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9 通じ合う想い
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「ルナっ!!!」
サイラスの事に想いを巡らせていたからか、聞きたかったその声が聞こえた気がする。
「夢……?」
目の前には恋心を自覚して、会いたいと思ったサイラスがなぜかいた。いつもの飄々とした様子とは違い、髪は乱れ、額には汗が浮かんでいる。昼間会った時のカッチリとした制服とは違い、戦闘用の服に、色付きのゴーグルをしている。
戦闘用の格好のサイラスもかっこいい。ぼーっと見惚れていると、もどかしい様子でゴーグルをはずし、ルナの様子を見ようとぐっとサイラスの顔が近づく。
「ルナ、ルナ、大丈夫? あいつになんかされた? もう、アイツ殺してこようか。百回くらい殺したほうがいいね。もう、ルナは王都に連れて行こう。そうしよう」
やっぱり夢なのかな? いつものおっとりとした丁寧な話し方と違うし。いや、それでも素敵なことには変わりないけど。
戦闘用の服に、泥や魔獣のものであろう返り血が散っている。髪も乱れて、ルナを心配して、わたわたして、らしくもなく早口になるサイラスを見て、ルナの中に愛おしい気持ちが溢れた。その気持ちのままに、そっとサイラスを抱きしめる。
「えっ、ルナどうしたの? うれしい、うれしいけど、汗かいてるし、汚れてるし、臭いし……ルナが汚れちゃうから……」
どうしてだろう、汗の匂いがしても、血の匂いがしても、汚れていてもサイラスだったら、ちっとも嫌じゃない。汗の匂いに混じって、サイラスのお日様みたいな匂いがして、ほっとする。
「……私も、……私も汚れてるの。……ダレンにキスされそうになって、気持ち悪くて、吐くの止まらなくて。たくさん吐いたの。いっぱい口ゆすいだけど。……汚いよね?」
不安になって、下からサイラスを伏し目がちに見上げる。
「うっ、かわいい……。もうあの蛆虫は、村中引きずりまわそうね。あいつの家のヒツジにくくりつけて、村を十周くらい引きまわして、あそこをもいで、十回くらい殺そうね。あとルナは女神で天使で妖精だから、何があっても穢れることはないから心配しないで。全然汚くなんてないよ」
ルナの背中を優しくさすりながら、早口が止まらないサイラスにルナはおかしくなって、ふふっと笑みがこぼれる。
「サイラス。私、ダレンにキスされそうになって、嫌で、嫌でたまらなくて……その時に気づいたの」
サイラスの腕の中で、居住まいを正して、サイラスをまっすぐに見つめる。
「私、サイラスが好き。キスするならサイラスがいい。サイラス以外嫌だ」
サイラスは切れ長の目をまん丸にして固まった。驚いているけど、きっと嫌われてはないと思う。
「ね、サイラスお願い。私の事、好きじゃなくてもいいから、キスしてほしいの。はじめてのキスはサイラスがいいの。それ以上は望まないから。今日みたいに、強引にダレンにキスされるとか嫌なの」
「……え、夢かな? ……幻覚かな? ルナが僕のこと好きって言って、キスしてっておねだりしてるけど、これ現実?」
突如、サイラスは自分の頬をグリグリつねると、両頬をバンバンたたいた。
「わかってるの。妹のように思ってるのは。それでも一回だけでもいいから。お願い……」
固まってしまっているサイラスに、涙目ですがる。
「ぐぅ……かわいい……破壊力……」
サイラスは一瞬、天をあおぐと、真剣な表情に切り替わる。
「ルナ、ルナの方から告白してくれて、ありがとう。僕もルナが好きだよ。キス以上望まないなんて言わないで。僕を全部ほしいって言って」
ルナは、キスしてと言ったもののこういったことは初心者だ。サイラスの綺麗な顔が近づくのを真っ正面から見たまま、唇が重なり、そっと離れていく。
