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第4章 棋士の立場
第70話 カラスが新たな女流棋士と戦ったら(その3)
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「1分経過しました」
読み上げ係を務める菱子が時間を告げる。
「うーん」
厳しい目で盤面を見つめていた宙奈々実《ちゅう ななみ》女流三段が「負けました」と頭を下げた。
「クワア」
クロが「ありがとうございました」とでも言うように鳴いて頭を下げた。
周囲で観戦していた朝草将棋クラブの常連の中からパチパチと拍手が起こる。
しばらく誰も口を開かなかったが、朝草将棋クラブの席主である大升が「並べ直してみたら」と声をかける。
「はい」
宙が駒を整える。
「じゃあ、私が!」
いつものように鈴香が並べようとしたところで、歩美が進み出る。
「うん、良いんじゃない」
大升や佐倉が同意したことで、歩美が感想戦における臨時の相手となった。
小学生とは言え、歩美も鈴香同様に研修生であり、1局の将棋を並べ直すのは苦でもない。
パチリ
ピシッ
パチッ
サラサラと初手から再現されていく。
「この辺り…です…か?」
角交換から攻め合いになったところで宙が顔を上げる。
佐倉が将棋ソフトの入ったノートパソコンを見ながら判断した。
「うん、その手までは、ほぼ互角だね」
「すると、この次の手?」
「ああ、そこで桂打ちが早かったみたい」
「ソフトの最善はなんですか?」
「金を寄る手と飛車を引く手が同率で」
宙は金と飛車に交互に触れる。
「ちょっと見せてもらえますか?」
佐倉がパソコンを向けると、宙は画面を覗き込んだ。
金を寄った手と飛車を引いた手の展開を調べる。
「そうか…」
パソコンから盤面に目を戻す。
本局の手順を歩美と追っていく。
投了の手まで再現を終えた。
「強いねー、クロさん」
そう宙がつぶやくと、飼い主である鈴香が「ありがとうございます」と微笑んだ。
「クロさんはどんな風に勉強してるの?」
鈴香はネットの将棋中継を見たり、新聞や将棋ワールドの棋譜を並べたりしていることを話す。
「あ、もちろん、私やじいちゃん達とも指すんですけど」
「そうか…」
「それと七番勝負の相手の棋譜を並べています」
「ふーん、対戦相手の研究もしてるのね」
こうしたクロの練習方法については、これまでにもいろんなところで話していた。
「はい、辻井先生は相手を絞った研究はしていないんですよね」
「そうみたいね」
その後は即席のサイン会兼撮影会となった。
佐倉が「もう1局指したら?」と勧めたものの、宙は「今の1局をしっかり振り返りたいので」と棋譜を受け取るにとどめた。
その後はパーティーが再開される。
「そうか、研修会と奨励会か。少し前のことだと思ったけど、どちらも懐かしいなあ」
鈴香、歩美、菱子の3人との女子?ト-クは弾んだ。
「あの、1局教えてもらえますか?」
菱子が言い出したことで、3人との3面指しが行われることになった。
奨励会員である菱子とは角落ち、鈴香と歩美とは飛車落ちの手合い。
やはり朝草将棋クラブの常連らが見守る中で、4人の対局が進む。
いずれも熱戦となり、菱子、鈴香、歩美が宙の王将を寄せ切った。
ただし先輩棋士としての指導対局であり、十分に局面を盛上げた後、3人に花を持たせてくれたのは言うまでもない。
「女流王将戦のタイトル戦、頑張ってくださいね」
「うん、ありがとう」
結局として、宙の飛び入り参加が一層盛り上げる形でクロのパーティーが終わった。
読み上げ係を務める菱子が時間を告げる。
「うーん」
厳しい目で盤面を見つめていた宙奈々実《ちゅう ななみ》女流三段が「負けました」と頭を下げた。
「クワア」
クロが「ありがとうございました」とでも言うように鳴いて頭を下げた。
周囲で観戦していた朝草将棋クラブの常連の中からパチパチと拍手が起こる。
しばらく誰も口を開かなかったが、朝草将棋クラブの席主である大升が「並べ直してみたら」と声をかける。
「はい」
宙が駒を整える。
「じゃあ、私が!」
いつものように鈴香が並べようとしたところで、歩美が進み出る。
「うん、良いんじゃない」
大升や佐倉が同意したことで、歩美が感想戦における臨時の相手となった。
小学生とは言え、歩美も鈴香同様に研修生であり、1局の将棋を並べ直すのは苦でもない。
パチリ
ピシッ
パチッ
サラサラと初手から再現されていく。
「この辺り…です…か?」
角交換から攻め合いになったところで宙が顔を上げる。
佐倉が将棋ソフトの入ったノートパソコンを見ながら判断した。
「うん、その手までは、ほぼ互角だね」
「すると、この次の手?」
「ああ、そこで桂打ちが早かったみたい」
「ソフトの最善はなんですか?」
「金を寄る手と飛車を引く手が同率で」
宙は金と飛車に交互に触れる。
「ちょっと見せてもらえますか?」
佐倉がパソコンを向けると、宙は画面を覗き込んだ。
金を寄った手と飛車を引いた手の展開を調べる。
「そうか…」
パソコンから盤面に目を戻す。
本局の手順を歩美と追っていく。
投了の手まで再現を終えた。
「強いねー、クロさん」
そう宙がつぶやくと、飼い主である鈴香が「ありがとうございます」と微笑んだ。
「クロさんはどんな風に勉強してるの?」
鈴香はネットの将棋中継を見たり、新聞や将棋ワールドの棋譜を並べたりしていることを話す。
「あ、もちろん、私やじいちゃん達とも指すんですけど」
「そうか…」
「それと七番勝負の相手の棋譜を並べています」
「ふーん、対戦相手の研究もしてるのね」
こうしたクロの練習方法については、これまでにもいろんなところで話していた。
「はい、辻井先生は相手を絞った研究はしていないんですよね」
「そうみたいね」
その後は即席のサイン会兼撮影会となった。
佐倉が「もう1局指したら?」と勧めたものの、宙は「今の1局をしっかり振り返りたいので」と棋譜を受け取るにとどめた。
その後はパーティーが再開される。
「そうか、研修会と奨励会か。少し前のことだと思ったけど、どちらも懐かしいなあ」
鈴香、歩美、菱子の3人との女子?ト-クは弾んだ。
「あの、1局教えてもらえますか?」
菱子が言い出したことで、3人との3面指しが行われることになった。
奨励会員である菱子とは角落ち、鈴香と歩美とは飛車落ちの手合い。
やはり朝草将棋クラブの常連らが見守る中で、4人の対局が進む。
いずれも熱戦となり、菱子、鈴香、歩美が宙の王将を寄せ切った。
ただし先輩棋士としての指導対局であり、十分に局面を盛上げた後、3人に花を持たせてくれたのは言うまでもない。
「女流王将戦のタイトル戦、頑張ってくださいね」
「うん、ありがとう」
結局として、宙の飛び入り参加が一層盛り上げる形でクロのパーティーが終わった。
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