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第二部.薔薇の花嫁
2.継承の掟
しおりを挟む王家直系の血筋の高位貴族の中では昔からの伝統的な継承法があった。
「今ではあまり知られていないけど、四大公爵家などは配偶者を得ない場合は爵位を引き継げない決まりがあるの」
「えっ…では」
「現在息子は侯爵の地位を賜っているけど、公爵の地位を引き継いでいない」
だからアリシエは公爵家の子息でありながら侯爵という地位にいるのかと思った。
「まぁ、自力で侯爵の地位を得たんだから我が息子ながら中々よね?」
「自力で…」
それはある意味凄い事だった。
親から受け継いだ場合ならともかく実力や功績を認められて侯爵の地位を与えられるなんてよっぽど優秀なのだろうと思った。
(そんなすごい人が…)
住む世界が違い過ぎると思うフローレンス大してアリシェはあっさりしていた。
「地位など付属品だ」
「まったくこの子は!」
(侯爵が付属品)
社交界の貴族が聞いたら怒り狂うだろうと他人事なのに思ってしまった。
「俺が欲しいのはあの時から一つ、君だ」
「え?」
「俺は君を迎える為に地位を得ようと思った。身分が低ければ妻は苦労するだろう…俺は他民族の血があるから不利だったからな」
そっと手を握りながら強い眼差しを向ける。
強い情熱をフローレンスに向けるようで、胸が絞めつけられる。
「まぁ、なんて熱い眼差しなのかしら!」
「母上、茶化さないでください」
「茶化してないわ。他人に対して距離を保っていた貴方がここまで激しく女性を求める日が来ると思わなかったから嬉しくて」
(激しく?)
ツェリーチェの言葉に頬が赤くなる。
これまで男性に求められたことはなかったので、こんなことはあり得るのだろうか?
そう思うも、さらに強く手を握られ恥ずかしくなる。
(あっ‥)
まるで離すまいとするかのように指を絡めながら手を握りキスをする。
「あっ…侯爵様!」
「アリシェだ。名前で呼んでくれ花嫁殿」
さらにキスをされ真っ赤になる。
周りには侍女達もいるのにお構いなしに口説くアリシェに、恥ずかしくて死にそうだった。
「俺は君を妻に娶りたい。君が欲しくて欲しくて仕方ない」
「そっ、そんな」
「あの日からずっと愛していた。美しくも聡明で心優しい君を」
腫れものに触れる様に手にキスを続けるアリシェの目は嘘偽りを一切感じなかった。
嫌なわけじゃないがどうしていいか解らなかった。
これまで、こんなにもストレートに男性に愛を囁かれたことは一度もない。
しかもアリシェは飾った言葉は一切なく直球で責めて来たのだから仕方ないだろう。
「俺が嫌いか?」
「そんな…」
「ならば前向きに考えて欲しい。俺はフローレンスを唯一の妻として迎えたい」
それは、今後一切愛人を一人も持たないということを意味していた。
「アリシェ様!」
「許されるなら俺は愛のある結婚を君としたい」
まっすぐすぎる愛情にフローレンスは言葉を失っていた。
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