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3章⭐︎新しい家族から学ぶ帝王学編⭐︎

世界樹の中

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-side リアム-



 長老の家は世界樹の中にあった。
 神秘的なものすごく大きな木、イメージとしては、御神木が大きくなったような感じと言ったらわかりやすいだろうか?
 期待を胸に膨らませ、中に入ってみる。
 おそらく、世界樹の素材をそのままに、空いた空間を加工して、居着いているのだろう。自然に包まれているような空間が広がっていて、居心地がとても良さそうだ。
 自然由来の香りと、少しひんやりした空気感が、心を落ち着かせる。
 そんな、不思議な場所だった。


「フォッフォッフォ。よくぞいらっしいました。リアム殿。」
「はじめまして。長老。」


 こんな口調なのだが、目の前にいるのはただの黒髪黒目の美青年。
 エルフは年を取っても見た目が変わらないから、違和感がすごいな。雰囲気は、ちゃんと温厚なおじいちゃんである。


「この度は、うちの市場にある製品をたくさんお買いいただき感謝するのう。
 最近は、ポーションの在庫過剰で、捨てるかどうか迷っていたのだ。」
「それなんだがな。爺さん。なんで、ポーションの在庫がこんなに余っているんだ?
 人間の町には、上級ポーションが全然出回っていないんだ。需要が無いわけではないだろう?」
「ああ。それはの。人間に売る分は元々決まっていて、それは変化がないのじゃ。
 問題は、人間の町に売る分以上に作れるようになってしまったからなのだ。」
「生産革命が起きてしまったということですか?」
「おう。そうじゃ。リアムと言ったか。お主賢いのう。うちの里に欲しいぐらいじゃ。」
「あはは……。」
「うちのエドも見習ってくれると嬉しいのじゃが。はあ……。」
「えっ……!もしかして、エドさんのおじいさん……とか?」
「ほほう!お主、本当に賢いな。うちのエドと交換……。」
「おい、おじいさん。そこまでにしてくれ。」
「む?なんじゃ?エド。ここにきていたのか。お前には、門番を任せていたはずだろう。」
「こいつらを案内していたんだよ。それより、じーさん。リアムを可愛がるのはいいけど、本筋からズレてるぞ。」
「おお……!そうじゃった。して、本日はどのようなご用件で?」
「あの……無理な事は承知でのお願いなのですが、世界樹の上からうちの従魔のフェンリルの弟であるヨルムンガルドを見つけたいのです。」
「ふむ……なるほど。」
「出来ませんか?」
「能力的にはできる。ワシも昔はよくあそこにいたものだ……。だが、残念ながら、許可は出来ぬ。」
「おい……、おじい……!」
「……やはり、そうですか。」
「へ?」
「なんだ?驚かぬのか。ふぉっふぉっふぉ。やはり、うちのエドとは違うのう。ボケっとしてないで、お前もリアムさんを見習ってしっかりせい!」


 --バシィ!!と、長老がエドを叩く。
 爺さん強し。


「いでえ!!」
「はあ。全く、お前は……。それより、リアムさん、なぜ、驚かぬのじゃ?」
「ああ……、ダメ元で来てるからですね。」
「ほっほっ。そうか、そうか。一応、世界樹に入る許可が出来ぬ理由を説明しておくがのう。特別な訓練が必要なのと、世の中知らぬ方が良いこともあるからだ。」
「へー?」
「そうじゃな……。世界樹の頂点は確かに、全てを見渡せる。それは、実際に行ったワシが保証しよう。だがな、もし、本当に、全てのものを見渡せてしまったら、まだ幼い子供に、見せるには、残酷すぎるものが、目に入る可能性もあるのだ。」
「まあ、確かに……。」


 それは、情報過多になってしまうという、疑問に思っていた事だけれども。


「ふぉっふぉっふぉ。やはり、賢い子よのう。そう、だから、あそこに登ったところで、まともな精神状態で帰って来ることは、普通は無理なのじゃ。そこで、見たい物だけを見れるようにするという訓練を受ける必要がある。」
「あーー。なるほど。それで、具体的には、どういう訓練なんですか?」
「自然の中で行う瞑想じゃ。」
「瞑想……。」
「長い年月をかけて、瞑想の訓練をする事で、余計な考えや思考を手放せるようになる。つまり、一瞬全てを見たくらいでは、潰れない精神を作ると言う事じゃ。」
「なるほど……確かに、それは、俺たちが今行うのは厳しいですね。」
「うむ。そうじゃな。エルフの中でも、高いレベルで瞑想をできる人物は限られている。
 ……と言うわけで、残念ながら、お主らが世界樹の上に登るのは無理だのう。」
「そうですか。」
「まあ、こればっかりは仕方ないわな。俺らもエルフが自然の中で行う瞑想の方法なんて知らないし。まだ、ヨルムンガルドを見つける方法が無いわけでは無いから、次あたろうぜ。」


 レオンが、優しめの口調で俺を諭す。
 世界樹の上……ちょっと興味があったから残念だけど仕方がないか。


「ふむ。しかし……ヨルムンガルド様を探す方法が無いわけでは無いのかも知れぬ。」
「本当ですか?」
「うむ。つまりは、全てを見通さなくても、ヨルムンガルド様を見つける事ができればいいのであろう?
 必ず見つかると言う保証は無いが、この世界樹を使えば、行えるかも知れぬ。」
「……!教えてください!」




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