴァロはそういう相手には一切触れない。そうなると今度は馬鹿にされたように感じる者も現れ、リヴァロは魔術師の中では評価が真っ二つに分かれていた。
 今の世界ではかなり状況も変化していてパニールの研究所ではとても好意的に受け入れられているそうだ。それについては俺も嬉しく思う。

 報告を終えて満足したリヴァロは満面の笑みで報告を締めくくる。


「あとはクワルクの情報待ちかな……召喚できても契約できるかは別の話だし……くぁ~~~……ひとまず俺からの報告は以上です!」
「え、あっ、リヴァロ!?」


 大きな欠伸をしたと思いきや、いきなりゴツンッと良い音を立てて机に額をぶつけて眠ってしまった。
 俺が褒めたりする間もなく、リヴァロは完全に力尽きたという感じでスヤスヤ寝息を立てている。
 これだけ楽し気に研究していたのであれば、四日前の当番で俺と寝た時から一切眠らず今日までぶっ通しで研究していた可能性が高い。
 人魔化の影響で体力もあるから、逆に無理をしやすくなってしまったようだ。

 研究大好き人間にとっては人魔化は便利なのかもしれないが、健康には絶対に良くないと思う。いっそ眠る必要のなかった魔物化が一番合っていたとも言える。うーむ。
 自然にベッドで眠る環境になるという意味では、四人の睡眠のためにも俺と寝るのを一日二人にした方が良いのだろうかと考えてしまう。
 あくまで自然な睡眠導入の意図であって、断じてもっとセックスがしたいとかじゃないからな。
 そりゃ、正直に言えば四人と触れ合える行為自体は好きだけど。凄く気持ちも良いしな。愛されてるなってより深く感じるし……。
 ああもう、一人でごちゃごちゃ考えてたら顔が熱くなってきた。


「……とりあえず、俺はリヴァロを寝室に運ぶ。後は頼んだぞ、ウルダ」
「はい、お任せを」


 ウルダはリヴァロの研究成果を丁寧に集め、一つの塵すらも付着しないレベルの保護をかけて片付け始めた。
 おっとりしているが本当にウルダは何でもできるんだよな。万能過ぎる。


「よいしょと」


 俺はリヴァロの背中を支え、両膝の下に片腕を入れて持ち上げた。
 そんなに前の話では無いのに、塔ではこんな風に寝落ちした四人をお姫様抱っこで寝室まで運んだなと懐かしく感じた。

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