魔王と子豚のラブラブ♡エッチなスローライフに勇者は絡んでこないでくれ

くろなが

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【本編】子豚と魔王

七話 魔王と子豚と勇者

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 勇次は職場の後輩だった。
 新入社員として入ってきて、ボクが最初の教育係としてペアを組んでいた。
 身長185cm、ストレートの髪、整った顔立ち、鍛えられた身体。
 勇次はとにかく見た目が良かったので、営業としてグングン成績を上げていった。
 ボクがいなくても問題ないと判断された勇次は本社へ栄転した。


「勇者、お前……仕事なんてできたのか?」
「聞いて、魔王! 違うんだ!」


 魔王の言い草も酷いし、勇次も何が違うというのだ。


「俺は見ての通り顔だけは良いだろ? だが魔王も知っているように、俺はとんでもないポンコツだ」


 自分でポンコツって言ったぞコイツ。
 しかしそれに関しては全く否定できない。近くで見ていたボクはよく知っている。
 契約内容は全く理解できないし、自社製品も覚えられない。
 難しい内容は全て聞き流す。しかし話し方や返事だけはめちゃくちゃ良い。
 冗談でタダでやってよとか取引先に言われても全力で『お任せください!』と言い出す。
 ボクは必死にコントロールして……というかボクが全て裏でやっていた。
 勇次の見た目のお陰で、こちらに有利な商談もボクがやるより格段に楽に決まったからそれで良かった。


「先輩は俺のポンコツっぷりを見抜いて、全ての仕事をしてくれていた」
「最低じゃないか」
「違うんだってば、俺だって自分じゃなくて先輩が全部したって言った! でも誰も信じてくれないんだ」


 そう、こいつは陰日向でも必死にボクの事を褒め、上への報告も正確に行っていた。
 しかし、その報告書は上で全て書き換えられ、勇次の成績になっていたし、ボクの事を褒める姿も『あんな豚にも気を使えるイケメンとか完璧すぎるだろ』と勇次の株が上がるだけだった。
 勇次が誰にも信じてもらえず、悔しげに地面を蹴る姿をボクは見ていた。

 何をしても悪く取られるボクと、何をしても良く取られる勇次。
 こいつは本当に良いヤツで、ボクとは逆の立場に苦しんでいた。
 凄いスゴイと純粋にボクの力を認めてくれた、数少ない理解者の一人は勇次なのだ。


「やはり世界を消すか?」


 魔王が静かにブチ切れている。


「魔王も先輩もいない世界ならそれもありだな」
「勇者がそんな事言っちゃダメだろ!?」


 ボクは慌てて止める。
 なんで魔王と勇者が親友なのかわかった気がする。根底の価値観が似ているんだ。


「そういや勇次、本社に移ってからあんまり話聞かなかったけど、元気だったか?」
「ええ、俺は元気ですよ。本社は元気じゃないですけど」


 笑顔でサラリと怖い事を言う。
 ボクは途中からもっと条件の良い別業界に転職していたからその後の事をあまり知らない。


「俺という、無能な働き者を制御できる存在は先輩だけでしたね」
「なんで自慢げなの?」
「ふん、流石は勇者だな。子豚ちゃんの素晴らしさを理解できるとは」
「も、もうボクのことはいいよ」


 当時から勇次に懐かれているとは思っていたけど、ここまでだとは思っていなかった。
 それより気になるのは過去の話だ。


「勇次、なんで千年前、魔王の棺を奪ったあと行方をくらましたんだ?」
「恥ずかしながら、うっかり死んじゃって」


 勇次はテヘペロという文字が浮かんでいそうな顔で舌を出した。


「うっかり!?」
「子豚ちゃん、勇者のポンコツっぷりは知っているのだろう?」
「そ、そうだった」


 それで納得してしまう自分が怖い。
 魔王も特に驚いてないって事は、転生しても昔から何一つ変わってないということか。


「えっ……じゃあ、魔王の仮死解除の方法もうっかり間違えたとか?」
「……先輩、ちょっと、お耳を」
「う、うん」


 魔王の膝から降り、勇次と共に部屋の隅に移動する。
 隠し事は魔王になんの意味もないけど、まあいいだろう。
 勇次は俺の耳に顔を寄せた。


「実は……ずっと魔王のことが好きで……逃亡の機会に想いを遂げようとしちゃったんですよね」
「バカなのか!?」


 馬鹿なんだった。
 ボクの『普通に考えてわざわざセックスしないといけない面倒な解除方法を、重要な逃亡前に選ぶわけがないんだ』って真面目な推理を返してくれ。


「えぇ……もしかして死んだのって……」
「そんな状態で無防備になれば追手どころかただの賊にすら殺されますよね、ハハハ!」
「ハハハじゃない、なんで正々堂々告白しなかった!?」
「そ、そんな、告白だなんて恥ずかしいじゃないですかっ」


 眠っている相手に想いを遂げる方が恥ずかしいだろう。
 しかし、それはボクにもブーメランが突き刺さるのだ。
 さすがに勇次とは前提条件が違い過ぎるけど。


「勇次は、今も魔王が好きなのか?」
「ま、まあ……そう、ですね……やっぱり会ったら好きだなって思いましたね」
「なら今からでも正々堂々告白しろ!」
「えっ!? そ、そんな、突然!?」


 両手で顔を覆って耳まで赤くしてんじゃない。乙女か。
 普通の人間だったら察しているであろうことを、勇次はポンコツだから気付いていないと思ったので、ボクは伝える。


「突然も何もお前、なんで魔王が目覚めて、ボクが魔王と一緒にいると思ってるんだ?」
「え?」
「だから、ボクが魔王を抱いて、目覚めさせたってこと! えーと、勇次にわかりやすく言えば、それがキッカケで魔王とボクは付き合って同棲することになったから、勇次が何もせずに魔王を手に入れるのは無理なんだよ。ちゃんと気持ちを伝えるしかないんだ」
「……ハッ!?」


 そこまで言って、ようやく勇次は理解したらしい。
 滝のように目から涙を流し始め、最終的には大声をあげ、鼻水もヨダレも垂れ流す大号泣になった。
 イケメンにあるまじきグチャグチャな顔だったが、それでも綺麗なのが凄いと思った。

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