魔王と子豚のラブラブ♡エッチなスローライフに勇者は絡んでこないでくれ

くろなが

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【本編】子豚と魔王

八話 魔王と勇者は親友のまま

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 子供のように泣いている勇次のために魔王がタオルを持ってきてくれた。


「途中から大声でほとんど聞こえていたが」
「だ、だよね」


 本当に勇次に関しては心を読む必要がないな。
 それでも恋心までは伝わっていなかったのは勇次らしいが。


「子豚ちゃんと同時期に転生していながら、勇者は余を迎えに来ず何をしていたのだ?」


 確かに。魔王の棺はかなり大々的にニュースや広告で目にする機会があったはずだ。
 いくら勇次でも知らなかったという事はないと思いたい。
 エグエグと鼻をすすりながら少しずつ勇次は落ち着きを取り戻していく。


「もちろん知っていたし、何度も見に行ったさ。でも、現代は強さが全然意味を持たないんだ。ただ見た目が良いだけで他はダメダメな俺にどうやって厳重に管理された魔王に近付けるというんだ……」


 勇次は勇者なだけあって、悪事は絶対に働かない。
 やろうと思えば、博物館を襲撃だってできるだろう。
 でもそれをしなかった。


「まあ、勇次じゃなくても難しいよな」


 こればっかりはボクもアウトな事を色々やったのだ。
 誰かを傷付けるとか、騙すとかはしていないはずだけど、法にはいくつも触れたと思う。
 死ぬ気でやれば何でもできるとはこういうことかと納得したものだ。


「……だが、子豚ちゃんはやってのけた」


 魔王がそう言ってボクを抱き上げ、ひとしきり頬ずりしてから勇次に言った。


「勇者の気持ちは嬉しく思うし、千年前だったらもしかしたら結果は違ったかもしれない。だが今の余は子豚ちゃんにメロメロなのだ。ただの人間が余に触れられるほど想い、そして我が身を手に入れた。勇者にならこの凄さが理解できるだろう」
「そうだな……それに、ライバルの俺にまでちゃんと告白しろって諭す人なんて先輩くらいだ」


 勇次は袖で顔をゴシゴシ拭い、ボクを見た。


「俺、先輩の事も大好きなんで。魔王の相手が先輩で良かった」
「勇次……」
「また出直します。魔王の無事も確認でき、先輩が一緒なら俺が心配することはなくなりました」


 まだ辛そうではあるが、勇次は精一杯微笑んで、ボクが止める間もなく出て行った。
 忙しないやつだ。

 勇次は勇者だったのか。今更その事実がボクに染み渡る。

 あいつはよく会社の備品を壊していた。
 勇次が掴んだ取っ手のひび割れだったり、握った物がよく壊れ、勇次はしきりに謝っていた。
 たまたま不良品だったんだねと運が悪い程度で済まされていて、誰も勇次を責めなかったし、ボクも同じ程度の認識だった。
 それでも勇次はひどく落ち込んでいた。その意味が今ようやくわかった。
 魔王はボクの思考に同意したのか言葉を紡ぐ。


「勇者は、魔王とそれほど変わらない。強大な力の矛先が人に有益か、人に害をなすかの違いだ。そして平和な世界では、勇者も害にしかならないだろうな」
「勇次は言ってた。頼まれると断れない、正確には断りたくないって。どれだけ自分に不利益であっても、誰かのためになるならそれで良いという思いが曲げられないみたいで」
「あいつの性格は、勇者の呪いと言えるな。昔はそれで良かったかもしれんが、今の社会では周りに迷惑がかかってしまう」


 しかし、どれだけ周りに迷惑がかかっても、それでも周りに好かれる。
 人に好かれれば好かれるほど、勇次は病んでるみたいだった。
 好かれる理由が見当たらないのに、好意を寄せられるのであれば、それも呪いと変わらない。


「ボクは、なんでこいつは何をやっても上手くいくのに悩んでいるんだろうって思ってた。でも、正当ではない評価に苦しむっていう点ではボクと同じだって気付いて」
「ふふ……それで勇者は子豚ちゃんに救われたんだね」


 そうだといいな。
 でも、魔王はあんなにあっさり勇次を振って良かったのだろうか。
 別に他を選んで欲しいという訳じゃなくて、一番仲が良かったんだし、もっと時間をかけて考えなくていいのか心配した。


「あの愚かな所も含めて勇者の事は気に入っているよ。だが、余はもう子豚ちゃんを知ってしまったからな……」
「ぼ、ボクの……何を?」
「子豚ちゃんとの、セックス♡」


 耳元でそう囁かれてゾクゾクした。
 薄々感じてたけど、魔王ってかなりエッチだと思う。
 元からなのかな。過去の事を詮索するつもりはないけど、モヤモヤしてしまう。


「嫉妬か?」
「そうじゃ、ないけど……」
「余の初めては子豚ちゃんだ。信じられないかもしれないがな」
「あっ、エッ!?」


 首を横に向けるとすぐに魔王の顔がある。
 その瞳は少し悲しそうに見えた。


「信仰心のない者は触れることもできず、信仰心がある者は余を神格化し、恐れ多い、不敬だからと尚更触れない。気軽に余に触れたのは勇者だけだが、まあ、あの感じだから手を出すなんてあり得なかった」
「それは……確かに」
「子豚ちゃんは信仰心が強いのに態度は普通。だが積極的だなんて、余の理想じゃないか」


 その声は少し涙が混じり、震えていた。
 魔王はボクの首に顔を埋め、ギュッと腕に力をこめた。
 ボクは焦ってしまう。
 別に疑うとかじゃなくて、魔王は魅力的だから、ボクが初めてな訳がないっていう先入観というか……やっぱりボクが悪いな。


「魔王、ごめん……魔王の気持ちも考えないで」
「……いや、子豚ちゃんが気にする事じゃない。触れられるだけでなく、身体を繋げるだなんて夢のようだったからね」


 魔王にとってのセックスは、想像以上に深い意味を持っていた。
 本当の意味で、長い孤独を埋められる行為だったんだ。


「ボクでいいなら……いっぱい、しようね」


 その言葉に魔王は頷いた。
 動いた長い髪がボクの肌を撫でて、少しくすぐったかった。

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