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第4章 棋士の立場
第77話 カラスが七番勝負の第5局に向かったら(その1)
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「こんにちはー」
七番勝負第5局の対局日。
Hamabe TVの控室では、クロ達を中心に話が盛り上がっていた。
今日の立会人兼解説役となる久利保秋九段。
振り飛車党の1人でタイトル獲得実績が何期もあるベテラン棋士だ。
そして聞き手を務める加納梅子女流四段と読み上げを担う宙奈々実女流三段。
「本当にこの間はすみませんでした」
宙が深々と頭を下げた。
「壬生会長にも怒られまして、罰として読み上げをするように、と」
「うーん、でも、これって罰になるんですかねえ」
久利が指摘すると、皆から笑いが起こる。
「そうですよね。クロさんに勝負を挑むと読み上げができるなんて、皆が真似しちゃいますよ」
加納も同意したことで一段と大きな笑い声になる。
その他にも何人もの棋士や女流棋士がクロの控室を訪れている。
クロとの記念写真を望む棋士が多く、順番にクロとのツーショットに収まっていた。
それと同時に、朝草将棋クラブの席主である大升と常連の佐倉はサインを貰ったり記念写真を撮ったりと大忙しだ。
言うまでもなく、それらの色紙や写真は朝草将棋クラブに飾られれるだろう。
「お詫びと言っては何だけど、チーズやカニカマを持ってきたの」
宙がエコバッグを差し出す。その言葉通りに、いろんな種類のチーズやカニカマが入っていた。
「クワッ」
エコバッグから鈴香がチーズを取り出すと、その音で理解したのかクロがうれしそうに羽ばたいた。
「まだ時間もお腹も余裕があるみたいだから、宙さん、あげてみます?」
「いいの?やったあ!」
宙がよろこんでチーズを取り分ける。
そのうちの1つを摘まんで差し出すと、クロがクチバシを大きく開けてパクリと食べた。
「クワッ」
まるで「おいしい」とでも言うように鳴き、羽根を羽ばたかせた。
見ていた棋士達の中から「おおっ!」と声があがる。
「私も!」
「俺も!」
ほとんどの棋士や女流棋士が手を上げたが、さすがに全てをクロが食べきることはできない。
相談の末に皆でジャンケンをして、2人の女流棋士と1人の棋士が選ばれる。
「あーん」
「クワア」
「はいっ」
「カア」
「ほらっ」
「クワッ」
三者三様にチーズを摘まんでクロに食べさせる。
クロはどれもおいしそうに食べた。
「じゃあ、そろそろ…」
「はい、また後でよろしくお願いします」
鈴香らが見送る中で棋士達は控室を出て行った。
その時、今日の対局相手となる水瀬石也《みなせ せきや》九段は1人で控室にいた。
「あれ?水瀬さんは行かないの?」
「対局前に会っておいても良いと思いますよ」
久利九段や加納女流四段らに誘われたものの、水瀬は「いえ、ここにいます」ときっぱり断った。
すぐ後に対局する相手と馴れ馴れしくするのは、どうにも気が進まなかった。
それがカラスであったとしても。
それが将棋を指すカラスであったとしても。
それが将棋を指す世にも珍しいカラスであったとしても。
「…やっぱり写真くらいは撮っても良かったかなあ」
水瀬は後悔していた。
七番勝負第5局の対局日。
Hamabe TVの控室では、クロ達を中心に話が盛り上がっていた。
今日の立会人兼解説役となる久利保秋九段。
振り飛車党の1人でタイトル獲得実績が何期もあるベテラン棋士だ。
そして聞き手を務める加納梅子女流四段と読み上げを担う宙奈々実女流三段。
「本当にこの間はすみませんでした」
宙が深々と頭を下げた。
「壬生会長にも怒られまして、罰として読み上げをするように、と」
「うーん、でも、これって罰になるんですかねえ」
久利が指摘すると、皆から笑いが起こる。
「そうですよね。クロさんに勝負を挑むと読み上げができるなんて、皆が真似しちゃいますよ」
加納も同意したことで一段と大きな笑い声になる。
その他にも何人もの棋士や女流棋士がクロの控室を訪れている。
クロとの記念写真を望む棋士が多く、順番にクロとのツーショットに収まっていた。
それと同時に、朝草将棋クラブの席主である大升と常連の佐倉はサインを貰ったり記念写真を撮ったりと大忙しだ。
言うまでもなく、それらの色紙や写真は朝草将棋クラブに飾られれるだろう。
「お詫びと言っては何だけど、チーズやカニカマを持ってきたの」
宙がエコバッグを差し出す。その言葉通りに、いろんな種類のチーズやカニカマが入っていた。
「クワッ」
エコバッグから鈴香がチーズを取り出すと、その音で理解したのかクロがうれしそうに羽ばたいた。
「まだ時間もお腹も余裕があるみたいだから、宙さん、あげてみます?」
「いいの?やったあ!」
宙がよろこんでチーズを取り分ける。
そのうちの1つを摘まんで差し出すと、クロがクチバシを大きく開けてパクリと食べた。
「クワッ」
まるで「おいしい」とでも言うように鳴き、羽根を羽ばたかせた。
見ていた棋士達の中から「おおっ!」と声があがる。
「私も!」
「俺も!」
ほとんどの棋士や女流棋士が手を上げたが、さすがに全てをクロが食べきることはできない。
相談の末に皆でジャンケンをして、2人の女流棋士と1人の棋士が選ばれる。
「あーん」
「クワア」
「はいっ」
「カア」
「ほらっ」
「クワッ」
三者三様にチーズを摘まんでクロに食べさせる。
クロはどれもおいしそうに食べた。
「じゃあ、そろそろ…」
「はい、また後でよろしくお願いします」
鈴香らが見送る中で棋士達は控室を出て行った。
その時、今日の対局相手となる水瀬石也《みなせ せきや》九段は1人で控室にいた。
「あれ?水瀬さんは行かないの?」
「対局前に会っておいても良いと思いますよ」
久利九段や加納女流四段らに誘われたものの、水瀬は「いえ、ここにいます」ときっぱり断った。
すぐ後に対局する相手と馴れ馴れしくするのは、どうにも気が進まなかった。
それがカラスであったとしても。
それが将棋を指すカラスであったとしても。
それが将棋を指す世にも珍しいカラスであったとしても。
「…やっぱり写真くらいは撮っても良かったかなあ」
水瀬は後悔していた。
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