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第一部.婚約破棄と新たな婚約
2.新たな婚約
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会場はざわめき誰もが困惑する。
今日の成人式には多くの貴族の令息も参加しているし、恥をさらす行為だったが。
この騒ぎをどうするかだったが…
「婚約破棄をなさるといいましたわね」
「ええ」
「その意味を理解しておっしゃるのね」
俺の側に現れたお母様。
何処か笑みを浮かべているように見えた。
「私は神の前で誓います。マルス様と愛し合っております。故に偽りの愛を誓うことできません。結婚は愛し合う者同士がすること…愛なき結婚など神への冒涜です」
「カルメン!」
本当に馬鹿だな。
こんなに声高らかに妾や側妃の存在を否定するなんて。
それに貴族の大半が政略結婚だと言うことを忘れている。
「そうですか、ではもう一度確認する。マルス殿はカルメン殿と婚約されるとのことでよろしいかな」
「はい!」
「おい、マルス…何を勝手な!」
ここで放心していたお父様が我に帰るも手遅れだった。
「ヴィオレッタ様、よろしいですかな?例の話を進めて」
「ええ、よろしくお願いいたします」
ランスロット様とお母様が何やら目で会話をしていた。
「双方の同意もあった所で皆さんにも聞いていただきたいことがございます」
ランスロット様は改まって会場にいる貴族や侍女に侍従にまで告げる。
「エリオル・ラスカル殿を、我が娘レイラの婚約者とし…そして私の後継者として迎えることを宣言します」
「なっ…何だって!」
「嘘だろ!」
「廃嫡寸前の長男がベルクハイツ家の婿養子だって?ありえないだろ!」
一体何がどうなっているのだろうか?
意味が解らない。
「何を馬鹿なことを!」
「そうです。お戯れを…」
「戯れではない。私はエリオル殿を我が侯爵家に迎えたいと思っていた…しかし彼には嫡男である故諦めたのだ」
「ならば!」
どうしてと訴えるエドナだったが、代わりに代弁したのはお母様だった。
「私も息子の婚約が決まっていたのでお断りしようと思ったのですが、カルメン嬢とマルスが思い合っていると知りましたので悩んでいたのですが、テレシア様がお心遣いをくださいまして」
「ええ、当初はレイラをマルス殿の婚約者にと考えておりましたのよ?ですが、愛するお二人を引き離すのはお可哀想ですし…それならば、幼馴染でもあるエリオル様と婚約を結ぶ方がいいと思いましたの」
「幼馴染…?」
「ええ、5歳の頃から小姓として行儀見習いに来ていただいてましたの。ラスカル伯爵にはちゃんと許可はいただいておりましたわよ?」
そう言いながらお父様を見ると思いっきり目を逸らしている。
「私はきちんと手紙をお送りし、夜会でもお伝えしましたわ。ご子息をお預かりしていると」
「何度か王宮内でご子息には世話になっていると伝えたのですが」
テレシア様に続きウィルフレッド様も同様に伝える。
この二人は揃いも揃って仕組んだのだとすぐに気づいた俺はお父様に同情した。
嘘は言っていない。
確かにマルスは騎士見習いであるが特別扱いを受け、王宮に入ることが許され第二王子殿下の側に仕えていた。
普通に考えれば俺ではなくマルスのことを言っていても可笑しくないのだが。
「いえ、てっきりマルスの事かと」
「確かに弟の遊び相手になってくれているそうだな…だがエリオルは俺の側仕えとして仕え、現在では補佐から毒味役まで買って出てくれている…そういえばエリオルを俺達兄弟の毒味役にと進めてくれたのは貴方だったな」
「あっ…それは」
まんまと嵌められたな。
それにつけ加え当時は、王子殿下の影武者に毒味役がいなかったことからお祖母様は俺を毒味役にすることで徹底的に立場を解らせるようにした。
俺とマルスは王族に仕えているが、嫡男であるマルスを影武者や毒味役にするわけにも行かないが、毒味役は大事な役目でもある。
ある意味では王子殿下の命を守る役目で通常は平民か下級貴族が多いのだが、お祖母様は王族との絆を強めるべく俺を差し出した。
まぁ、出来損ないの俺でも王族の役に立てるのだから感謝しろと言われたことがあったな。
「嘘でしょ」
「自分の孫を毒味役に進めた?信じられない」
「だが、ヘレネ様は長男のエリオル様に対してあまりにも厳しかったよな」
「確かに、夜会や大事なパーティーには必ずマルス様を参加させて差別していましたもの」
周りはお祖母様を軽蔑の眼差しで見ていた。
今までは上手く隠していたようだが、知っている人は知っているけど。
今まで公の場では咎めることはできなかった。
「本当に感謝していますのよ。貴女のお孫様は本当に優秀で、夫もエリオル様を是非養子に迎えたいと思っていましたが、嫡男故難しいと断念しましたが…なんの心配もありませんわ」
「そっ…それは」
お祖母様は言葉を放つことができない状態だった。
既に後ろで真っ白になっているシリガリー伯爵夫妻は放心状態だった。
「本当になんて喜ばしいのでしょう?これで私は肩の荷が降りましたわ」
「お母様…」
「エリオル、これより貴方はレイラ様の婚約者となります。今まで以上にレイラ様をお守りし、良き夫となるように努めるのですよ」
俺は未だに頭が着いて行かない。
何がどうなって俺が侯爵家の婿養子になるのだろうか。
意味がさっぱり解らなかったのだが、騒ぎはここで終わることはなかった。
今日の成人式には多くの貴族の令息も参加しているし、恥をさらす行為だったが。
この騒ぎをどうするかだったが…
「婚約破棄をなさるといいましたわね」
「ええ」
「その意味を理解しておっしゃるのね」
俺の側に現れたお母様。
何処か笑みを浮かべているように見えた。
「私は神の前で誓います。マルス様と愛し合っております。故に偽りの愛を誓うことできません。結婚は愛し合う者同士がすること…愛なき結婚など神への冒涜です」
「カルメン!」
本当に馬鹿だな。
こんなに声高らかに妾や側妃の存在を否定するなんて。
それに貴族の大半が政略結婚だと言うことを忘れている。
「そうですか、ではもう一度確認する。マルス殿はカルメン殿と婚約されるとのことでよろしいかな」
「はい!」
「おい、マルス…何を勝手な!」
ここで放心していたお父様が我に帰るも手遅れだった。
「ヴィオレッタ様、よろしいですかな?例の話を進めて」
「ええ、よろしくお願いいたします」
ランスロット様とお母様が何やら目で会話をしていた。
「双方の同意もあった所で皆さんにも聞いていただきたいことがございます」
ランスロット様は改まって会場にいる貴族や侍女に侍従にまで告げる。
「エリオル・ラスカル殿を、我が娘レイラの婚約者とし…そして私の後継者として迎えることを宣言します」
「なっ…何だって!」
「嘘だろ!」
「廃嫡寸前の長男がベルクハイツ家の婿養子だって?ありえないだろ!」
一体何がどうなっているのだろうか?
