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第一章国外追放

20.家族会議

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広間にいるのは、身内とはいっても過言ではない。
敵対する派閥もおらず、腹を割って話しても問題ない者ばかりだった。


「それで、その人は…」

「元貴族で島流しになった令嬢だ」

「「「は?」」」

島流しと言われて全員絶句した。

「犯罪者か!」

「殿下、誘惑されたんですか?」

冷や汗を流す大臣達。
幼少期から、優秀だったのフレデリックが何故?とも思ったが。


「違う、ハイジは犯罪者じゃない。ステラの話いわく…ハイジは冤罪で島流しにされた可能性が高い」

「何?ポーレット夫人が?」

「確かに流罪になった者の中には、罪をでっちあげられた者も少なくありません」

ステラの名前を出せば、大半は信用した。
何故なら、ステラはかつて宮廷一の女性文官として一目置かれた人物でもある。


宮廷を出た後は島に留まり、監視役を命じられている。


「俺も、彼女と行動を共にしたが‥島の住民の心を掴み。尚且つ稼いだ金のほとんど農家に寄付する程だ」

「うむ…」

「ジャンも彼女を認めている」

「何だと…男爵が」


元宮廷料理長を務め、王の腹心の部下でもある人物だった。

「彼女は人を傷つけることが出来ない人だ…少し変わっているが。きっと仕組まれたんだ」

「何という事を」

「なのに何時も笑っている」

本当は、国から出て幸せなのだが、彼等は誤解をした。
祖国を追い出されて辺境地で苦労して、必死に馴染もうとする健気な少女だと勘違いする。

「彼女は島に永住したいって言っているんだ。それで…手っ取り早く島の男と結婚することを考えていて」

「なんというか…」

「かなり逞しいですわね」


うんうんと頷く国王と王妃。


「それで、フレデリックはどうしたい?」

「ハイジと夫婦になって普通の家庭が欲しい。あの島は俺にとって故郷でもあるんだ」

普段はそつなく何でもこなしているが、渡り鳥になるのは疲れる。
帰る場所が欲しいと思っても、口に出せなかった。


「俺の仕事はする。だけど…最後の我儘を許してください」

「馬鹿を言うな。これからも我儘を言え…今まで私の代わりに損な役目を任せたんだ。追放された女性?その程度何だと言うんだ」

「兄上…」

「お前が人間の女性と結婚したいなんて言うなんてこの先ない。ならば私は応援する」


本心だった。
この先、フレデリックが結婚したいなんて言う可能性は低い。

ならば、このチャンスを逃してはダメだと思った。

「でも、彼女は地位も名声も興味が無いんだ。島で自由にのんびり過ごしたいらしい」

「ほぉ?いいではないか」

「陛下…」

国王は下手に野心のある令嬢や王女を迎えるよりも良いと思った。
どの道、フレデリックは爵位を貰えたとしても、良くて伯爵の地位を与えられる程度だったので利用されては困る。

地位に興味ない方が喜ばしいのだった。


「例え王族でなくなろうとも、貴方は私の大事な息子です。孫を抱かせないなんて言わないでちょうだい」

「母上」

「くっ…フレデリック。すまん…私が不甲斐ないばかりに」

「叔父上」

長らく苦労が多かったフレデリックに人並みの幸福があってもいいのではないか?

平民になって普通に家庭を作り幸せになってもいいのではと思っている。


「その女性はカリスマ性があるのか」

「はい、領地経営の才能も申し分ないのですが、かなり変わっていまして」

「放蕩息子の嫁にはそれぐらいがいい」

「陛下、貴方の息子ですぞ」

大臣達が突込みを入れるも、大らかすぎる国王なので言っても無意味だった。


「彼女はとにかく食べることが好きで。金目の物は家畜にしてますね」

「ふむ、作物は大事だからな」

「ああ、天はどうしてこのような試練を」

大臣は立ちくらみがする。
天は二つの物を与えてないのは事実なのかと嘆く。

第二王子は優秀なのに王になる器ではない。
伴侶となるかもしれない女性も領地経営に優れ、カリスマ性もあるのに貴族としての生活に興味がないとくれば嘆きたくなる。

しかし、ある意味、最高の取り合わせだった。
王太子と後に王太子妃となる女性を影から支えて貰えるかもしれない。

尚且つ平民達が暴動を起こさないように説き伏せる役目を担える。

これも政治の一つだった。


「そうと決まれば、頑張るのだ!その女性を惚れさせろ」

「いいですか、無理強いは許しませんよ」

「その前に、その少女の素性をもう少し調べよう。万一不当な扱いを受けているなら、国に文句を言うべきだ」

可愛い甥の想い人だ。
できるだけのことをしてやりたいと思う王弟殿下は詳しく調べようと思った。

「ハイジというのか」

「アーデルハイドが本名です」

「ふむ、アーデルハイドというのか」

王弟殿下は名前を刻みこもうとしたが、ふと思い出す。

「フレデリックよ…聞いてよいか?その少女の容姿と、何処の国から追放されたか」

「えっと…」


嫌な予感がした。
王弟殿下は外交官として他国に向かうことがある。

アーデルハイドという名前の令嬢に聞き覚えがあった。


「確か、隣国のイングリッド王国だと聞いたが」

「ゲフン!」

「え?殿下…殿下ぁぁぁぁ!」


王弟殿下こと、シャルルは苦労人だった。
そして今も、放蕩な甥っ子に悩まされ失神した。


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