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第5章 会長の思惑
第87話 カラスが将棋ニュースを見たら(その3)
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「理事に誰を押したらいいだろう」
壬生善元九段が会長退任を発表して以降、棋士達の間ではこうした話題で盛り上がっていた。
日本将棋協会の役員は、主に常勤理事と非常勤理事によって構成されている。
その内の数人は外部の有識者を招いているものの、大半は棋士や女流棋士から選挙などにより選ばれてきた。
そして、その理事の中から日本将棋協会の会長が選ばれる形。
「やはりベテランから…」
「でも壬生会長は世代交代を語っていたぞ」
「と言って、20代や30代は考えにくいだろう」
「そろそろ女流棋士が会長になっても…」
「うーん、それは早急かなあ」
いろんな意見がとびかっている。
同じような日本古来の伝統である相撲界では、親方株と呼ばれる一種の権利を所有した力士でなければ、原則として相撲界に残ることはできない。
その親方株のやりとりには、千万円単位の大金がやり取りされているとの専らの噂。
さらに理事や理事長を選ぶ場面ともなれば、一門と呼ばれる親方同士のつながりなども加わって、ドロドロのやり取りが繰り返されてきた。
それに比べれば日本将棋協会の理事選挙は、バイカル湖や摩周湖くらい透き通っている。
……はず。
そうした中で、とある考えを抱いているA級棋士がいた。
「理事を目指してみようと思って」
高村天地八段は自分の考えをつぶやいた。
アマチュア将棋のタイトルを獲得したこともあるアマ強豪で、ネット動画ではパートナーを務める臼木真面目は持っていたカップを落としそうになった。
「い、いきなり何を…」
「…だめかな」
臼木は首を振る。
「だめもなにも、天地先生が決めたんなら、僕は応援するだけですよ」
「そっか」
高村の師匠である故麦長幸雄永世棋聖は、かつて日本将棋協会の会長を務めたこともある。
棋士としてもタイトルを多数獲得するなど活躍した麦長。日本将棋協会の会長としても、アマチュア強豪棋士のプロ入り実現、将棋ソフトとの対局、協会の財務体質の改善など、様々な改革に取り組んできた。
「…ってことは、ゆくゆくは協会の会長ですね。いよっ!未来の会長!」
「いや、そこまでは…」
「あっ、待てよ。そうか、壬生会長の次を狙ってるんですね」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
茶化す臼木に高村は本気で首を振った。
師匠である麦長の薫陶を受けて、若い頃から将棋の普及活動に力を入れてきた高村。
大学の非常勤講師を務めて将棋に関する講義を行ったり、テレビ番組にも積極的に出演したりしている。
臼木と組んでネット動画を発表しているのも、その一環。
将来的に会長になることがあるかもしれないが、今はそこまで考えていなかった。
「クロとの対局を後押ししたいと思って」
「ああ、なるほど」
高村の考えを聞いて臼木もうなずく。
「まあ、七番勝負が途中で終わることはないだろうけど、その先にも何らかのつなげた方が良いと思う」
「うーん」
臼木は難しい顔をみせた。
「でも結果がねえ」
「ああ」
先日の水瀬石也九段がクロに敗北したことで、協会側の5敗1分。
高村も臼木もクロの実力は認めているものの、ここまで一方的な結果になるとは予想していなかった。
「残った2戦、壬生先生と辻井先生に頑張って欲しいなあ」
「そうですね」
そこで臼木が茶化す。
「高村先生のリベンジはないんですか?」
「うっ!」
痛いところを突かれた高村は顔をしかめた。
「クロさんの棋譜でも並べましょうか?」
「そうだね」
2人は将棋盤やパソコンを持ち出してクロの研究に取り組んだ。
壬生善元九段が会長退任を発表して以降、棋士達の間ではこうした話題で盛り上がっていた。
日本将棋協会の役員は、主に常勤理事と非常勤理事によって構成されている。
その内の数人は外部の有識者を招いているものの、大半は棋士や女流棋士から選挙などにより選ばれてきた。
そして、その理事の中から日本将棋協会の会長が選ばれる形。
「やはりベテランから…」
「でも壬生会長は世代交代を語っていたぞ」
「と言って、20代や30代は考えにくいだろう」
「そろそろ女流棋士が会長になっても…」
「うーん、それは早急かなあ」
いろんな意見がとびかっている。
同じような日本古来の伝統である相撲界では、親方株と呼ばれる一種の権利を所有した力士でなければ、原則として相撲界に残ることはできない。
その親方株のやりとりには、千万円単位の大金がやり取りされているとの専らの噂。
さらに理事や理事長を選ぶ場面ともなれば、一門と呼ばれる親方同士のつながりなども加わって、ドロドロのやり取りが繰り返されてきた。
それに比べれば日本将棋協会の理事選挙は、バイカル湖や摩周湖くらい透き通っている。
……はず。
そうした中で、とある考えを抱いているA級棋士がいた。
「理事を目指してみようと思って」
高村天地八段は自分の考えをつぶやいた。
アマチュア将棋のタイトルを獲得したこともあるアマ強豪で、ネット動画ではパートナーを務める臼木真面目は持っていたカップを落としそうになった。
「い、いきなり何を…」
「…だめかな」
臼木は首を振る。
「だめもなにも、天地先生が決めたんなら、僕は応援するだけですよ」
「そっか」
高村の師匠である故麦長幸雄永世棋聖は、かつて日本将棋協会の会長を務めたこともある。
棋士としてもタイトルを多数獲得するなど活躍した麦長。日本将棋協会の会長としても、アマチュア強豪棋士のプロ入り実現、将棋ソフトとの対局、協会の財務体質の改善など、様々な改革に取り組んできた。
「…ってことは、ゆくゆくは協会の会長ですね。いよっ!未来の会長!」
「いや、そこまでは…」
「あっ、待てよ。そうか、壬生会長の次を狙ってるんですね」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
茶化す臼木に高村は本気で首を振った。
師匠である麦長の薫陶を受けて、若い頃から将棋の普及活動に力を入れてきた高村。
大学の非常勤講師を務めて将棋に関する講義を行ったり、テレビ番組にも積極的に出演したりしている。
臼木と組んでネット動画を発表しているのも、その一環。
将来的に会長になることがあるかもしれないが、今はそこまで考えていなかった。
「クロとの対局を後押ししたいと思って」
「ああ、なるほど」
高村の考えを聞いて臼木もうなずく。
「まあ、七番勝負が途中で終わることはないだろうけど、その先にも何らかのつなげた方が良いと思う」
「うーん」
臼木は難しい顔をみせた。
「でも結果がねえ」
「ああ」
先日の水瀬石也九段がクロに敗北したことで、協会側の5敗1分。
高村も臼木もクロの実力は認めているものの、ここまで一方的な結果になるとは予想していなかった。
「残った2戦、壬生先生と辻井先生に頑張って欲しいなあ」
「そうですね」
そこで臼木が茶化す。
「高村先生のリベンジはないんですか?」
「うっ!」
痛いところを突かれた高村は顔をしかめた。
「クロさんの棋譜でも並べましょうか?」
「そうだね」
2人は将棋盤やパソコンを持ち出してクロの研究に取り組んだ。
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