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【本編】子豚と魔王
六話 魔王とゆっくり膝の上
しおりを挟むボク達は一緒にお風呂に入って、それから食事をした。
魔王は料理ができないようなのでボクが作った。
学生の頃から一人暮らしだったので自炊は得意だ。
魔王の家にはボクに合わせて、日本の食材や調味料が用意されていたのでありがたかった。
「子豚ちゃんが健康的な体をしている理由がよくわかるね。これほどまでに美味ものを自ら生み出せるのだから」
「この体を健康的って言われたのは初めて……」
親子丼を作っただけでこんなに褒められるとは。
皿洗いをしているボクを、魔王はニコニコと見ている。
セックスをした後くらいから、ボクの話し方がスムーズになっているのが嬉しいらしい。
「脂肪は寒さから身を守ってくれるし、緊急時の蓄えでもある。豊かな証拠だ」
「そうかな」
「国によって美醜の感覚は違うからね。余としては子豚ちゃんの柔らかさが大好きだよ」
「ありがとう……ボクも魔王の体、好きだな……」
「エッチ♡」
「そ、そういう意味じゃ」
美術品みたいな鍛え上げられた筋肉が格好良いからって思ったけど、それに欲情しているなら魔王の言っている事の方が正しい気がする。
ボクは考えを改めた。
「やっぱり魔王の体、エッチだから好き」
「そ、そうハッキリ言われると困っちゃうね……」
実際に魔王の身体は敏感だったし、あんなに気持ち良さそうに乱れている姿を見た後だからしっくりきている。
ボクの考えを読んだのか、魔王の顔が赤くなった。
「子豚ちゃんのスケベ」
「へへ……ごめんね」
照れ隠しで言っているのがわかっているので、ボクは卑屈でなく対応できるのが嬉しかった。
魔王としてもボクの心が読めるし、何より触れられるだけの信仰心があるから信頼してもらえている。
二人だけの世界なら、傷付けることも、傷付くこともないのかもしれない。
ボクは水仕事を終え、魔王とティータイムに入った。
「そういえば、その角って痛くないの?」
万病の薬らしいが、無理矢理人間に折られたのではないか心配だった。
魔王は欠けている部分に触れながら平然と話してくれる。
「痛覚はないから問題ない。それに自分で折ったしな」
「自分で!?」
「よく怪我をする馬鹿がいたのだ。勇者というんだが」
勇者というのは戦いに常に身を投じているのだからよく怪我をするというのは納得ではある。
しかし、魔王の言い方だと何か違うみたいだ。
「あやつはバカ強いのだが、基本馬鹿で、すぐ騙されるし優先順位もおかしいし、その上優しいから自分は全て後回し。そのせいであの馬鹿は余の前に来る時はいつもいつも大怪我をしていた」
何回バカと言うんだろう。でもそれは心配からくるものなのは伝わってくる。
つまり勇者のために角を折ってあげたのかな。
「まあ、そういうことだ。粉末にして舐めれば怪我でも病でもほとんど何でも治せるから持たせた。結局それすらも他人に使ってそうだが」
「勇者は良い人なんだね」
「ふふ……善人と愚か者は区別が難しいがな」
魔王の話を聞いて、勇者の心を読む必要がなかったのも頷ける。
勇者が現れなかったといっても、裏切られたという選択肢がないのも理解できた。
「子豚ちゃん」
「ん……なに?」
ボクは15枚目のクッキーを手に持って顔を上げた。
向かい合う魔王は相変わらず、目も心も奪われ、時が止まってしまいそうなくらい綺麗だ。
「余のことを見ていたい子豚ちゃんはイヤかもしれないけど、余は温もりに飢えている。ここに来てくれないか?」
ここと示されたのは魔王の膝の上だった。
ポンポンと自分の膝を叩いてソワソワしている魔王が可愛い。
「お、重いよ?」
「余を誰だと思っている。やろうと思えば一本の指だけで子豚ちゃんを持てる」
「それもそうだね……」
ボクはすぐに納得し、クッキーの皿を持って魔王の膝に座った。
魔王はボクの腹に腕をまわして密着し、頭に顔を埋めている。
ボクで魔王の孤独を満たせるならいくらでもくっつこう。
「……食事以外はこうする?」
「ああ、そうしよう」
それからゆったりとした時間が流れ、ボクは大量に作ったクッキーを全て食べ切っていた。
魔王はボクの髪をいじったり、脂肪を触って遊んでいるけどよく飽きないな。
「子豚ちゃんこそ同じ味のクッキーを食べ続けていたじゃないか」
「あ~……なるほど」
好きな味はどれだけ食べても飽きないもんな。
自分でそう考えてからボッっと顔が熱くなった。
つまり、魔王はボクの事をそう思ってくれているのだ。
頭上からクククと魔王の押し殺したような笑い声が聞こえてくる。
これが幸せか、と思った。
こんなのんびりとした時間を二人だけで過ごす。それが命尽きるまで続くのだ。
──しかし、その時間は突如終わりを告げた。
バァン!
と、大きな音がしてボクと魔王の真正面に位置している出入口の扉が開かれた。
「魔王! 目覚めたのか!」
ここは魔王が時空を繋げている異世界なはず。なのに、スーツ姿の日本人が何故かいたのだ。
ボクはその顔を何度見かして、叫んでいた。
「勇次!?」
「先輩!?」
「なっ!? 子豚ちゃん、勇者と知り合いなのか!?」
この場の三人が三人、現状に脳の処理が追い付かず、時が止まったみたいに固まった。
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