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第4章 棋士の立場
第81話 カラスが軍曹と対局したら(その3)
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「1分経過しました」
読み上げを務める宙奈々実女流三段が時間を知らせる。
「はい」
パチリ
応えると同時に水瀬石也九段が、また歩を突き捨てる。
クロはノータイムで応じる。
コトン
一方、水瀬は考え込む。
もちろん長時間ではないが、1分か2分の考慮を重ねて1手を指す。
ピシリ
またもクロはノータイムで駒を動かす。
カタッ
水瀬の指し手にクロが真っすぐに応じたことで、そこから激しい戦いになる。
「久利先生の予想通りになりましたね」
聞き手の加納梅子女流四段が話しを振った。
「ええ、この辺りは一直線だと思います」
解説の久利保秋九段が大盤の駒を動かす。
「ただ、問題は捌いた後です」
「はい」
久利が駒を動かしていく。
有力そうに思える手順をいくつか披露すると、加納が優劣を尋ねる。
「うーん、ほぼ互角だと思います。あとは好みかなあ」
「久利先生は先手持ちですか?」
先程の“|捌き”を思い出してか、加納が尋ねる。
「そうですねえ。加納さんはクロさんの方?」
「はい、やっぱり固さは強さかと」
「間違いないですね。ただ、水瀬さんの玉も広いですよ」
久利は水瀬の玉将を上下左右に動かす。
パチリ
コトッ
ピシッ
カタン
水瀬とクロが中盤の手を指し進める。
互いに交換した駒を相手陣に打ち込んだり、自陣に打って固めたりする。
一進一退の攻防が続くものの、将棋ソフトの形勢判断でもほぼ互角のまま進んで行く。
「この辺りの変化は必然でしょうか?」
加納が直前の指し手に触れる。
「いや、そんなことはないと思います」
「例えば?」
久利が「そうですね」と言いつつ、少し手を戻す。
「ここでは銀打ちもあったと思います」
「はあ」
久利が大盤の駒をパタパタと動かす。
「こんな具合です」
「これも互角ですか?」
「…だと思います」
今度は加納が「もう少し前のこの局面ですが…」と大盤の駒に触れる。
「はい?」
「こんな手はありませんか?」
クロ陣に攻め込んでいた水瀬の竜をひとつ引いた。
「次はこんな手を狙って…」
「ああ!」
久利がうなずく。
「それも有力な攻め手だと思います」
その後の手順を追う。
「ここまで来ると相当厳しいですけど、でもクロさんに駒を渡し過ぎるかかあ」
「クロさんからの反撃が厳しいですか?」
久利が「ええ」と、駒音高く持ち駒の角を大盤に打ちつける。
「どうします?」
加納が「ええと」と悩みつつ、金を引いて受けた。
「うーん、その手だと、こうなるでしょうね」
久利がクロの豊富な持ち駒から手を進めて行くと、水瀬陣がどんどん崩れていく。
水瀬の玉将を守っていた金銀がはがされて、あっという間に受けるのが難しくなっていく。
「あー、だめですね」
加納がガックリと肩を落とした。
しかし「いえいえ」と久利が励ます。
「ここは金を引くよりも、歩を打って受ければ十分です」
「そうなんですか?」
久利がその後の手順を示す。
確かに先ほどよりはしっかりとクロからの受け止めている。
「まあ、一手間違えればってのは、よくあることですから」
パチリ
カタッ
ピシリ
コトリ
「お、そうこうしているうちに…」
久利と加納が大盤の駒を戻す。
局面は中盤から終盤に差し掛かっていた。
読み上げを務める宙奈々実女流三段が時間を知らせる。
「はい」
パチリ
応えると同時に水瀬石也九段が、また歩を突き捨てる。
クロはノータイムで応じる。
コトン
一方、水瀬は考え込む。
もちろん長時間ではないが、1分か2分の考慮を重ねて1手を指す。
ピシリ
またもクロはノータイムで駒を動かす。
カタッ
水瀬の指し手にクロが真っすぐに応じたことで、そこから激しい戦いになる。
「久利先生の予想通りになりましたね」
聞き手の加納梅子女流四段が話しを振った。
「ええ、この辺りは一直線だと思います」
解説の久利保秋九段が大盤の駒を動かす。
「ただ、問題は捌いた後です」
「はい」
久利が駒を動かしていく。
有力そうに思える手順をいくつか披露すると、加納が優劣を尋ねる。
「うーん、ほぼ互角だと思います。あとは好みかなあ」
「久利先生は先手持ちですか?」
先程の“|捌き”を思い出してか、加納が尋ねる。
「そうですねえ。加納さんはクロさんの方?」
「はい、やっぱり固さは強さかと」
「間違いないですね。ただ、水瀬さんの玉も広いですよ」
久利は水瀬の玉将を上下左右に動かす。
パチリ
コトッ
ピシッ
カタン
水瀬とクロが中盤の手を指し進める。
互いに交換した駒を相手陣に打ち込んだり、自陣に打って固めたりする。
一進一退の攻防が続くものの、将棋ソフトの形勢判断でもほぼ互角のまま進んで行く。
「この辺りの変化は必然でしょうか?」
加納が直前の指し手に触れる。
「いや、そんなことはないと思います」
「例えば?」
久利が「そうですね」と言いつつ、少し手を戻す。
「ここでは銀打ちもあったと思います」
「はあ」
久利が大盤の駒をパタパタと動かす。
「こんな具合です」
「これも互角ですか?」
「…だと思います」
今度は加納が「もう少し前のこの局面ですが…」と大盤の駒に触れる。
「はい?」
「こんな手はありませんか?」
クロ陣に攻め込んでいた水瀬の竜をひとつ引いた。
「次はこんな手を狙って…」
「ああ!」
久利がうなずく。
「それも有力な攻め手だと思います」
その後の手順を追う。
「ここまで来ると相当厳しいですけど、でもクロさんに駒を渡し過ぎるかかあ」
「クロさんからの反撃が厳しいですか?」
久利が「ええ」と、駒音高く持ち駒の角を大盤に打ちつける。
「どうします?」
加納が「ええと」と悩みつつ、金を引いて受けた。
「うーん、その手だと、こうなるでしょうね」
久利がクロの豊富な持ち駒から手を進めて行くと、水瀬陣がどんどん崩れていく。
水瀬の玉将を守っていた金銀がはがされて、あっという間に受けるのが難しくなっていく。
「あー、だめですね」
加納がガックリと肩を落とした。
しかし「いえいえ」と久利が励ます。
「ここは金を引くよりも、歩を打って受ければ十分です」
「そうなんですか?」
久利がその後の手順を示す。
確かに先ほどよりはしっかりとクロからの受け止めている。
「まあ、一手間違えればってのは、よくあることですから」
パチリ
カタッ
ピシリ
コトリ
「お、そうこうしているうちに…」
久利と加納が大盤の駒を戻す。
局面は中盤から終盤に差し掛かっていた。
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