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第5章 会長の思惑
第90話 カラスの将棋を会長が研究したら(その3)
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「結局のところ、後手番ってのがネックだね」
壬生善元九段がため息をついた。
「確かに…」
「そうですね」
集まった守口敏内九段と佐山健輝九段も同意する。
信濃祐樹《しなの ゆうき》六段がパソコンを操作した。
「棋譜をソフトにかけても、先手番のクロさんは隙らしい隙がありません」
守口が将棋盤の駒を並べ直す。
「強いて言えば、相居飛車で何とか対応できるかなあってくらいでしょうか」
佐山がその後に続いて、駒を動かして行く。
「その中では矢倉なんかが面白そうですね」
壬生も盤面を覗き込む。
金矢倉、銀矢倉、さらには矢倉と雁木の対抗形について指し手を調べていく。
「クロさんが居飛車で来るか、振り飛車で来るかくらいでも分かれば…」
佐山が愚痴っぽくもらすが、壬生が尋ねる。
「それで楽になります?」
佐山は首を振る。
「何とか互角ってところですね」
4人とも苦笑する。
ブブーン♪
その時、壬生のスマートフォンがメールを受信して振動する。
「あ、芝先生」
かつての芝研を集めた芝昭夫九段からのメールだった。
他の3人の目が壬生とスマートフォンに向く。
「うーん」
守口が「何てあるんです?」と聞いたが、文面を見た壬生が首をかしげる。
「えーっと、要するに『勝ちを目指さない』ってことかな」
壬生がスマートフォンの画面を3人に見せる。
「…らしいですけど、勝ちを目指さない将棋って」
壬生と守口と佐山がそろって首をひねる。
そこで信濃が「もしかして…」と口を開く。
「トコトン粘って持将棋を狙うとか…」
守口が「ああ…」とつぶやく。
「カラスなだけに、スタミナは人間には敵わないかもしれませんね」
七番勝負の第4局である佐藤巧叡王戦では、千日手の後に指し直しとなった。
プロの公式戦でも千日手や持将棋を何度も繰り返したことがある。そうなると、棋力とともに体力勝負の面が強くなる。
「将棋は体力、か」
これは辻井孝太七冠の師匠の師匠である田谷進九段がよく口にしていた言葉。
「トコトン粘って、クロの体力切れから判断が誤るのを待つ、か」
消極的な戦法に壬生が「いやあ」と腕組みする。
研究や読みの力で上回るのが正攻法だ。
それに比べれば邪道とは言えないまでも、王道とは程遠い。
「貪欲に勝ちを目指すのであれば、あえて粘りに粘るのも手かと思います」
信濃がそう言うと、守口と佐山も難しい表情をしながらうなずいた。
「それに直線的な勝ちを目指さないって意味では、クロさんの読みをかわすことができるかもしれません」
「そうか…」
その後も4人での研究が重ねられる。
夜遅くになったところで、かすかながらも明るい兆しが見えた。
守口、佐山、信濃の顔は疲労の色が濃く出ているのものの、笑みも浮んでいる。
「クロが持将棋をどこまで理解しているか」
「でも、これなら行けるかもしれません」
「もし実現したら面白いことになりそうです」
壬生も力強くうなずいた。
壬生善元九段がため息をついた。
「確かに…」
「そうですね」
集まった守口敏内九段と佐山健輝九段も同意する。
信濃祐樹《しなの ゆうき》六段がパソコンを操作した。
「棋譜をソフトにかけても、先手番のクロさんは隙らしい隙がありません」
守口が将棋盤の駒を並べ直す。
「強いて言えば、相居飛車で何とか対応できるかなあってくらいでしょうか」
佐山がその後に続いて、駒を動かして行く。
「その中では矢倉なんかが面白そうですね」
壬生も盤面を覗き込む。
金矢倉、銀矢倉、さらには矢倉と雁木の対抗形について指し手を調べていく。
「クロさんが居飛車で来るか、振り飛車で来るかくらいでも分かれば…」
佐山が愚痴っぽくもらすが、壬生が尋ねる。
「それで楽になります?」
佐山は首を振る。
「何とか互角ってところですね」
4人とも苦笑する。
ブブーン♪
その時、壬生のスマートフォンがメールを受信して振動する。
「あ、芝先生」
かつての芝研を集めた芝昭夫九段からのメールだった。
他の3人の目が壬生とスマートフォンに向く。
「うーん」
守口が「何てあるんです?」と聞いたが、文面を見た壬生が首をかしげる。
「えーっと、要するに『勝ちを目指さない』ってことかな」
壬生がスマートフォンの画面を3人に見せる。
「…らしいですけど、勝ちを目指さない将棋って」
壬生と守口と佐山がそろって首をひねる。
そこで信濃が「もしかして…」と口を開く。
「トコトン粘って持将棋を狙うとか…」
守口が「ああ…」とつぶやく。
「カラスなだけに、スタミナは人間には敵わないかもしれませんね」
七番勝負の第4局である佐藤巧叡王戦では、千日手の後に指し直しとなった。
プロの公式戦でも千日手や持将棋を何度も繰り返したことがある。そうなると、棋力とともに体力勝負の面が強くなる。
「将棋は体力、か」
これは辻井孝太七冠の師匠の師匠である田谷進九段がよく口にしていた言葉。
「トコトン粘って、クロの体力切れから判断が誤るのを待つ、か」
消極的な戦法に壬生が「いやあ」と腕組みする。
研究や読みの力で上回るのが正攻法だ。
それに比べれば邪道とは言えないまでも、王道とは程遠い。
「貪欲に勝ちを目指すのであれば、あえて粘りに粘るのも手かと思います」
信濃がそう言うと、守口と佐山も難しい表情をしながらうなずいた。
「それに直線的な勝ちを目指さないって意味では、クロさんの読みをかわすことができるかもしれません」
「そうか…」
その後も4人での研究が重ねられる。
夜遅くになったところで、かすかながらも明るい兆しが見えた。
守口、佐山、信濃の顔は疲労の色が濃く出ているのものの、笑みも浮んでいる。
「クロが持将棋をどこまで理解しているか」
「でも、これなら行けるかもしれません」
「もし実現したら面白いことになりそうです」
壬生も力強くうなずいた。
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