意味が解らない。
「何を馬鹿なことを!」
「そうです。お戯れを…」
「戯れではない。私はエリオル殿を我が侯爵家に迎えたいと思っていた…しかし彼には嫡男である故諦めたのだ」
「ならば!」
どうしてと訴えるエドナだったが、代わりに代弁したのはお母様だった。
「私も息子の婚約が決まっていたのでお断りしようと思ったのですが、カルメン嬢とマルスが思い合っていると知りましたので悩んでいたのですが、テレシア様がお心遣いをくださいまして」
「ええ、当初はレイラをマルス殿の婚約者にと考えておりましたのよ?ですが、愛するお二人を引き離すのはお可哀想ですし…それならば、幼馴染でもあるエリオル様と婚約を結ぶ方がいいと思いましたの」
「幼馴染…?」
「ええ、5歳の頃から小姓として行儀見習いに来ていただいてましたの。ラスカル伯爵にはちゃんと許可はいただいておりましたわよ?」
そう言いながらお父様を見ると思いっきり目を逸らしている。
「私はきちんと手紙をお送りし、夜会でもお伝えしましたわ。ご子息をお預かりしていると」
「何度か王宮内でご子息には世話になっていると伝えたのですが」
テレシア様に続きウィルフレッド様も同様に伝える。
この二人は揃いも揃って仕組んだのだとすぐに気づいた俺はお父様に同情した。
嘘は言っていない。
確かにマルスは騎士見習いであるが特別扱いを受け、王宮に入ることが許され第二王子殿下の側に仕えていた。
普通に考えれば俺ではなくマルスのことを言っていても可笑しくないのだが。
「いえ、てっきりマルスの事かと」
「確かに弟の遊び相手になってくれているそうだな…だがエリオルは俺の側仕えとして仕え、現在では補佐から毒味役まで買って出てくれている…そういえばエリオルを俺達兄弟の毒味役にと進めてくれたのは貴方だったな」
「あっ…それは」
まんまと嵌められたな。
それにつけ加え当時は、王子殿下の影武者に毒味役がいなかったことからお祖母様は俺を毒味役にすることで徹底的に立場を解らせるようにした。
俺とマルスは王族に仕えているが、嫡男であるマルスを影武者や毒味役にするわけにも行かないが、毒味役は大事な役目でもある。
ある意味では王子殿下の命を守る役目で通常は平民か下級貴族が多いのだが、お祖母様は王族との絆を強めるべく俺を差し出した。
まぁ、出来損ないの俺でも王族の役に立てるのだから感謝しろと言われたことがあったな。
「嘘でしょ」
「自分の孫を毒味役に進めた?信じられない」
「だが、ヘレネ様は長男のエリオル様に対してあまりにも厳しかったよな」
「確かに、夜会や大事なパーティーには必ずマルス様を参加させて差別していましたもの」
周りはお祖母様を軽蔑の眼差しで見ていた。
今までは上手く隠していたようだが、知っている人は知っているけど。
今まで公の場では咎めることはできなかった。
「本当に感謝していますのよ。貴女のお孫様は本当に優秀で、夫もエリオル様を是非養子に迎えたいと思っていましたが、嫡男故難しいと断念しましたが…なんの心配もありませんわ」
「そっ…それは」
お祖母様は言葉を放つことができない状態だった。
既に後ろで真っ白になっているシリガリー伯爵夫妻は放心状態だった。
「本当になんて喜ばしいのでしょう?これで私は肩の荷が降りましたわ」
「お母様…」
「エリオル、これより貴方はレイラ様の婚約者となります。今まで以上にレイラ様をお守りし、良き夫となるように努めるのですよ」
俺は未だに頭が着いて行かない。
何がどうなって俺が侯爵家の婿養子になるのだろうか。
意味がさっぱり解らなかったのだが、騒ぎはここで終わることはなかった。
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