90 / 113
第5章 会長の思惑
第89話 カラスの将棋を会長が研究したら(その2)
しおりを挟む
「こんにちは」
この日壬生善元九段宅を訪れたのは、守口敏内九段と佐山健輝九段。
「この面子は久しぶりですね」
壬生が口を開くと守口と佐山が笑う。
「後は芝先生がいれば…」
守口の言葉に壬生が「実はお誘いしたんです」と続ける。
「えっ、そうなんですか?」
「ただ、『もう、さすがに役に立ちそうにないから』って」
「うーん、ちょっと残念です」
壬生善元九段はタイトル99期で永世七冠、守口敏内九段はタイトル12期で十八世名人、佐山健輝九段はタイトル13期で永世棋聖と、いずれも実績十分のベテラン棋士。
壬生、守口、佐山の3人に初代竜王となった芝昭夫九段を加えると、かつて一世を風靡した「芝研」のメンバーとなる。
今でこそ多くの棋士が大小様々な研究会に取り組んでいる。そうした研究会の先駆けとも言えるのが、芝昭夫九段が始めた「芝研」だ。
芝が他の3人よりも10歳くらい年長だったため研究会をリードする立場となったものの、むしろ研究会では壬ら若手の3人に教えを乞うことも少なくなかったとか。
そんな芝昭夫九段自身はタイトル獲得こそ竜王1期に留まっているが、その後に永世資格を取得した3人に目を付けたことでも、芝九段の慧眼が分かる。
3人は壬生宅の将棋部屋に入った。
そこには既に信濃祐樹六段がいた。
少し前から壬生の研究相手を務めている。
「こ、こんにちは、よろしくお願いします」
大先輩3人を前に信濃は緊張せざるを得ない。
「こちらこそよろしく」
「よろしくお願いします」
それでも守口と佐山は笑顔で挨拶する。
「今日は勉強させてもらいます」
そう信濃が言うと、守口と佐山も苦笑する。
「うーん、私がどこまで壬生さんの力になれるか…」
「いや、私もですよ」
そんなことを言いつつ、守口と佐山が鞄からノートパソコンを取り出す。
壬生が自宅の高性能パソコンを立ち上げると、信濃は将棋盤を部屋の中央に据えた。
「さて…」
壬生が口火を切る。
「何か気づいたことがあれば教えて欲しいんですが…」
「そうですね」
佐山がノートパソコンを操作しつつ、クロの棋譜を呼び出した。
「間違いなく強いんですが、七番勝負が始まってからも棋風と言うか作戦の幅と言うか、が広がっている気がします」
それを聞いた壬生も守口も「ええ」と同意する。
「水瀬戦の端歩突きは坂田先生の棋譜を並べた影響らしいですけど」
「あ、それ、私も聞きました」
壬生が七番勝負第5局の棋譜を呼び出す。
「後手番で最初に端歩、まあ、無い手では無いんですけどね」
信濃がパソコンを操作して、直近の公式戦の記録をピックアップする。
「ここ数年でも10局以上ありますし、端歩を突き合う形も珍しくないです」
3人が「うんうん」とうなずいた。
その後もさらに深く研究が進められていく。
この日壬生善元九段宅を訪れたのは、守口敏内九段と佐山健輝九段。
「この面子は久しぶりですね」
壬生が口を開くと守口と佐山が笑う。
「後は芝先生がいれば…」
守口の言葉に壬生が「実はお誘いしたんです」と続ける。
「えっ、そうなんですか?」
「ただ、『もう、さすがに役に立ちそうにないから』って」
「うーん、ちょっと残念です」
壬生善元九段はタイトル99期で永世七冠、守口敏内九段はタイトル12期で十八世名人、佐山健輝九段はタイトル13期で永世棋聖と、いずれも実績十分のベテラン棋士。
壬生、守口、佐山の3人に初代竜王となった芝昭夫九段を加えると、かつて一世を風靡した「芝研」のメンバーとなる。
今でこそ多くの棋士が大小様々な研究会に取り組んでいる。そうした研究会の先駆けとも言えるのが、芝昭夫九段が始めた「芝研」だ。
芝が他の3人よりも10歳くらい年長だったため研究会をリードする立場となったものの、むしろ研究会では壬ら若手の3人に教えを乞うことも少なくなかったとか。
そんな芝昭夫九段自身はタイトル獲得こそ竜王1期に留まっているが、その後に永世資格を取得した3人に目を付けたことでも、芝九段の慧眼が分かる。
3人は壬生宅の将棋部屋に入った。
そこには既に信濃祐樹六段がいた。
少し前から壬生の研究相手を務めている。
「こ、こんにちは、よろしくお願いします」
大先輩3人を前に信濃は緊張せざるを得ない。
「こちらこそよろしく」
「よろしくお願いします」
それでも守口と佐山は笑顔で挨拶する。
「今日は勉強させてもらいます」
そう信濃が言うと、守口と佐山も苦笑する。
「うーん、私がどこまで壬生さんの力になれるか…」
「いや、私もですよ」
そんなことを言いつつ、守口と佐山が鞄からノートパソコンを取り出す。
壬生が自宅の高性能パソコンを立ち上げると、信濃は将棋盤を部屋の中央に据えた。
「さて…」
壬生が口火を切る。
「何か気づいたことがあれば教えて欲しいんですが…」
「そうですね」
佐山がノートパソコンを操作しつつ、クロの棋譜を呼び出した。
「間違いなく強いんですが、七番勝負が始まってからも棋風と言うか作戦の幅と言うか、が広がっている気がします」
それを聞いた壬生も守口も「ええ」と同意する。
「水瀬戦の端歩突きは坂田先生の棋譜を並べた影響らしいですけど」
「あ、それ、私も聞きました」
壬生が七番勝負第5局の棋譜を呼び出す。
「後手番で最初に端歩、まあ、無い手では無いんですけどね」
信濃がパソコンを操作して、直近の公式戦の記録をピックアップする。
「ここ数年でも10局以上ありますし、端歩を突き合う形も珍しくないです」
3人が「うんうん」とうなずいた。
その後もさらに深く研究が進められていく。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる