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第3章 七番勝負の開始
第45話 カラスが七番勝負の第3局に向かったら
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その日のHamabe TVの控室は、いつにも増して賑やかだった。
クロと鈴香、祖父の馬場、そして佐倉はいつもの顔。
そこに歩美と姉の菱子にペットのホッペ、さらに朝草将棋クラブの席主も顔を出していた。
それだけならいつもと大きく違わないものの、多くの女流棋士が鈴香らの控室を訪れていたためだ。
「はい、ピース!」
「次はこっちね」
「ちょっと引っ張らないでよ!」
彼女達のお目当てはクロだ。
押し合いへし合いしながらも、順にツーショットなり、クロを挟んだスリーショットなりで写真に収まって行く。
スマホのシャッターを押すのは馬場や佐倉が担い、合間を狙って席主が女流棋士にサインを求めていた。
鈴香、歩美、そして菱子も女流棋士と握手をしたり写真を撮ったりしている。
「これ、クロさんに」
「私も持ってきたのよ」
「ぜひ食べてねー」
彼女達はそう言いつつ、カニカマやチーズを置いて行く。
やがて控室に静けさが戻る。
控室に残った女流棋士は、今日の対戦相手である福岡葉菜《ふくおか はな》女流五冠のみとなった。
「今日はよろしくお願いします」
深く頭を下げる福岡に合わせて、鈴香達も頭を下げる。
クロも「クワア」と鳴いて首を回した。
「あの…」
鈴香が声をかける。
「体調は大丈夫ですか?」
福岡は大きくなったお腹をさする。
「不戦敗も何度かあったからねー」
男性ばかりの棋士の世界では縁の無い妊娠。そして来るであろう出産。
女流棋士、それもタイトルホルダーが妊娠した状況に、日本将棋協会や主催側の対応は鈍かった。
結局、タイトル戦ですら不戦敗を避けられなくなってしまった。
「心配させてしまってごめんなさい。でも今日は大丈夫みたい」
「そうなんですね」
「もう生まれてもおかしくないくらい予定日は間近だけど、将棋が強い相手ならぜひ指してみたくって」
福岡が発した棋士ならではの言葉に、鈴香も「はい」とうなずく。
そんな鈴香の傍に寄ってきたクロが福岡を見て「クワア」と鳴いた。
「クロ、お腹に赤ちゃんが居るんだよ」
「そうなの、だから今日は2人かかりで頑張るからね」
クロは鈴香と福岡を交互に見ると、首筋に足の爪を数回ひっかける。
白い羽根がフワリと抜けた。床に落ちる寸前にクロがクチバシで咥えて福岡の前に持って行く。
福岡が白い羽根を手のひらで受けると、クロが「カア」と鳴いた。
「これは?」
「お守り。だから、クロが『あげるよ』って」
「そうなの?」
「私も持ってるんです」
鈴香が財布から包みを取り出す。
先日見せた白い羽根が入っていた。
「私も持ってまーす!」
歩美が透明なフィルムでパウチさせた羽根を見せる。
「あー、それ良いねー」
「でしょ、でしょ」
「この羽根を持って研修会で昇級したんですよねー」
「まあ、そうね」
2人の言葉を聞いた福岡は「そっか、ありがとね」と羽根をハンカチで挟んで丁寧にしまった。
クロと鈴香、祖父の馬場、そして佐倉はいつもの顔。
そこに歩美と姉の菱子にペットのホッペ、さらに朝草将棋クラブの席主も顔を出していた。
それだけならいつもと大きく違わないものの、多くの女流棋士が鈴香らの控室を訪れていたためだ。
「はい、ピース!」
「次はこっちね」
「ちょっと引っ張らないでよ!」
彼女達のお目当てはクロだ。
押し合いへし合いしながらも、順にツーショットなり、クロを挟んだスリーショットなりで写真に収まって行く。
スマホのシャッターを押すのは馬場や佐倉が担い、合間を狙って席主が女流棋士にサインを求めていた。
鈴香、歩美、そして菱子も女流棋士と握手をしたり写真を撮ったりしている。
「これ、クロさんに」
「私も持ってきたのよ」
「ぜひ食べてねー」
彼女達はそう言いつつ、カニカマやチーズを置いて行く。
やがて控室に静けさが戻る。
控室に残った女流棋士は、今日の対戦相手である福岡葉菜《ふくおか はな》女流五冠のみとなった。
「今日はよろしくお願いします」
深く頭を下げる福岡に合わせて、鈴香達も頭を下げる。
クロも「クワア」と鳴いて首を回した。
「あの…」
鈴香が声をかける。
「体調は大丈夫ですか?」
福岡は大きくなったお腹をさする。
「不戦敗も何度かあったからねー」
男性ばかりの棋士の世界では縁の無い妊娠。そして来るであろう出産。
女流棋士、それもタイトルホルダーが妊娠した状況に、日本将棋協会や主催側の対応は鈍かった。
結局、タイトル戦ですら不戦敗を避けられなくなってしまった。
「心配させてしまってごめんなさい。でも今日は大丈夫みたい」
「そうなんですね」
「もう生まれてもおかしくないくらい予定日は間近だけど、将棋が強い相手ならぜひ指してみたくって」
福岡が発した棋士ならではの言葉に、鈴香も「はい」とうなずく。
そんな鈴香の傍に寄ってきたクロが福岡を見て「クワア」と鳴いた。
「クロ、お腹に赤ちゃんが居るんだよ」
「そうなの、だから今日は2人かかりで頑張るからね」
クロは鈴香と福岡を交互に見ると、首筋に足の爪を数回ひっかける。
白い羽根がフワリと抜けた。床に落ちる寸前にクロがクチバシで咥えて福岡の前に持って行く。
福岡が白い羽根を手のひらで受けると、クロが「カア」と鳴いた。
「これは?」
「お守り。だから、クロが『あげるよ』って」
「そうなの?」
「私も持ってるんです」
鈴香が財布から包みを取り出す。
先日見せた白い羽根が入っていた。
「私も持ってまーす!」
歩美が透明なフィルムでパウチさせた羽根を見せる。
「あー、それ良いねー」
「でしょ、でしょ」
「この羽根を持って研修会で昇級したんですよねー」
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2人の言葉を聞いた福岡は「そっか、ありがとね」と羽根をハンカチで挟んで丁寧にしまった。
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