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第2章 協会の困惑
第22話 カラスの対局相手が発表されたら
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「ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負」
この厨二びょ…ゴホンゲホン、Hamabe TVの対局企画はマスコミ各社で報じられた。
唯一報道しない自由を発揮した放送局がHHKだ。
「この大バカ野郎!ネットのHamabe TVなんかに持って行かれやがって!」
塔京・鈍谷にあるHHKセンターの一室で怒鳴り声が響いた。
落ち目がいちじるしい地上波ながら、いまだにインターネットを下に見る姿勢がHHKらしかった。
そのHHKもクロを使った企画を検討していたものの、実施にいたるスピードでHamabe TVに完敗した。
「こうなったら『毎週日曜日に放送する将棋講座やHHK杯を止めるぞ』とか言って脅すか。それとも吉外田総理なんかの政治家から圧力をかけるか…」
「いやいやいや、どっちもまずいだろ。自分で自分の首を絞めるようなもんだろうが」
「うるせえ!」
「うるせえとは何だ!」
「何だとは何だ!」
「何だとは何だとは何だ…」
まるで反社や半グレを思わせるやり取りは、いつ終わるともしれなかった。
企画発表で将棋関連のインターネット掲示板は大きく盛り上がった。
特に選出された7人の棋士についての意見がたくさん寄せられる。
概ね同意する人や納得した人が多かったが、それでも独自の候補を推す声が目立つ。
「うーん、ベテランがもう1人欲しかったな」
「ハゲドウ、蔦元かサトタクを外して、森口、深裏、前怪鳥から誰か」
「女流2人でも良かったんじゃね。もちろん福岡と石川で」
「石川は編入試験があるからなあ」
「ところで『あっちむいてホイ』とか言ってたよな」
「いや、まさか…なあ」
「水瀬OUT、豊鳥IN」
「いや蔦本OUT、叩木INでしょ」
「ここはアマピエの独特な感性に賭けたい」
「浜島も悪くはないが、生きのイイ四段か五段がヨカタ」
「カトシン七段が対局中にカツラを外せば、クロをビビらせるのでは?」
などなど。
さらに盛り上がったのは、将棋関連のネット動画だ。
「皆さん、こんにちは、こんばんは、歩です。今日もよろしくお願いします」
将棋関連動画の中でも大人気のひとつ「元奨励会員アルクの将棋特集」でも、クロの対局企画が取り上げられた。
「いやあ、皆さん、見ましたか?」
画面が切り替わって7人の棋士の名前が並ぶ。
「すごい7人に決まりましたねー」
その後、7人の実績や直近の勝敗などを順に紹介していった。
いずれも強豪ばかりなので、生涯勝率やレーティングなども高い数字を示している。
「さて、この7人相手にクロさんが何勝できるかですが…」
クロの直近の実績が表示される。
「A級棋士の高村先生に圧巻の3連勝してるんですよねえ。しかも香落ちを含めて…」
しばらくの沈黙の後、「個人的な希望的観測を含めてクロさんの3勝4敗としておきます」と勝敗の見通しを語った。
その後に説明を加える。
「やっぱり大きいのは棋士側が対策を練ってくることですね」
企画中に公表された条件の1つを示す。
「クロさんと対戦する7人の棋士には『クロさんの棋譜や動画をまとめたものを渡す』とあります」
渡す棋譜は主に佐倉がまとめたもの。そこに橋田五段、愛媛女流四段、富士林五段、そして高村八段から提供された動画が加わる。動画には編集前の未公開部分も含まれていた。さらに佐倉が提供した動画には、クロが対局する動画に加えて、馬場と鈴香の対局やネットの対局中継を観戦するクロの動画も含まれている。
「こうした中から、クロさんの癖のようなものを発見する棋士がいるかもしれません」
それらを加味して、クロの負け越しになりそう判断した根拠を語った。
「いずれにしても注目の7番勝負です。Hamabe TVの番組を楽しみにしたいと思います。
最後に企画の成功を願って動画を締めくくった。
「『ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負』の対戦内容が発表されました」
