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第5章 会長の思惑
第93話 カラスが永世七冠と対局したら(その1)
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「壬生先生はこちらの席にどうぞー」
いくぶん緊張気味のHamabeTVのスタッフが座る席を案内する。
「クロさんと鈴香ちゃんはこちらです」
「はーい」
「クワッ」
もはや慣れたものとなっている鈴香はポンと椅子に座る。
クロも将棋盤の横に立つと、羽根のつくろいなどを始めた。
壬生がニッコリ笑って「よろしくね」と声をかける。
「はい、よろしくお願いしまーす」
「クワア」
鈴香とクロも挨拶を返した。
その後、壬生善元九段は慎重に将棋盤の位置やライトの当たり具合などを確認する。
「あ、ちょっと…」
「はい」
壬生はスタッフを手招きして、視界に入るライトの位置を変えてもらうよう頼む。
「はいっ、分かりましたっ!」
スタッフが飛ぶように走っていった。
「じゃあ、そろそろいいですかー?」
スタッフのひとりが大声で確認する。
「はーい」
「オッケー」
「どうぞー」
「よーし、ではスタート!」
第6局の読み上げを務める神奈川千佳女流二段が一礼した。
「ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負の第6局を始めます。6局目は角野クロさんが先手です。どちらも持ち時間や考慮時間はありませんが、1分ごとに経過時間を読み上げます。それでは対局を始めてください」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「クワッ」
2人と一羽が頭を下げて対局が始まった。
クロが駒をツンツンとくちばしで突っつく。
角の斜め前にある歩をクチバシでくわえると、ひとつ前に移動させた。
コトン
神奈川が差し手を読み上げる。
「先手、角野クロさん、7六歩」
後手となった壬生が小さくうなずくと、同じく角の斜め前にある歩をつまんだ。駒音高く盤面に歩を進める。
パチッ
「後手、壬生善元九段、3四歩」
カメラが解説室に切り替わった。
「それでは佐藤先生よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
第6局で解説を務める佐藤巧叡王と聞き手の町田麻里代女流三段が頭を下げた。
「佐藤先生、まずは第6局の見通しはいかがでしょうか?」
「はい、クロさん、壬生先生とも居飛車振り飛車のどちらも指しこなすので、戦法か見ものなのですが…」
そこまで言いかけたところで、クロの指し手が読み上げられる。
「先手、6六歩」
聞き手の町田が「これは…」とつぶやく。
合わせて佐藤も「振り飛車かな…」と応じた。
そこで壬生が端歩を突き、クロも端歩を突き合う。
「この辺りは牽制のようですが、どちらかが飛車を振りそうですね」
パシッ
カタン
パチン
コトッ
佐藤が解説する間にクロが飛車を4つ左に移動させ、壬生も角を上げた後に飛車を2筋に持ってきた。
「どちらか、ではなく、相振り飛車ですかぁ」
先手なら2筋、後手なら8筋にある飛車を反対側に移動させる戦法を振り飛車と言う。
先手か後手かのどちらかが振り飛車となり、もう一方が居飛車となる“対抗形”と呼ばれる形が多い。
これが先手後手ともに振り飛車を選択した場合、相振り飛車と呼ばれる形になる。
佐藤が少し眉をひそめた。
昨今では振り飛車党が少なくなった棋士-男性-の間では現れることが少なくなった戦法。
その一方で女流棋士の対戦では少なからぬ数が指されている。
「実は、私は先日の女流王位戦で指したばかりです」
町田が右手を軽く上げた。
「そうなんですね。じゃあ、今日は町田さんに解説してもらおうかな」
「いえいえ、そんな…」
佐藤の言葉に、町田が大げさに手を振った。
ピシッ
カタッ
パチン
コトン
その後は間合いを計りつつ王将を囲っていく。
「どうですか?町田先生」