サイラスの唇はやわらかくて、少しかさついていた。ルナを腕に抱いたまま、ルナの白い頬をサイラスの手がなでている。サイラスの綺麗なオッドアイはいつもあたたかくて優しい色をしていたけど、そこに甘さが含まれた気がした。
「マークには幼女趣味だって言われるし、師匠にはグサグサ釘刺されるし。ルナの幼馴染があんなだから、男の欲みたいなのは、見せないほうがいいのかなって思ってたんだけど……」
「確かに苦手だった。でも、サイラスならいいの。サイラスには触れたくなるし、キスもしたいし……ダメかな?」
「ダメじゃないダメじゃない。うれしい。うれしいけど、ルナの成人まで我慢できる自信がない。がんばる。うん、がんばって僕の理性に仕事させるよ」
せっかく二人の想いが通じ合ったけど、帰りが遅くなるとまた面倒なことになりそうなので、サイラスに送ってもらいつつ、会話を重ねる。
ほとんど、ダレンにキスを迫られた衝撃と嫌悪からの勢いだったので、今更、恥ずかしくなる。でも、結果として、サイラスに想いが通じたのがうれしくて笑みがこぼれる。
「あのね、サイラスの気持ちはうれしかったけど、サイラスを殺人者にも誘拐犯にもしたくないから、成人までこの村でやりすごして、堂々とこの村を出て行きたいの。その時まで気持ちが変わらなかったら、王都に行ったら恋人にしてくれる?」
その瞬間に、サイラスに抱きしめられる。サイラスの香りとあたたかさにルナはうっとりする。サイラスになら、何度だって抱きしめられたい。
「ルナ、この気持ちは例え空から槍が降ってきても、魔獣が降ってきても変わらないよ。本当は、ダレンも村人も全滅させて、村も跡形なく燃やし尽くして、ルナを攫って行きたいけど、我慢するね。あ、あと今は認識阻害の魔術を僕とルナにかけてるから人に見られる心配はないから。それじゃ、名残惜しいけど、行くね。ルナ、愛してる。またね」
ルナの家の前に着くと、ルナの額に優しく口づけて、現れた時のように、一瞬でサイラスは消えてしまった。
サイラスの事に想いを巡らせていたからか、聞きたかったその声が聞こえた気がする。
「夢……?」
目の前には恋心を自覚して、会いたいと思ったサイラスがなぜかいた。いつもの飄々とした様子とは違い、髪は乱れ、額には汗が浮かんでいる。昼間会った時のカッチリとした制服とは違い、戦闘用の服に、色付きのゴーグルをしている。
戦闘用の格好のサイラスもかっこいい。ぼーっと見惚れていると、もどかしい様子でゴーグルをはずし、ルナの様子を見ようとぐっとサイラスの顔が近づく。
「ルナ、ルナ、大丈夫? あいつになんかされた? もう、アイツ殺してこようか。百回くらい殺したほうがいいね。もう、ルナは王都に連れて行こう。そうしよう」
やっぱり夢なのかな? いつものおっとりとした丁寧な話し方と違うし。いや、それでも素敵なことには変わりないけど。
戦闘用の服に、泥や魔獣のものであろう返り血が散っている。髪も乱れて、ルナを心配して、わたわたして、らしくもなく早口になるサイラスを見て、ルナの中に愛おしい気持ちが溢れた。その気持ちのままに、そっとサイラスを抱きしめる。
「えっ、ルナどうしたの? うれしい、うれしいけど、汗かいてるし、汚れてるし、臭いし……ルナが汚れちゃうから……」
どうしてだろう、汗の匂いがしても、血の匂いがしても、汚れていてもサイラスだったら、ちっとも嫌じゃない。汗の匂いに混じって、サイラスのお日様みたいな匂いがして、ほっとする。
「……私も、……私も汚れてるの。……ダレンにキスされそうになって、気持ち悪くて、吐くの止まらなくて。たくさん吐いたの。いっぱい口ゆすいだけど。……汚いよね?」
不安になって、下からサイラスを伏し目がちに見上げる。
「うっ、かわいい……。もうあの蛆虫は、村中引きずりまわそうね。あいつの家のヒツジにくくりつけて、村を十周くらい引きまわして、あそこをもいで、十回くらい殺そうね。あとルナは女神で天使で妖精だから、何があっても穢れることはないから心配しないで。全然汚くなんてないよ」
ルナの背中を優しくさすりながら、早口が止まらないサイラスにルナはおかしくなって、ふふっと笑みがこぼれる。
「サイラス。私、ダレンにキスされそうになって、嫌で、嫌でたまらなくて……その時に気づいたの」
サイラスの腕の中で、居住まいを正して、サイラスをまっすぐに見つめる。
「私、サイラスが好き。キスするならサイラスがいい。サイラス以外嫌だ」
サイラスは切れ長の目をまん丸にして固まった。驚いているけど、きっと嫌われてはないと思う。
「ね、サイラスお願い。私の事、好きじゃなくてもいいから、キスしてほしいの。はじめてのキスはサイラスがいいの。それ以上は望まないから。今日みたいに、強引にダレンにキスされるとか嫌なの」
「……え、夢かな? ……幻覚かな? ルナが僕のこと好きって言って、キスしてっておねだりしてるけど、これ現実?」
突如、サイラスは自分の頬をグリグリつねると、両頬をバンバンたたいた。
「わかってるの。妹のように思ってるのは。それでも一回だけでもいいから。お願い……」
固まってしまっているサイラスに、涙目ですがる。
「ぐぅ……かわいい……破壊力……」
サイラスは一瞬、天をあおぐと、真剣な表情に切り替わる。
「ルナ、ルナの方から告白してくれて、ありがとう。僕もルナが好きだよ。キス以上望まないなんて言わないで。僕を全部ほしいって言って」
ルナは、キスしてと言ったもののこういったことは初心者だ。サイラスの綺麗な顔が近づくのを真っ正面から見たまま、唇が重なり、そっと離れていく。
サイラスの唇はやわらかくて、少しかさついていた。ルナを腕に抱いたまま、ルナの白い頬をサイラスの手がなでている。サイラスの綺麗なオッドアイはいつもあたたかくて優しい色をしていたけど、そこに甘さが含まれた気がした。
「マークには幼女趣味だって言われるし、師匠にはグサグサ釘刺されるし。ルナの幼馴染があんなだから、男の欲みたいなのは、見せないほうがいいのかなって思ってたんだけど……」
「確かに苦手だった。でも、サイラスならいいの。サイラスには触れたくなるし、キスもしたいし……ダメかな?」
「ダメじゃないダメじゃない。うれしい。うれしいけど、ルナの成人まで我慢できる自信がない。がんばる。うん、がんばって僕の理性に仕事させるよ」
せっかく二人の想いが通じ合ったけど、帰りが遅くなるとまた面倒なことになりそうなので、サイラスに送ってもらいつつ、会話を重ねる。
ほとんど、ダレンにキスを迫られた衝撃と嫌悪からの勢いだったので、今更、恥ずかしくなる。でも、結果として、サイラスに想いが通じたのがうれしくて笑みがこぼれる。
「あのね、サイラスの気持ちはうれしかったけど、サイラスを殺人者にも誘拐犯にもしたくないから、成人までこの村でやりすごして、堂々とこの村を出て行きたいの。その時まで気持ちが変わらなかったら、王都に行ったら恋人にしてくれる?」
その瞬間に、サイラスに抱きしめられる。サイラスの香りとあたたかさにルナはうっとりする。サイラスになら、何度だって抱きしめられたい。
「ルナ、この気持ちは例え空から槍が降ってきても、魔獣が降ってきても変わらないよ。本当は、ダレンも村人も全滅させて、村も跡形なく燃やし尽くして、ルナを攫って行きたいけど、我慢するね。あ、あと今は認識阻害の魔術を僕とルナにかけてるから人に見られる心配はないから。それじゃ、名残惜しいけど、行くね。ルナ、愛してる。またね」
ルナの家の前に着くと、ルナの額に優しく口づけて、現れた時のように、一瞬でサイラスは消えてしまった。
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