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第4章 棋士の立場
第67話 カラスが指し直し局で戦ったら(その3)
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「お疲れ様でした」
解説兼立会人の守口敏内九段と聞き手の浜内貴理子女流三段が対局場に登場した。
「とりあえず1局目から並べてみましょうか」
「はい」
「はい」
佐藤巧叡王と鈴香が駒をきれいに並べて、1局目を再現していく。
「千日手は作戦に入っていました?」
スバリと浜内が尋ねると、佐藤が「ええ、まあ」と言葉を濁しつつも同意した。
序盤から中盤。
佐藤と鈴香が駒を進める中で、守口がちょっとした変化に触れる。
「確かにそれも一局ですね」
クロが盤上を見つめるばかりなので、もっぱら答えるのは佐藤ばかり。
鈴香が「どう?」とクロに聞いてみるものの、クロは「クワッ」と鳴くだけで駒を咥えたり盤に上がったりすることはない。
やがて千日手の局面となる。
「で、千日手が成立ですね」
守口が鈴香に尋ねる。
「クロさんは千日手は理解してるの?」
「たぶん分かってると思います。並べた棋譜の中に千日手のもありましたし、千日手になった中継も一緒に見てたので…」
一同から「ふーん」との声がもれる。
「持将棋はどう?」
今度は佐藤が尋ねる。
その顔は厳しかった。
「多分分かってると思うんですけど、駒の点数制まで分かってるかは…ちょっと」
またも「ふーん」との声があがる。
「じゃあ、2局目を並べていきましょうか」
「はい」
「はい」
佐藤と鈴香が駒を整えた後、佐藤が飛車先の歩を突いた。
サラサラと序盤から中盤まで進む。
途中で守口が変化に触れることがあったものの、少し変化を示すくらいに留まる。
そして注目の局面に至る。
佐藤が角を引いた手だ。
「ここは同角と取る手はありませんでしたか?」
守口の言葉に佐藤が「うーん」と考え込む。
「あるとは思ったんですが、その後の展開が思わしくなくて…」
同角からの展開について、佐藤が手を進めて行く。
「こんな具合になると思うんですけど…」
「ええ、良い勝負ですよね」
しかし佐藤は「うーん」とうなって、すんなり同意しなかった。
「ちょっと嫌な筋が浮かんだんですよね」
「と言うと?」
佐藤はさらに数手進める。
大きくさばいて佐藤が攻め込む順だ。
「こんな感じになりそうですが…」
「良い勝負…では?」
しばらく黙っていた佐藤が口を開く。
「なんか入玉されるかも…と」
守口が盤上で指を動かすと「ああ」とうなずいた。
「こうこうこう…で、こうなる。…そうか、難しいですね」
「ええ、クロさんが入玉狙いで動いてくると、どうにも止められそうになくって」
佐藤と守口がいろんな変化を示していく。
佐藤がさばいて、クロも攻め合いにくれば佐藤が互角以上になりそうだ。
しかしクロが玉の安全を最優先にして、一心不乱に入玉を目指すと…
「ちょっと駒不足ですね」
「ええ金駒一枚でもあれば、違うんでしょうけど」
佐藤が自陣の4枚穴熊を見る。クロの玉を止めるために使いたい金銀が左側に偏っていた。
その後も佐藤と守口が局面を打開しようと、いろんな手を上げていくが思わしい手順にはならなかった。
「クロさんはどうなのかな?」
守口が鈴香に尋ねる。
「クロ、何かある?」
鈴香が尋ねるものの、クロは「クワッ」と鳴いた後、鈴香の肩に乗る。
「キャッ」
クロが鈴香に頬ずりすると、くすぐったい鈴香が声を上げた。
「ダメみたいですね」
守口と佐藤が残念な顔を見せつつも苦笑した。
「ごめんなさい」
鈴香が申し訳なさそうに頭を下げる。
クロも真似をするように何度も頭を下げた。
「いやいや、鈴香ちゃんが謝ることじゃないよ」
佐藤が声をかけると、鈴香が「ありがとうございます」と返した。
「それでは、この辺りで」
「ええ、そうですね」
守口と佐藤が同意したことで感想戦が終わる。
それを確認して読み上げの岡田絵里香女流二段が恒例のセリフを告げた。
「ご覧の通り、ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負の第4局、佐藤巧叡王対角野クロさん一戦は千日手の後、指し直し局でクロさんの勝ちとなりました。通算成績はクロさんの4勝1分けです。第5局の水瀬石也九段との対局は来月20日に放送予定です。皆さま、どうぞ楽しみにお待ちください」
