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第2章 協会の困惑
第27話 カラスが対戦相手を研究?したら
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鈴香と馬場が盤を挟んで座っている。
盤の横ではクロが2人を見守っている。
パチン
ピシリ
パチリ
パシッ
一手ずつ交互に指し手を進める。ただし普通に将棋を指しているのではない。
日本将棋協会から送られた棋譜を見ながらの再現、要するに棋譜並べだ。
将棋の上達を目指して棋譜を並べるのは、昔から行われていた有力な勉強方法のひとつ。しかしひと口に棋譜並べと言っても、やり方はいろいろある。
ザッと指し手通りに並べる方法もあれば、新聞や専門誌に記載された解説を読みつつ「自分ならどう指すか?」のように考えて一手一手慎重に進めることもある。さらに深く研究する人であれば、対局者が消費した考慮時間から対局者の心理状態や研究度合いなどを推測することも。また、棋士やアマチュア強豪であれば棋譜を眺めるだけ、つまり実際に盤上に並べないこともあるが、それも「頭の中での」棋譜並べだろう。
並べる棋譜も新しいものばかりではない。
何十年も前の昭和や大正、明治、さらには100年以上前となる江戸時代に指された棋譜を並べる棋士もいる。と言うのも、かつては古書などから探すよりなかった古い棋譜が、最近ではインターネット上でまとめて公開されているからだ。動画サイトでは古い棋譜を解説付きで再現した動画もあり、将棋ファンを中心に一定の視聴者数を集めていた。そうした意味では、研究をしたい人にとっては勉強しやすい環境が整っていると言える。
そうした棋譜並べと、今の馬場と鈴香がしている棋譜並べとはちょっと違う。
2人が並べているのは、七番勝負でクロが最初に対戦する浜島和人奨励会三段が竜王戦ランキング6組で戦った棋譜のひとつ。七番勝負にクロが備える-それが可能かどうかは別として-意味で、浜島三段が出場した新人王戦などの棋譜とともに日本将棋協会から送られたものだ。それを鈴香のアイデアで、馬場がお面-佐倉を通じて手に入れた浜島三段の顔写真-を被っていた。
パチッ
カタン
パチン
ピシッ
浜島三段の快勝譜。
お面を被った馬場が最後の手を指すと、鈴香が「負けました」と頭を下げた。
「クロ、どう?」
鈴香の問いかけにクロが「クワッ」と鳴く。
「…ダメかなあ」
鈴香には、クロが何か感じたようには見られなかった。
「これ、まだやるのか?」
お面をかぶったままの馬場のぼやきに、鈴香がプッと頬を膨らます。
「何にもしないより良いでしょ」
「それは、そうなんだが…鈴香は浜島三段をどう思う?」
「強いよ、断然」
鈴香は真剣な目で盤上を見つめる。終盤の入り口まで局面を戻す。
「この手なんて、ぜーんぜん思いつかないもん」
「そうか、クロは?」
馬場はクロに尋ねるものの、クロは「クワッ」と鳴いただけで、盤の横から動こうとしない。
鈴香が別の棋譜を見る。
「次はこれにしよう!」
馬場も棋譜を覗き込む。
「浜島三段が負けた棋譜か…」
馬場と鈴香が駒を並べ直す。
「「よろしくお願いします」」
2人が頭を下げて、新たな棋譜並べが始まった。
パチッ
ピシリ
ピタン
パシッ
馬場と鈴香が一手一手進めていく。
2人の苦労がどこまで分かっているのか、クロは盤面を静かに見つめている。
コトン
ピシッ
パチッ
ピシッ
「負けました」
今度は浜島の面を被った馬場が頭を下げる。
鈴香も「ありがとうございました」と一礼した。
「どう?」
鈴香がクロの方を見るが、クロは「クワア」と鳴くだけだ。
「ここら辺が難しかったと思うんだけど…」
手早く鈴香が局面を中盤に戻すが、クロは反応しない。
「ここは?」
鈴香がクロに尋ねるものの、クロは鳴きもせずに頭を傾げるだけだ。
「じゃあ、こんな手はどう?」
歩を前に出す手に代わって銀を進める手を指して、クロに尋ねる。
しかしクロは反対側に頭を傾げるだけだった。
「クロが反応する条件だけでも分かれば良いんだけどなあ」
お面を被ったまま馬場が嘆く。
