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第二章聖女と勇者と巫女
24似通う二人
しおりを挟む夜にか早く星々。
変わらないはずの星に二つの星が強く光り輝く。
「待っていいましたよ。二人共」
「女王陛下、海皇様」
来るのが解っていた二人の態度にオンディーヌは全て見ていたのだと察した。
「海底から見ていらしたのですね」
「ええ」
アムピトリーテの鏡ならば地上の様子を見る事など簡単な事だった。
「巫女の力が体に馴染んだのでしょう。私を救った貴女の歌声と、レグルスの持つ剣は聖剣です。恐らくと思っていました」
「最初からすべて解っていたしたのですか」
「すべてではありません。貴女が心を壊せば永遠に巫女に目覚めなかった」
もしオンディーヌがあのまますべてを拒絶していたらという事になる。
オンディーヌはレグルスを助けたいと言う強い願いが勇気を与え、傷だらけになっても戦う選択を与えた。
「巫女と勇者は強い繋がりがありました。ですがそれはあくまで魂の問題…心が伴うかは別です。貴女はレグルスの為に力を発揮した。そしてレグルスも」
二人は共に手を取り合い支え合ったからこそ目覚めたのだった。
「巫女と目覚めた以上は逃げられません」
「はい、元よりそのつもりです」
「貴女を裏切った愚か者を救うのですか。故郷には貴女を侮辱して踏みにじった者がいるでしょう」
今でも祖国に戻る事は恐ろしい。
きっと笑い者にされるだろうし、社交界ではどんな誹りを受けているか。
「だとしても私は復讐は望みません。何より私は自分の為に参ります」
「良く言いましたね」
「女王陛下…」
過去の傷を背負いながらも前を向こうとするオンディーヌを誇らしく思う。
「貴女は罪を憎んでも人を憎まず役目を全うするでしょう。ですが忘れてはなりません」
「はい」
「貴女は一人ではありません。もし祖国が貴女を敵にとして判断したとしても海は、風は貴女の味方です。そうでしょう?」
「え?」
足音が聞こえる。
優しい水の魔力を感じた。
「オンディーヌ様」
「テティア様?」
トランプ王国にいるはずのテティアが現れた。
「私が目覚めた後に、彼女とコンタクトを取りました。そこで急ぎ帰国していただきましたの」
「オンディーヌ様、この度は我が国の危機をお救いくださったことを改めてお礼申し上げます。本来ならば早々に帰国しなくてはならなかったのですが…」
「いえ、そのような!」
「彼女には馬鹿者を凝らしめていただきましたの」
(何をしたのかしら)
終始笑みを浮かべている二人の目が笑っていなかったのだった。
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