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42悪夢②
しおりを挟む「役立たず」
皆声を揃えてこういうのだ。
できることとできないことがあるのに。
「旦那様が生きていたら」
「何故領主様が亡くなってあの娘が」
「もしかしてあの娘はう疫病神か」
大人というのは時としてとても無神経だった。
本人がすぐそばにいるのに聞こえる場所で堂々と言うのだから。
「ああ…思い出すと痛いな」
ずっと蔑まれてきた。
ずっと冷遇されてきた。
諦めたはずなのに、傷ついていたんだ。
ギョームに憎まれることが悲しんじゃない。
私は生きてパパが死んだことが悲しかったんだ。
「…すごく痛いな」
胸に無数の針が突き刺さるようだった。
悲しくて痛くて仕方ない。
「お前なんて生まれてこなければよかったのに」
「この世の悪い元凶はお前だ」
「お前が死ねばよかったんだ」
気付くとギョームやパンデミック家の人達だけでなく、領民の皆が私を囲み指さす。
お前が悪い。
お前なんて生まれてこなければよかったのだと。
私を責め続ける。
これは悪夢。
現実じゃないと解っていても苦しい。
痛いんだ…
「うっ…」
息ができない。
「アンリ」
その時だった。
声が聞こえた。
「君は必要な人だ」
「アレク?」
優しい声が耳になじむ。
まるで風のように悪い気を吹き飛ばすかのように彼らは動けなくなる。
「君は優しく強い人だ…」
「アレク…」
息ができる気がした。
身動きが取れなかった体が動いた。
ああ、そうだ。
過去の私は雑音に傷ついた。
でも…
今は違う。
「イチロー」
光が灯り、そこにはイチローがいた。
イチローだけじゃない。
私の後ろには沢山の仲間がいたんだ。
「これは現実じゃない…ただの幻だ」
過去の雑音に振り回されるなんて馬鹿だ。
「私は貴方達に必要ない。そして私の世界に貴方達必要ない」
だって私にはもう居場所がある。
「私は水の女神様を見つける。そして皆の元に帰るんだ!」
こんな幻に傷ついている場合じゃない。
私は一刻も早く見つけなくちゃダメなんだから。
「こんなもの!」
悪夢なんてぶっ壊してやる。
背中に背負っている鍬を握る。
「百姓なめんなよ!」
出られないなら壊せばいい。
このくだらない悪夢をぶっ壊せばいいんだ!
力いっぱい鍬を振り下ろすと、何かが割れる音が聞こえた。
そしてその先には泣いている女の人がいた。
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