独自の分析が好評な「たんたかたんチャンネル」でも取り上げられた。
「しかしすごい7人が出てきたな」
「若手からベテランまでバランスの取れた選出と言って良いでしょう」
“まんじゅう”と呼ばれる首だけキャラ、ゆっくりマリサとゆっくりレイムが掛け合いをしながら解説する。
「この7人のたんたかたんレーティングはこの通りです」
7人の名前の後に4桁の数字が表れる。
「相変わらず辻井八冠は圧倒的だな」
辻井八冠の後には2000を超える数字が表示されていた。
「もはや不動のトップ棋士です。将棋星人と呼ばれるのも納得のレーティングです」
「浜島三段の数字は低めだな」
「竜王戦ランキング6組と新人王戦の対局のみを下地にしているので、どうしても低めになってしまいます」
「すると、実際にはもっと上になるのか?」
「そうですね。もう200くらいは足したいところです」
画面が切り替わってクロの写真になる。
「で、クロのレーティングはどのくらいだ?」
「クロさんも対局数が少ないことと、駒落ちが多いので正確性には欠けるのですが、この数字となりました」
クロの写真の横に4桁の数字が出る。
「うーん、B級棋士レベルの数字だな」
「はい、こちらも200は上乗せしたいところです」
画面が切り替わる。
「まずは、そのままのレーティングで勝敗を予想してみましょう」
シミュレーションが始まると、クロの0勝から7勝までの数字が詰みあがって行く。
音楽が止まると、クロの4勝が一番大きな数字になった。
「クロの4勝3敗となる可能性が大きいみたいだな、次が3勝4敗か」
「7勝0敗は0勝7敗の可能性と共に極小です」
画面が切り替わる。
「もう一度、浜島三段とクロさんにレーティング200を上乗せして予想してみましょう」
再びシミュレーションが始まると、先ほどと同様にクロの0勝から7勝までの数字が詰みあがって行く。
音楽が止まると、クロの5勝が一番大きな数字になった。
「今度はクロの5勝2敗となる可能性が大きくなったな。で、6勝1敗と4勝3敗が同じくらいか」
「前とは大きく変わりました」
「クロが有利となったが、他の要素はどうなんだ?」
「考えられるとすれば、棋士のクロさん対策、手番がどうなるか、クロさんの伸びシロ、くらいでしょうか」
「番勝負が進んだら、また予想したいものだな」
こちらも企画の成功を願って動画を締めくくった。
この厨二びょ…ゴホンゲホン、Hamabe TVの対局企画はマスコミ各社で報じられた。
唯一報道しない自由を発揮した放送局がHHKだ。
「この大バカ野郎!ネットのHamabe TVなんかに持って行かれやがって!」
塔京・鈍谷にあるHHKセンターの一室で怒鳴り声が響いた。
落ち目がいちじるしい地上波ながら、いまだにインターネットを下に見る姿勢がHHKらしかった。
そのHHKもクロを使った企画を検討していたものの、実施にいたるスピードでHamabe TVに完敗した。
「こうなったら『毎週日曜日に放送する将棋講座やHHK杯を止めるぞ』とか言って脅すか。それとも吉外田総理なんかの政治家から圧力をかけるか…」
「いやいやいや、どっちもまずいだろ。自分で自分の首を絞めるようなもんだろうが」
「うるせえ!」
「うるせえとは何だ!」
「何だとは何だ!」
「何だとは何だとは何だ…」
まるで反社や半グレを思わせるやり取りは、いつ終わるともしれなかった。
企画発表で将棋関連のインターネット掲示板は大きく盛り上がった。
特に選出された7人の棋士についての意見がたくさん寄せられる。
概ね同意する人や納得した人が多かったが、それでも独自の候補を推す声が目立つ。
「うーん、ベテランがもう1人欲しかったな」
「ハゲドウ、蔦元かサトタクを外して、森口、深裏、前怪鳥から誰か」
「女流2人でも良かったんじゃね。もちろん福岡と石川で」
「石川は編入試験があるからなあ」
「ところで『あっちむいてホイ』とか言ってたよな」
「いや、まさか…なあ」
「水瀬OUT、豊鳥IN」
「いや蔦本OUT、叩木INでしょ」
「ここはアマピエの独特な感性に賭けたい」
「浜島も悪くはないが、生きのイイ四段か五段がヨカタ」
「カトシン七段が対局中にカツラを外せば、クロをビビらせるのでは?」
などなど。
さらに盛り上がったのは、将棋関連のネット動画だ。