最後に全員が頭を下げる。
クロも「クワァ」と鳴いて頭を下げた。
解説兼立会人の守口敏内九段と聞き手の浜内貴理子女流三段が対局場に登場した。
「とりあえず1局目から並べてみましょうか」
「はい」
「はい」
佐藤巧叡王と鈴香が駒をきれいに並べて、1局目を再現していく。
「千日手は作戦に入っていました?」
スバリと浜内が尋ねると、佐藤が「ええ、まあ」と言葉を濁しつつも同意した。
序盤から中盤。
佐藤と鈴香が駒を進める中で、守口がちょっとした変化に触れる。
「確かにそれも一局ですね」
クロが盤上を見つめるばかりなので、もっぱら答えるのは佐藤ばかり。
鈴香が「どう?」とクロに聞いてみるものの、クロは「クワッ」と鳴くだけで駒を咥えたり盤に上がったりすることはない。
やがて千日手の局面となる。
「で、千日手が成立ですね」
守口が鈴香に尋ねる。
「クロさんは千日手は理解してるの?」
「たぶん分かってると思います。並べた棋譜の中に千日手のもありましたし、千日手になった中継も一緒に見てたので…」
一同から「ふーん」との声がもれる。
「持将棋はどう?」
今度は佐藤が尋ねる。
その顔は厳しかった。
「多分分かってると思うんですけど、駒の点数制まで分かってるかは…ちょっと」
またも「ふーん」との声があがる。
「じゃあ、2局目を並べていきましょうか」
「はい」
「はい」
佐藤と鈴香が駒を整えた後、佐藤が飛車先の歩を突いた。
サラサラと序盤から中盤まで進む。
途中で守口が変化に触れることがあったものの、少し変化を示すくらいに留まる。
そして注目の局面に至る。
佐藤が角を引いた手だ。
「ここは同角と取る手はありませんでしたか?」
守口の言葉に佐藤が「うーん」と考え込む。
「あるとは思ったんですが、その後の展開が思わしくなくて…」
同角からの展開について、佐藤が手を進めて行く。
「こんな具合になると思うんですけど…」
「ええ、良い勝負ですよね」
しかし佐藤は「うーん」とうなって、すんなり同意しなかった。
「ちょっと嫌な筋が浮かんだんですよね」
「と言うと?」
佐藤はさらに数手進める。
大きくさばいて佐藤が攻め込む順だ。
「こんな感じになりそうですが…」
「良い勝負…では?」
しばらく黙っていた佐藤が口を開く。
「なんか入玉されるかも…と」
守口が盤上で指を動かすと「ああ」とうなずいた。
「こうこうこう…で、こうなる。…そうか、難しいですね」
「ええ、クロさんが入玉狙いで動いてくると、どうにも止められそうになくって」
佐藤と守口がいろんな変化を示していく。
佐藤がさばいて、クロも攻め合いにくれば佐藤が互角以上になりそうだ。
しかしクロが玉の安全を最優先にして、一心不乱に入玉を目指すと…
「ちょっと駒不足ですね」
「ええ金駒一枚でもあれば、違うんでしょうけど」
佐藤が自陣の4枚穴熊を見る。クロの玉を止めるために使いたい金銀が左側に偏っていた。
その後も佐藤と守口が局面を打開しようと、いろんな手を上げていくが思わしい手順にはならなかった。
「クロさんはどうなのかな?」
守口が鈴香に尋ねる。
「クロ、何かある?」
鈴香が尋ねるものの、クロは「クワッ」と鳴いた後、鈴香の肩に乗る。
「キャッ」
クロが鈴香に頬ずりすると、くすぐったい鈴香が声を上げた。
「ダメみたいですね」
守口と佐藤が残念な顔を見せつつも苦笑した。
「ごめんなさい」
鈴香が申し訳なさそうに頭を下げる。
クロも真似をするように何度も頭を下げた。
「いやいや、鈴香ちゃんが謝ることじゃないよ」
佐藤が声をかけると、鈴香が「ありがとうございます」と返した。
「それでは、この辺りで」
「ええ、そうですね」
守口と佐藤が同意したことで感想戦が終わる。
それを確認して読み上げの岡田絵里香女流二段が恒例のセリフを告げた。
「ご覧の通り、ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負の第4局、佐藤巧叡王対角野クロさん一戦は千日手の後、指し直し局でクロさんの勝ちとなりました。通算成績はクロさんの4勝1分けです。第5局の水瀬石也九段との対局は来月20日に放送予定です。皆さま、どうぞ楽しみにお待ちください」
最後に全員が頭を下げる。
クロも「クワァ」と鳴いて頭を下げた。
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