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第3章 七番勝負の開始
第33話 カラスと対局するのを約束したら
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月に2回開催される研修会が終わり、鈴香と歩美が満面の笑みで将棋会館を出てくる。
「よ・ん・れ・ん・し・ょー(4連勝)♪」と鈴香。
「4連勝ー♪」と歩美。
ともすれば付き添いで来ている母親達が置いてきがちになるくらいに、2人の足どりは軽やか。
「何だかねー、クロの将棋の勢いが私にも乗り移ったみたい」
「実は…私もそうなんだ」
鈴香の言葉に、歩美も笑顔で応える。
「強い人…って言うかカラスだけど、将棋って、そばで見てるだけでも勉強になるんだよね」
「そうそう」
2人の後方では、互いの母親が「いつもお世話になって…」「こちらこそ仲良くしていただいて…」なんて話をしている。
「本山先生との2枚落ちも完勝だった!」
「ああ、あれかー。終盤だけ見ることができたけど、手数もそんなになかったよね」
研修会の対局では会員となった子供同士で対戦するとともに、棋士や女流棋士、奨励会員らと対局することもある。もちろんハンデ無しでは厳しいので、研修会の上位であれば大駒落ちくらいで、下位になると2枚落ちや4枚落ちのハンデを付けた形となる。その勝敗は会員である子供同士の対局と同じ様に昇降級に関係してくるとともに、一般的な駒落ちの指導対局以上に上手となった棋士の側が厳しい手で迫ってくる。
今日の対局では、鈴香の4局目が本山六段との2枚落ちだった。
「うーん……」
ちょっと空を見上げた鈴香は4局目の将棋を思い出す。
「………っと、86手」
思い出して手数を答えたらしい鈴香に対して、歩美が少しびっくりしたような顔をした。
「ふーん、駒落ちに強くなったのも、クロのおかげ?」
「多分、そうだと思う。最近、クロとは2枚落ちで指してることが多いし」
「そっか…」
歩美は「ねえ」と鈴香に話しかける。
「またクロと指せないかな?」
「じゃあ、じいちゃん家にくる?」
「良いの?」
「ちょっと待っててね」
鈴香が母親のところに走って行く。
歩美もその後を追った。
「もう今日は遅いし…」
「来週の土曜か日曜なら…」
「聞いてみるから…」
この後すぐの訪問では時間が遅くなりがちなため、2人の母親が同意することはなかったものの、「来週の土日なら大丈夫かも」と鈴香の母から父、つまり馬場に電話して尋ねることにした。
「じゃあ、お姉ちゃんも良い?この前、クロと指したいって言ってたし」
そう歩美が言うと、「聞いてみるね」と鈴香の母親がスマートフォンを取り出した。
「あ、お父さん、うん…うん…実は、鈴香と歩美ちゃんがね…なの。大丈夫?そう…ありがと」
スマートフォンで話しつつ、鈴香の母が右手でOKサインを作る。
鈴香と歩美の顔が明るくなった。
「菱子ちゃんとは、いつぶりかなあ」
「うーん、最近は朝草将棋クラブじゃなくて、研究会に行ってるからねえ」
歩美の姉である菱子は中学1年生。
歩美とともに棋士である岸村和良九段の弟子であり、現在は奨励会の3級に所属している。
今の歩美や鈴香のように、菱子も子供の頃はよく朝草将棋クラブに通っていたが、奨励会に入会してからは岸村九段を始めとした棋士や奨励会員同士の研究会に参加することが増えた。そのため、朝草将棋クラブに顔を出すことは少なくなっていた。
「でも、クロと指したいって言ってたのはホントだから、来週は一緒に行くね!」
「うん!」
その後も鈴香と歩美の将棋話が続いた。
「よ・ん・れ・ん・し・ょー(4連勝)♪」と鈴香。
「4連勝ー♪」と歩美。
ともすれば付き添いで来ている母親達が置いてきがちになるくらいに、2人の足どりは軽やか。
「何だかねー、クロの将棋の勢いが私にも乗り移ったみたい」
「実は…私もそうなんだ」
鈴香の言葉に、歩美も笑顔で応える。
「強い人…って言うかカラスだけど、将棋って、そばで見てるだけでも勉強になるんだよね」
「そうそう」
2人の後方では、互いの母親が「いつもお世話になって…」「こちらこそ仲良くしていただいて…」なんて話をしている。
「本山先生との2枚落ちも完勝だった!」
「ああ、あれかー。終盤だけ見ることができたけど、手数もそんなになかったよね」
研修会の対局では会員となった子供同士で対戦するとともに、棋士や女流棋士、奨励会員らと対局することもある。もちろんハンデ無しでは厳しいので、研修会の上位であれば大駒落ちくらいで、下位になると2枚落ちや4枚落ちのハンデを付けた形となる。その勝敗は会員である子供同士の対局と同じ様に昇降級に関係してくるとともに、一般的な駒落ちの指導対局以上に上手となった棋士の側が厳しい手で迫ってくる。
今日の対局では、鈴香の4局目が本山六段との2枚落ちだった。
「うーん……」
ちょっと空を見上げた鈴香は4局目の将棋を思い出す。
「………っと、86手」
思い出して手数を答えたらしい鈴香に対して、歩美が少しびっくりしたような顔をした。
「ふーん、駒落ちに強くなったのも、クロのおかげ?」
「多分、そうだと思う。最近、クロとは2枚落ちで指してることが多いし」
「そっか…」
歩美は「ねえ」と鈴香に話しかける。
「またクロと指せないかな?」
「じゃあ、じいちゃん家にくる?」
「良いの?」
「ちょっと待っててね」
鈴香が母親のところに走って行く。
歩美もその後を追った。
「もう今日は遅いし…」
「来週の土曜か日曜なら…」
「聞いてみるから…」
この後すぐの訪問では時間が遅くなりがちなため、2人の母親が同意することはなかったものの、「来週の土日なら大丈夫かも」と鈴香の母から父、つまり馬場に電話して尋ねることにした。
「じゃあ、お姉ちゃんも良い?この前、クロと指したいって言ってたし」
そう歩美が言うと、「聞いてみるね」と鈴香の母親がスマートフォンを取り出した。
「あ、お父さん、うん…うん…実は、鈴香と歩美ちゃんがね…なの。大丈夫?そう…ありがと」
スマートフォンで話しつつ、鈴香の母が右手でOKサインを作る。
鈴香と歩美の顔が明るくなった。
「菱子ちゃんとは、いつぶりかなあ」
「うーん、最近は朝草将棋クラブじゃなくて、研究会に行ってるからねえ」
歩美の姉である菱子は中学1年生。
歩美とともに棋士である岸村和良九段の弟子であり、現在は奨励会の3級に所属している。
今の歩美や鈴香のように、菱子も子供の頃はよく朝草将棋クラブに通っていたが、奨励会に入会してからは岸村九段を始めとした棋士や奨励会員同士の研究会に参加することが増えた。そのため、朝草将棋クラブに顔を出すことは少なくなっていた。
「でも、クロと指したいって言ってたのはホントだから、来週は一緒に行くね!」
「うん!」
その後も鈴香と歩美の将棋話が続いた。
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