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プロローグ
何所までも広がるモンゴル高原。
真夏の太陽にも負けず育つ姿は見事で、今日もうっとりと見つめていた。
「稲穂ぉぉ!今日もうっとりしすぎてねっちゅうしょうになるんでねーぞ!」
「じっちゃん…今日も…今日とて私の糧が」
「わーっちょるよ」
米沢稲穂。
農業をこよなく愛するアラサー。
田舎娘であり、彼氏はいない。
花より団子で、特に三度の飯は米が好き。
米さえあれば漬物でよし。
私の実家は由緒正しき農家だ。
農家に由緒正しきなんてあるのか?って?
日本人にとって米を作る人間が一番偉いに決まっている。
それが私の持論だ。
何故なら稲作の文化こそ天下なのだから。
日本人はその昔から主食は米だった。
近年、洋食が大流行しているが、日本人の体は米に捕らわれている。
故に米無しでは生きていけない。
なのに、米農家には厳しい世の中だ。
故に私の野望は。
「いつか米で世界制覇をしてやる!おー!」
世界一の米農家にすることだ。
「おい、稲穂がまた馬鹿なことをいっとるで?」
「放っておき…あいつ時々あほじゃ」
「せやから、また縁談なくなったんや」
ちなみにだが、私は恋人がないだけでなく先日の見合いも断られた独身貴族だ。
これで10回目のお断りを受けたのだ。
「じっちゃん!今日もモーツアルト弾くよ」
「おー頼むぞ」
美味しいお米になってもらうべくモーツアルトを弾く。
美味しくなってねと祈りながら私がじっちゃんと一緒に演奏する。
田舎娘であるが、実は演奏の心得があるのだ。
「おいしくなれぇー」
「おいしくなれぇー」
二人で演奏をしながら歌を歌う。
「超絶技巧を演奏しながら変な歌を乗せるの止めて欲しいんやけど」
「ほんまないわ…」
家族が呆れたように突っ込みを入れるが、これが私の日常だった。
そして現在――。
「この薄汚い田舎令嬢が!貴様との婚約は破棄する!」
「はぁ…」
「そもそもお情けで貴様と婚約してやったんだ!その慰謝料を支払え!」
「お可哀想なギョーム」
公の場で芝居のかかったような捨てセリフ。
隣には侍るように抱き着く女性。
一応彼は私の婚約者(仮)ということになっている。
何故なら、婚約話があったが正式なものではない。
正式な婚約を結ぶ前にパパが不慮の事故で無くなってしまったのだ。
理由は幻のマグロを釣ろうとしたが逆に引きずられたのだ。
跡継ぎである私はまだ社交界デビューを果たしていなかったので婚約者の両親が管理をするということで片付いたのだが、それがまた厄介だった。
通常、アレンドール王国は女性でも爵位を継承できるが結婚と同時に爵位を返上という価値になるのだが。
私が引き継ぐ土地は婚約者であるギョーム・パンデミックが継承する方に持っていかれた。
正式な遺言がない状態では無理だし、そもそも男尊女卑が当たり前のこの国では国王も女性は跡継ぎになるのは悪だと豪語している。
時代錯誤だと思ったが抗うすべもなかった。
それ以降は私の立場は決していいとは思えず、パンデミック家の管理の元農業を行い。
出荷した作物はすべてパンデミック家に奪われ、私は婚約者というよりも使用人以下の扱いを受けていた。
社交界デビューもさせてもらえず、学園に通うことも許されなかった。
私はパンデミック家からすればお荷物。
その理由は加護を持たないからだ。
この世界では数多の女神が存在し、女神の加護を受けることがステータスだ。
魔法も存在し、より強い女神から祝福を受けていれば国は長らく反映するのだけど、私は加護がほとんどない。
あると言えば豊穣の女神さまの加護で、使役できるのはゴーレムだけだ。
戦闘にも使えない。
役立たずの魔物を使役するだけと言われていたのだ。
貴族令嬢として美しい容姿も気品もない教養もない故に、周りの目は冷たかった。
挙句の果てに女神から賜る聖剣や魔法の杖はなく。あるのは鍬のみだ。
スキルは農業や生産スキルのみだったので、さらに婚約者とその家族をイラつかせてしまったというわけだ。
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