自称悪役令嬢は嫌われるべく暗躍する！皆の幸福の為に嫌われるはずが、何故か愛されてしまいました。

第一章

１８ヒロインの事情①

どうしてフラグが発生しないの。
私が前世を取り戻したのは、子爵家に養女に迎えられてすぐの頃だった。


前世で私は女子高生だった。
田舎で私は都会から引っ越す事になったけど、馴染めずそんな時にハマったのが君花だった。


田舎の高校でも大流行だった。


「ねぇ、新しいルートどうだった」

「んーまだだった。でも私、どっちかというと純愛ルートが良いな。逆ハーって何かやだ」


聞こえて来る会話に馬鹿だと思った。
子供っぽいっと思った私はそのまま立ち去った。



その時だった。


「山田さん！」


「何よ」


教室を出ようとした時、うざい女に声をかけられた。

その苗字で呼ばないでよ！
大嫌いなダサい苗字を呼ばれて苛立つ。


「ねぇ、山田さん。今度、芋煮会があるんだけど参加しない」

「参加しないわ」

「もしかしてお芋嫌いだった？でも参加だけでもどうかな…その後ビンゴゲームもあるし楽しいよ。近所のお祖母ちゃんも」


「うざいのよ！」


「えっ…」


馬鹿な奴と関わるなんて冗談じゃない。
こんな田舎なんて来たくて来たんじゃないのに！


「アンタ、うざいのよ！馬鹿の癖に私に何？優しいでしょアピール？」

「私は山田さんと仲良くなりたくて…」

「何でアンタみたいな馬鹿と私が？親もいない癖に」

「ちょっとアンタ！なんて事を言うのよ！」


クラスの中心にいて何時もへらへら笑っている馬鹿な女。
両親が亡くなり祖父母に引き取られたと聞くけど同情を理由にちやほやされて。


「皆言ってたわ？火事で亡くなったのにアンタだけ生き残ったんですって？アンタが代わりに死ねば良かったんじゃない？」

「そんな…」

「なんて事を言うのよ！」

「ああ、もしかしてアンタの所為で死んだんじゃない？」


目が一瞬揺れた時に、内心でざまぁ見ろと思った。
ずっと嫌いだった。


悩みなんてない顔をして、ヘラヘラして。
祖父母が裕福で、両親がいなくてもなんの不自由もない。

友達も守られてムカついていた。


「山田さん…」

「何よその顔は…憐れむような顔で見るんじゃないわよ」

「やめっ…」


何でこんな女に私が同情されないとダメなの？
こんなダサい女に！



「止めなさいよ」

「いい加減にしなさいよ山田さん！」


煩い！
苗字で呼ばないで！


私が――！




その時クラクションが鳴った。


「山田さん危ない」


ドォン！



私は突き飛ばされる瞬間乗用車が飛び込んできてあの女が。


大嫌いなあの女が真っ赤に染まるのをこの目で見た。


「零！」


誰かがあの女の名前を呼んだ。



「誰か救急車を！」

「杏奈！」


「しっかりして！すぐ救急車を呼ぶから…」


真っ赤に染まったあの女の手を握る馬鹿な連中に私は見ない振りをした。


だけど、私はその日から嫌われ者にされてしまった。