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しおりを挟む王宮の敷地内には幾つかの宮殿があり。
主に政治を行る宮殿の奥にある宮殿内に託宣の間が存在する。
そこは基本男子禁制で、女性でも許可がないと勝手に入ることができなかった。
唯一特例で入れる男性は聖職者のトップであるフィディオだけだった。
「さぁ、二人もお茶を」
「ありがとうございます」
「いただきます」
甘いミルクティーが香り安堵する。
「美味しい…」
「それは良かった。腕を見せてください」
「はい」
慣れた手つきで包帯を巻くフィディオは眉を顰めた。
「私が馬鹿でした。もっと早く動くべきでした」
フィディオの表情には後悔しかなかった。
前世の頃からずっと味方になってくれた優しい人の期待に応えたかった。
――この方に笑って欲しい。
誰よりも聡明でありながらも、国と民の為に生きるフィディオをシェリラは慕っていたのだ。
その思いは淡い恋よりも強い思いと。
長年培ってきた信頼と尊敬と言っても過言ではない。
師として時には教えを乞う事もあれば。
国の行く末を案じる立場故に、国民の暮らしを守る為にどうすべきか。
辛い事が多かった前世でも。
すべてが悲しい記憶ではないのを思い出す。
***
静まり返るダイニング。
「それでねお母様、今度は町にある…お母様?」
「え?」
普段なら和気あいあいと楽しい話をしながら食事を取っているのに、今日は何時も以上に静かだっt。
「もう!私の話を聞いてんかったの」
「聞いているわよ。買い物に行きたいのね…だけど明日はダメよ」
「えー!」
普段ならば駄々をこねる可愛い愛娘にしかたないと思いながらライオネルは我儘を聞いていた。
だけど。
「旦那様?いかがなさいました?」
「ミレーヌ、明日は勉強の日じゃなかったか」
「え…でも」
「こないだも勉強を休んだろう?あまりサボってはダメだ」
「旦那様?」
普段ならば仕方ないと言うのに厳しく接する。
「ミレーヌ、君も七歳だから今のうちにしっかり学んでおかないと」
「でも…」
「家庭教師が合わないなら私の友人にお願いするよ」
跡継ぎのラインハルトは幼少期から英才教育を受け、長女であるシェリラも五歳の頃から厳し淑女教育を受けていたが、一度だってサボった事はない。
兄と姉と違って甘やかされ過ぎたミレーヌは少し我儘に育ってしまった。
だが、あの時の姿を見て自分の育て方が間違いだと言うのに気づいた。
「けれど貴方…ミレーヌは勉強が苦手で」
「苦手だからずっと避けることはできないよ。それとも社交界にださないわけにもいかないだろ?」
「それは…」
ミレアルはぐっと黙るしかなかった。
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