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第二章.婚約者は悪役令嬢
19.聖女
しおりを挟むこの国では魔力を持つ者は貴族が多かった。
故に平民で魔力を持つ人間はほとんどいないが、まったくいないわけではない。
ただ、ここ百年ぐらいはいないことから平民で魔力を持つのは異質だと思うようになったのかもしれない。
「いないわけじゃないし、偏見だよな」
現在自習時間を利用して俺は図書館にて調べ物をしていた。
調べているのは勿論聖女に関してだ。
我が国では初代国王には二人の補佐が存在した。
一人は武器を持たずして敵を説き伏せ和睦っせたとされる大賢者。
彼は武力こそないが、数多の知恵を使って敵国を説得し無血開城をしたと言われる程の人物。
そしてもう一人。
強い魔力を持ってして、軍に身を置き敵味方関係なく癒しの魔力を与えた聖女。
敵軍に対しても慈悲の心を忘れず、戦場で散った命であれば敵であっても祈りを捧げる程の優しさを持つ。
この二人亡くして、初代国王は国を治めることも、英雄王となることもできなかったと言わしめる。
聖女は光の魔力を保持していたことから癒しの魔法で国を包み込み結界を敷いたとも言われている。
初代国王時代からも聖女は存在したが、初代国王に仕える程の聖女はいなかったとされているからなのか、今生で光の魔力を持つ少女がいたことは、色々騒動が起きるのだろうが…
「やっぱり可愛いなマリエ」
「やぁだ…そんなことないですよぉ!」
…が、俺はあの女が聖女だなんて断じて認めない。
これ見よがしに公共の場で男といちゃつき、尚且つ男を侍らせているのだから。
「またやっているわよ」
「本当に恥知らずね」
他の生徒が見ているのに気づかないのか。
あんなのが聖女だったら間違いなく国は傾き崩壊するだろうな。
「おい!何処を見て歩いている!」
「申し訳ありません」
「身の程を弁えろ!」
そうこうしている最中、前が見えない程の本を抱えている女子生徒が馬鹿集団の一人とぶつかり倒れる。
「まったく、あんなのがマリエと同じ聖女候補とは」
「何かの間違いだろう?庶子など!」
図書館で騒ぐ方がマナーがなってないと思う。
それにお前が庶子だの文句を言うなと言ってやりたい。
何故なら、彼女に怒鳴り散らした男は子爵家の子息であるが母親は貴族ではなく愛人のはず。
しかも異母兄弟の兄は一つしか変わらない。
父親が長年浮気を重ね続けていた。
貴族社会では結婚後からの愛人に関してはまだ許されているが、婚約中の浮気は許されない。
聞けば前妻とは政略結婚で、その前から女性を囲い、妻が病死すると同時に後妻に入り前妻の子を追い出したとか。
真意は定かではないが、そんな奴が良く言えたものだ。
そしてそれを窘めることもなく笑って見ている女を恐ろしく感じた。
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