「うーん、そうですねーって、止めてくださいよ」
解説室が盛り上がる一方で対局場は緊迫した雰囲気が濃くなっていった。
いくぶん緊張気味のHamabeTVのスタッフが座る席を案内する。
「クロさんと鈴香ちゃんはこちらです」
「はーい」
「クワッ」
もはや慣れたものとなっている鈴香はポンと椅子に座る。
クロも将棋盤の横に立つと、羽根のつくろいなどを始めた。
壬生がニッコリ笑って「よろしくね」と声をかける。
「はい、よろしくお願いしまーす」
「クワア」
鈴香とクロも挨拶を返した。
その後、壬生善元九段は慎重に将棋盤の位置やライトの当たり具合などを確認する。
「あ、ちょっと…」
「はい」
壬生はスタッフを手招きして、視界に入るライトの位置を変えてもらうよう頼む。
「はいっ、分かりましたっ!」
スタッフが飛ぶように走っていった。
「じゃあ、そろそろいいですかー?」
スタッフのひとりが大声で確認する。
「はーい」
「オッケー」
「どうぞー」
「よーし、ではスタート!」
第6局の読み上げを務める神奈川千佳女流二段が一礼した。
「ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負の第6局を始めます。6局目は角野クロさんが先手です。どちらも持ち時間や考慮時間はありませんが、1分ごとに経過時間を読み上げます。それでは対局を始めてください」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「クワッ」
2人と一羽が頭を下げて対局が始まった。
クロが駒をツンツンとくちばしで突っつく。
角の斜め前にある歩をクチバシでくわえると、ひとつ前に移動させた。
コトン
神奈川が差し手を読み上げる。
「先手、角野クロさん、7六歩」
後手となった壬生が小さくうなずくと、同じく角の斜め前にある歩をつまんだ。駒音高く盤面に歩を進める。
パチッ
「後手、壬生善元九段、3四歩」
カメラが解説室に切り替わった。
「それでは佐藤先生よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
第6局で解説を務める佐藤巧叡王と聞き手の町田麻里代女流三段が頭を下げた。
「佐藤先生、まずは第6局の見通しはいかがでしょうか?」
「はい、クロさん、壬生先生とも居飛車振り飛車のどちらも指しこなすので、戦法か見ものなのですが…」
そこまで言いかけたところで、クロの指し手が読み上げられる。
「先手、6六歩」
聞き手の町田が「これは…」とつぶやく。
合わせて佐藤も「振り飛車かな…」と応じた。
そこで壬生が端歩を突き、クロも端歩を突き合う。
「この辺りは牽制のようですが、どちらかが飛車を振りそうですね」
パシッ
カタン
パチン
コトッ
佐藤が解説する間にクロが飛車を4つ左に移動させ、壬生も角を上げた後に飛車を2筋に持ってきた。
「どちらか、ではなく、相振り飛車ですかぁ」
先手なら2筋、後手なら8筋にある飛車を反対側に移動させる戦法を振り飛車と言う。
先手か後手かのどちらかが振り飛車となり、もう一方が居飛車となる“対抗形”と呼ばれる形が多い。
これが先手後手ともに振り飛車を選択した場合、相振り飛車と呼ばれる形になる。
佐藤が少し眉をひそめた。
昨今では振り飛車党が少なくなった棋士-男性-の間では現れることが少なくなった戦法。
その一方で女流棋士の対戦では少なからぬ数が指されている。
「実は、私は先日の女流王位戦で指したばかりです」
町田が右手を軽く上げた。
「そうなんですね。じゃあ、今日は町田さんに解説してもらおうかな」
「いえいえ、そんな…」
佐藤の言葉に、町田が大げさに手を振った。
ピシッ
カタッ
パチン
コトン
その後は間合いを計りつつ王将を囲っていく。
「どうですか?町田先生」
「うーん、そうですねーって、止めてくださいよ」
解説室が盛り上がる一方で対局場は緊迫した雰囲気が濃くなっていった。
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