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第一章.婚約破棄騒動
17.婚約者の罵倒
しおりを挟むその日は色々疲れが溜ってしまった。
柄にもないことをしてしまったし、今まで目立たないようにひっそりと生きて来た私にとっては大胆な事をしてしまった。
「ねぇ、あの噂聞きまして」
「ええ…」
クラスメイトはヒソヒソと話す。
私をチラチラ見ては視線が合えば、視線を逸らす。
きっとすぐに噂になったのかもしれない。
バァン!
「随分と失礼ですわね。人をジロジロ見おるなんて」
「礼儀を忘れているのかしら?」
視線に耐える私だったが、机にワザと本を置き、きつめの口調で言う。
「申し訳ありんません、ナウシカ様」
「失礼いたしましたマルガレーテ様」
既に学園の人気者でもある二人は圧倒的な存在感で他者を威圧している。
「まったく、なんて気分の悪い方なのかしら」
「私は大丈夫ですから…」
口調はきつめだけど、マルガリーテ様とナウシカ様は本当に思いやりのある方だと思う。
こんな私に優しくしてくださるのだから。
その一方で、マリアさんの事が心配になって仕方ない。
彼女は私以上に風当たりが強く、守ってくれる友人はいるのだろうか。
「どうしましたの?顔色が悪いですか」
「貴女がガサツだからですわ」
「申し訳ありません…」
二人は優しく声をかけてくださっている最中の事だった。
「オリヴィア、少しいいか」
「ブライトン」
二人の声を遮るように現れたのはブライトンだった。
「君は何を考えているんだ」
「は?」
教室を出て、空き教室に連れ出された私を待っていたのは彼からのお咎めだった。
「は?じゃない…例の平民の少女を庇ったそうだな。君は何をしたか解っているのか」
「えっ…」
「君が彼女に同情する気持ちはわかる。姉に対して劣等感を抱いていたからな…だからと言ってこんな陰湿なやり方はどうなんだ?」
「何を…」
ブライトンは何を言っているの?
「私が姉に嫉妬して彼女を庇ったと。私がそんなことをしたと思っているのですか」
「あっ…いや」
なんてことを言うの?
私は今まで姉に対してそんな感情を抱いたことはない。
「私は…そんな風に思われていたんですか」
「いや、すまない。君が彼女に同情して後先考えなかっただけなんだな?だが、君も自分の立場をもう少し考えた方がいい…あの平民の少女は殿下達とも噂がある。万一の事があったら」
私が黙って震えているのを見て流石に悪いと思ったのだろうか。
けれど私の行動はべて間違いだと言うのか。
「貴女は私のことを全て否定するのですね」
「何を言っているんだ。俺は君の為にいってやってるんだ。マリアナ嬢も困って…」
口を開けばお姉様の事ばかり。
「とにかく、あまり伯爵家に恥じる行為をしないでくれ。そうでないと俺は君と婚約破棄をしなくてはならない。別に君と必ず結婚しなくてはいけないわけじゃないんだからな」
あんまりだわ。
まるで恩着せがましく言っているようじゃない。
「はい…」
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ベアトリスの言葉が頭から離れない。
あんな男と結婚しても幸せになれないと言ったあの言葉が。
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