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第2章 協会の困惑
第26話 カラスの指し手を分析したら
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馬場から送られた映像を見た佐倉は、クロが唯一指摘した手をソフトで研究する。
「ここで銀を引くか…」
モニターには別に送られた棋譜-鈴香が指したまま-を表示している。
鈴香が指した手は、アマ強豪である佐倉も指したくなる手だ。棋風にもよるがプロ棋士でも指す人が多いだろう。
しかしクロは銀を引く手を勧めてきた。
「悪くはないけど、ちょっと弱気に見えるんだよなあ」
クロの手をソフトに読ませると、直後には鈴香側がちょっとマイナスに振れる。
しかし5分程読ませ続けると、形勢判断は互角に戻る。
さらに数分読ませると、またマイナスに振れる。
その後も数分おきに鈴香側のややマイナスと互角を行ったり来たりした。
「ちょい悪か互角か、ってところか」
そう判断して佐倉はパソコンから離れた。
終盤で詰むや詰まざるやとなった局面は別として、序盤、中盤の形勢判断はひとつの目安に過ぎない。
アマチュアはもちろん、プロでも棋士によって棋風もあれば、好みの形や駒もある。
ガンガン攻めるのが好きな人、しっかり守るのが好きな人。
短い手数でスッパリ勝ち切るのが好みの人、長手数や千日手、持将棋などの指し直しを嫌がらない人。
王将をガッチリ固めたい人、懐を広くして玉を軽快に動かしたい人。
飛車角の大駒を華麗にさばきたい人、金銀桂の小駒の連携で盤上を圧迫して行きたい人。
クロの銀引きをソフトは「ちょい悪か互角」と判断しているものの、佐倉の見たところ慎重な差し回しを好む棋士であれば指す可能性がなくもないと思った。
コーヒーと菓子パンを手にした佐倉がパソコンの前に戻ってくる。モニターを見て「えっ!」と声をあげた。
席を外していたのは10分か15分くらいか。読み込ませて放置していた形勢判断の数値が鈴香-つまりクロの側にちょっとだけ有利になっていたからだ。
「え、なんで?」
有力な指し手を示す部分には、クロが示した銀引きに続いて、再度の銀引きが表示されている。
「ここでまた銀を引くー?」
佐倉が差し手を追いかけると、引いた銀を玉に近づけて固める手を表示していた。
「はっきりと手損だけど、それでも自陣を固める方が良いってことか」
形勢判断の数値は、鈴香側にやや有利なままで動かなくなっている。
「これを指せる人がいるかなあ。でもプロなら…」
佐倉がまとめたクロの画像と鈴香の棋譜は、橋田を始めとした親しい棋士やアマチュア強豪、そして七番勝負を控えた日本将棋協会へと送られた。もちろん日本将棋協会を介して、クロと対戦する7人を始めとした棋士や関係者へも伝わる。
「そんな手、あるの?」
「銀を引く?」
「うーん」
「いやあ、ないでしょう」
「感覚が破壊された」
「クロを弟子に…もとい、クロに弟子入りするかな」
「手損だよね」
「鳥界、いやカラス界の受け師か」
「鈴香たん、カワイイ」
「へえ、やるじゃん」
「えーっ!」
「…これは?」
「いや、思い浮かばないなあ」
「ふーん」
「まあ、あるね」
多くの棋士が頭を悩ませた一方、少なからぬ棋士は納得した。
また、数人の棋士は鈴香のスクリーンショットを保存した。
「ここで銀を引くか…」
モニターには別に送られた棋譜-鈴香が指したまま-を表示している。
鈴香が指した手は、アマ強豪である佐倉も指したくなる手だ。棋風にもよるがプロ棋士でも指す人が多いだろう。
しかしクロは銀を引く手を勧めてきた。
「悪くはないけど、ちょっと弱気に見えるんだよなあ」
クロの手をソフトに読ませると、直後には鈴香側がちょっとマイナスに振れる。
しかし5分程読ませ続けると、形勢判断は互角に戻る。
さらに数分読ませると、またマイナスに振れる。
その後も数分おきに鈴香側のややマイナスと互角を行ったり来たりした。
「ちょい悪か互角か、ってところか」
そう判断して佐倉はパソコンから離れた。
終盤で詰むや詰まざるやとなった局面は別として、序盤、中盤の形勢判断はひとつの目安に過ぎない。
アマチュアはもちろん、プロでも棋士によって棋風もあれば、好みの形や駒もある。
ガンガン攻めるのが好きな人、しっかり守るのが好きな人。
短い手数でスッパリ勝ち切るのが好みの人、長手数や千日手、持将棋などの指し直しを嫌がらない人。
王将をガッチリ固めたい人、懐を広くして玉を軽快に動かしたい人。
飛車角の大駒を華麗にさばきたい人、金銀桂の小駒の連携で盤上を圧迫して行きたい人。
クロの銀引きをソフトは「ちょい悪か互角」と判断しているものの、佐倉の見たところ慎重な差し回しを好む棋士であれば指す可能性がなくもないと思った。
コーヒーと菓子パンを手にした佐倉がパソコンの前に戻ってくる。モニターを見て「えっ!」と声をあげた。
席を外していたのは10分か15分くらいか。読み込ませて放置していた形勢判断の数値が鈴香-つまりクロの側にちょっとだけ有利になっていたからだ。
「え、なんで?」
有力な指し手を示す部分には、クロが示した銀引きに続いて、再度の銀引きが表示されている。
「ここでまた銀を引くー?」
佐倉が差し手を追いかけると、引いた銀を玉に近づけて固める手を表示していた。
「はっきりと手損だけど、それでも自陣を固める方が良いってことか」
形勢判断の数値は、鈴香側にやや有利なままで動かなくなっている。
「これを指せる人がいるかなあ。でもプロなら…」
佐倉がまとめたクロの画像と鈴香の棋譜は、橋田を始めとした親しい棋士やアマチュア強豪、そして七番勝負を控えた日本将棋協会へと送られた。もちろん日本将棋協会を介して、クロと対戦する7人を始めとした棋士や関係者へも伝わる。
「そんな手、あるの?」
「銀を引く?」
「うーん」
「いやあ、ないでしょう」
「感覚が破壊された」
「クロを弟子に…もとい、クロに弟子入りするかな」
「手損だよね」
「鳥界、いやカラス界の受け師か」
「鈴香たん、カワイイ」
「へえ、やるじゃん」
「えーっ!」
「…これは?」
「いや、思い浮かばないなあ」
「ふーん」
「まあ、あるね」
多くの棋士が頭を悩ませた一方、少なからぬ棋士は納得した。
また、数人の棋士は鈴香のスクリーンショットを保存した。
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