「皆さん、こんにちは、こんばんは、歩です。今日もよろしくお願いします」
将棋関連動画の中でも大人気のひとつ「元奨励会員アルクの将棋特集」でも、クロの対局企画が取り上げられた。
「いやあ、皆さん、見ましたか?」
画面が切り替わって7人の棋士の名前が並ぶ。
「すごい7人に決まりましたねー」
その後、7人の実績や直近の勝敗などを順に紹介していった。
いずれも強豪ばかりなので、生涯勝率やレーティングなども高い数字を示している。
「さて、この7人相手にクロさんが何勝できるかですが…」
クロの直近の実績が表示される。
「A級棋士の高村先生に圧巻の3連勝してるんですよねえ。しかも香落ちを含めて…」
しばらくの沈黙の後、「個人的な希望的観測を含めてクロさんの3勝4敗としておきます」と勝敗の見通しを語った。
その後に説明を加える。
「やっぱり大きいのは棋士側が対策を練ってくることですね」
企画中に公表された条件の1つを示す。
「クロさんと対戦する7人の棋士には『クロさんの棋譜や動画をまとめたものを渡す』とあります」
渡す棋譜は主に佐倉がまとめたもの。そこに橋田五段、愛媛女流四段、富士林五段、そして高村八段から提供された動画が加わる。動画には編集前の未公開部分も含まれていた。さらに佐倉が提供した動画には、クロが対局する動画に加えて、馬場と鈴香の対局やネットの対局中継を観戦するクロの動画も含まれている。
「こうした中から、クロさんの癖のようなものを発見する棋士がいるかもしれません」
それらを加味して、クロの負け越しになりそう判断した根拠を語った。
「いずれにしても注目の7番勝負です。Hamabe TVの番組を楽しみにしたいと思います。
最後に企画の成功を願って動画を締めくくった。
「『ぬばたまの闇より飛来せり漆黒の翼 クロ七番勝負』の対戦内容が発表されました」
独自の分析が好評な「たんたかたんチャンネル」でも取り上げられた。
「しかしすごい7人が出てきたな」
「若手からベテランまでバランスの取れた選出と言って良いでしょう」
“まんじゅう”と呼ばれる首だけキャラ、ゆっくりマリサとゆっくりレイムが掛け合いをしながら解説する。
「この7人のたんたかたんレーティングはこの通りです」
7人の名前の後に4桁の数字が表れる。
「相変わらず辻井八冠は圧倒的だな」
辻井八冠の後には2000を超える数字が表示されていた。
「もはや不動のトップ棋士です。将棋星人と呼ばれるのも納得のレーティングです」
「浜島三段の数字は低めだな」
「竜王戦ランキング6組と新人王戦の対局のみを下地にしているので、どうしても低めになってしまいます」
「すると、実際にはもっと上になるのか?」
「そうですね。もう200くらいは足したいところです」
画面が切り替わってクロの写真になる。
「で、クロのレーティングはどのくらいだ?」
「クロさんも対局数が少ないことと、駒落ちが多いので正確性には欠けるのですが、この数字となりました」
クロの写真の横に4桁の数字が出る。
「うーん、B級棋士レベルの数字だな」
「はい、こちらも200は上乗せしたいところです」
画面が切り替わる。
「まずは、そのままのレーティングで勝敗を予想してみましょう」
シミュレーションが始まると、クロの0勝から7勝までの数字が詰みあがって行く。
音楽が止まると、クロの4勝が一番大きな数字になった。
「クロの4勝3敗となる可能性が大きいみたいだな、次が3勝4敗か」
「7勝0敗は0勝7敗の可能性と共に極小です」
画面が切り替わる。
「もう一度、浜島三段とクロさんにレーティング200を上乗せして予想してみましょう」
再びシミュレーションが始まると、先ほどと同様にクロの0勝から7勝までの数字が詰みあがって行く。
音楽が止まると、クロの5勝が一番大きな数字になった。
「今度はクロの5勝2敗となる可能性が大きくなったな。で、6勝1敗と4勝3敗が同じくらいか」
「前とは大きく変わりました」
「クロが有利となったが、他の要素はどうなんだ?」
「考えられるとすれば、棋士のクロさん対策、手番がどうなるか、クロさんの伸びシロ、くらいでしょうか」
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