「うーん、とりあえず全部並べてみよ!私も勉強になるし」
「そうだな」
2人と一羽の棋譜並べが続けられた。
盤の横ではクロが2人を見守っている。
パチン
ピシリ
パチリ
パシッ
一手ずつ交互に指し手を進める。ただし普通に将棋を指しているのではない。
日本将棋協会から送られた棋譜を見ながらの再現、要するに棋譜並べだ。
将棋の上達を目指して棋譜を並べるのは、昔から行われていた有力な勉強方法のひとつ。しかしひと口に棋譜並べと言っても、やり方はいろいろある。
ザッと指し手通りに並べる方法もあれば、新聞や専門誌に記載された解説を読みつつ「自分ならどう指すか?」のように考えて一手一手慎重に進めることもある。さらに深く研究する人であれば、対局者が消費した考慮時間から対局者の心理状態や研究度合いなどを推測することも。また、棋士やアマチュア強豪であれば棋譜を眺めるだけ、つまり実際に盤上に並べないこともあるが、それも「頭の中での」棋譜並べだろう。
並べる棋譜も新しいものばかりではない。
何十年も前の昭和や大正、明治、さらには100年以上前となる江戸時代に指された棋譜を並べる棋士もいる。と言うのも、かつては古書などから探すよりなかった古い棋譜が、最近ではインターネット上でまとめて公開されているからだ。動画サイトでは古い棋譜を解説付きで再現した動画もあり、将棋ファンを中心に一定の視聴者数を集めていた。そうした意味では、研究をしたい人にとっては勉強しやすい環境が整っていると言える。
そうした棋譜並べと、今の馬場と鈴香がしている棋譜並べとはちょっと違う。
2人が並べているのは、七番勝負でクロが最初に対戦する浜島和人奨励会三段が竜王戦ランキング6組で戦った棋譜のひとつ。七番勝負にクロが備える-それが可能かどうかは別として-意味で、浜島三段が出場した新人王戦などの棋譜とともに日本将棋協会から送られたものだ。それを鈴香のアイデアで、馬場がお面-佐倉を通じて手に入れた浜島三段の顔写真-を被っていた。
パチッ
カタン
パチン
ピシッ
浜島三段の快勝譜。
お面を被った馬場が最後の手を指すと、鈴香が「負けました」と頭を下げた。
「クロ、どう?」
鈴香の問いかけにクロが「クワッ」と鳴く。
「…ダメかなあ」
鈴香には、クロが何か感じたようには見られなかった。
「これ、まだやるのか?」
お面をかぶったままの馬場のぼやきに、鈴香がプッと頬を膨らます。
「何にもしないより良いでしょ」
「それは、そうなんだが…鈴香は浜島三段をどう思う?」
「強いよ、断然」
鈴香は真剣な目で盤上を見つめる。終盤の入り口まで局面を戻す。
「この手なんて、ぜーんぜん思いつかないもん」
「そうか、クロは?」
馬場はクロに尋ねるものの、クロは「クワッ」と鳴いただけで、盤の横から動こうとしない。
鈴香が別の棋譜を見る。
「次はこれにしよう!」
馬場も棋譜を覗き込む。
「浜島三段が負けた棋譜か…」
馬場と鈴香が駒を並べ直す。
「「よろしくお願いします」」
2人が頭を下げて、新たな棋譜並べが始まった。
パチッ
ピシリ
ピタン
パシッ
馬場と鈴香が一手一手進めていく。
2人の苦労がどこまで分かっているのか、クロは盤面を静かに見つめている。
コトン
ピシッ
パチッ
ピシッ
「負けました」
今度は浜島の面を被った馬場が頭を下げる。
鈴香も「ありがとうございました」と一礼した。
「どう?」
鈴香がクロの方を見るが、クロは「クワア」と鳴くだけだ。
「ここら辺が難しかったと思うんだけど…」
手早く鈴香が局面を中盤に戻すが、クロは反応しない。
「ここは?」
鈴香がクロに尋ねるものの、クロは鳴きもせずに頭を傾げるだけだ。
「じゃあ、こんな手はどう?」
歩を前に出す手に代わって銀を進める手を指して、クロに尋ねる。
しかしクロは反対側に頭を傾げるだけだった。
「クロが反応する条件だけでも分かれば良いんだけどなあ」
お面を被ったまま馬場が嘆く。
「うーん、とりあえず全部並べてみよ!私も勉強になるし」
「そうだな」
2人と一羽の棋譜並べが続けられた。
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