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第四章.ダンジョン攻略大作戦
2.出発
しおりを挟むこうして俺達はダンジョン攻略に旅立った。
とはいっても今回は本当に初心者中の初心者のダンジョン攻略なので心配はない。
レイラ達は少々心配し過ぎなんだけどな。
「あれ?もう一組いるんだ?」
「ん?アイツ等はヴァンと同じクラスで召喚師のフセイン・ゼルダに…魔獣使いのポール?」
「彼等はダンジョン攻略してもあまり意味がないと思うんですが…主に後方支援ですし」
確かに授業でも習っていたが、魔獣使いや召喚師は元から魔力が強く、前衛部隊となり魔法騎士とパーティーを組んで活動するが、態々レベルの底上げの為にダンジョンを攻略する必要はない。
必要であっても、精霊の森や神獣の森などの方が効率的だろう。
そもそもレベルの低い魔物の森は、魔力が低い魔術師がレベルを上げる為に攻略する人間が多いと聞く。
元からレベルが高く魔力も強い冒険家もアイテムやドロップ率の高い場所を選ぶと聞くけど妙だな。
「きゃあ!」
「わ!」
背後から誰かにぶつかられたミツバさんはそのまま前のめりに倒れる。
「すいません!」
「いいえ、大丈夫です」
他のパーティーメンバーだろうか?
胸のエンブレムを見ると星が一つであることに気づく。
だが、見慣れない生徒だった。
「リナ!何をしているんだ」
「申し訳ありません…」
リナと呼ばれた女子生徒を怒鳴ったのは、先程レントン様が話していた二人組だった。
「申し訳ない…レントン殿下!」
「ここでは、気を使う必要はない。俺達は対等でありライバルだ」
「はっ…はい」
委縮する彼等は、やはり身分を気にしているようだ。
仕方ないけど、でもレントン様は解っていながら近づく。
「これまで傍若無人な態度を取っていた俺が言う資格はないが…共に頑張ろう」
「レントン殿下…」
「どうしたんだ?」
手を差し伸べ握手を求めるレントン殿下に恐縮でもしたのだろうか?
とても顔色が悪く感じた。
「いいえ、光栄です。リナ…早く荷物を拾え」
「はい、申し訳ありません」
リナと呼ばれる少女はミツバさんにぶつかった所為で荷物をぶちまけてしまった。
「ミツバさん、大丈夫?」
「はい、問題ありません…あ、地図が汚れてしまいました」
「地図は大事に扱わんか」
砂だらけになった地図を見て呆れるレントン殿下はハンカチで綺麗にふき取りる。
「あっ…いいです」
「女性が地べたにしゃがみこむな」
「はっ…はい」
言い方はきついが、この体制でしゃがめば少しまずい。
スカートの中が見えてしまうのでレントン様は即座に配慮したのだろう。
普段は横柄であるけど、やっぱり紳士だよな。
「すいません、レントン様」
「フンッ、気を付けろ」
うんうん、こいのツンツン加減はまさしくレイラと似ているな。
なんだか微笑ましくなった。
この旅を通じてこの二人も仲良くなってくれたらと思いながら俺達は今度こそ出発した。
でも、この時俺達は気づいていなかった。
背後に影が潜んでいることを…
「フッ…馬鹿な女」
憎悪の視線を向けられていることに気づくことなく、俺達は森に入ったのだった。
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