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第一部.婚約破棄と新たな婚約

11.解雇

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成人式が終ったと同時にこれまで仕えて来た使用人のほとんどは解雇になった。


「解雇ってどういうことですか!」

「私達はこれまでずっと仕えて来たのに!」


「解雇とは言っておらん、お前達はエドナ様の側仕えなのだからついて行けばよかろう」


案の定文句タラタラの侍女だったが、じいがキツク言い放つ。


「この屋敷はエリオル様の物となったので別邸として使われることとなる。故に使用人の数も少人数でいいとのことだ」

「でも!」

「それに、庭師と必要最低限の侍女がいれば事足りるだろう?侯爵家からも選りすぐりの侍女を派遣させたいとのことだ…これはベルクハイツ家からの命令だ…王族に逆らうというのか?一介の侍女如きが」

「くっ…」

これまで大人しかったじいだけど、本当はもっと早い段階から彼女達を追い出そうとしていた。

でも俺が侯爵家に行儀見習いに行くことが決まってから考え直したらしい。
普通の貴族令嬢や令息は行儀見習いで下働きなんてさせないけど、侯爵家のように立派な侍従を育てることを第一に考えている貴族のお屋敷では下働きから教え込むらしい。

俺の場合はばっちりだったし、普段から侍女達に仕事を押し付けられている所為で要領よく仕事をこなし、尚且つじいは先手を打った。

長らく仕事をサボっている侍女の噂を流し、尚且つ実家にも苦言をモノ申していたと。
その為お給金を返金するように訴えていたことや。

盗品に関しても明らかにされた。
これに関しては俺が事前にじいに相談したんだけど、その後のじいは仏陀から不動明王に変わる程怖かった。


「それから、お前達は奥様の部屋から盗んだ骨董品はすべて買い戻したのでその代金はお前達の実家に請求しておいた」

「そっ…そんな!」

「当然盗人というレッテルを貼られたお前達が今後侍女として働ける場所はない…罪を犯した召使として働くのだな?」

「あっ…ああ」


この先待っているの借金地獄と家族からの冷たい視線。
下級貴族出身だった侍女もいるので二度と社交界に出ることはできず宮廷侍女になることもできないだろう。


…というか、お母様が既に先手を打っていたらしい。
おっとりしているように見えてなんて恐ろしい方なのだろうか。


綺麗な薔薇には棘があると聞くけど、猛毒だな。



「本来ならば折檻され、国外追放をされてしかるべき罪だったのだ。感謝するように」

「お待ちください!どうか…ご慈悲を!」

「くどい。お前達は心酔するエドナ様の元で一生奉公すればいいだろう?ただし子爵夫人となり領地すらない身では真面な給金は得られないだろうがな…」

「クリストフ様ぁ!」


手を伸ばすも、じいがその手を掴むことはない。
何度も注意をしていたにもかかわらず耳を貸さず酷い言葉を浴びせたのは彼女達なのだから。


俺も庇うことはしない。



こうしてラスカル家の使用人はじいと庭師と数名の侍女を残して解雇となった。


もちろん彼女達の実家から慰謝料を請求したので。

そのお金をこれまで俺に仕えてくれた少ない侍女達のお給金に上乗せすることができたのだった。



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