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第二章聖女と勇者と巫女
27優しい人
しおりを挟む今回の面会は予め協力を頼まれていた。
現段階でもパークアイ公爵を捌く事は出来るが、できるだけ罪を重くさせたかった。
特にキャルティの罪は現段階では殺人未遂の罪に問えなかった。
証拠品だけでは甘く、腕の良い弁護士に協力をしてもらっても最も重い罪を与えたかった。
「終身刑にできなくとも、爵位を剥奪させ、できるだけ長い間外に出れないようにしたいんだ」
「解りました…」
「君には辛い事を頼むが…」
「本来なら私も罪に問われてもしかたありませんでした」
リリーはずっとキャルティに付きまとわられて苦しんでいた。
相手は王族である以上は拒むこともできなかった。
それに加えオンディーヌを慕っていた事を咎められ洗脳だと言われ病気扱いをされた事もある。
「私はあの場でちゃんと声に出すべきでした」
「君の立場では無理だろう。そう仕組んだのは他の奴等だ。オンディーヌも解っている」
(どうして…)
社交界ではあの事件で関わった貴族を容赦なく裁き、慈悲の欠片もないと言われているジルフォードだがリリーはその逆にも思えた。
従わざるを得なかった下級貴族等には、罪を軽くしている事も知っている。
今回の事もリリーが責められても仕方ないのに、ジルフォードは責めることがなかった。
代わりに協力をして欲しいと。
「君はオンディーヌを慕っていたんだろう」
「はい」
「そしてオンディーヌも君が好きだったよ。だから君を憎まない」
ジルフォードは決して理不尽な事をするような男ではなかった。
リリーがあの場で手が出せないのは仕方ない事だというのは解っていたからこそ責めなかった。
「私にできる事ならば何でも致します」
「ありがとう」
こうしてリリーは危険を承知でキャルティと面会をした。
この時はせめて少しでも罪悪感を持っていてくれればと思ったが、自分の甘さを呪った。
「疲れただろう」
「いいえ…」
北の塔を出た後に、馬車で王宮に向かう最中。
ジルフォードに気遣ってもらいながら外の空気を見つめる。
「アイツを確実に有罪にしてみせる」
「はい…でも」
「オンディーヌは生きている」
「え?」
リリーを苦しめていたのはオンディーヌの安否だった。
国外に出て生きているか、今はどうしているか心配で仕方なかった。
公では死んだことになっているが、聖女であるリリーは僅かながらオンディーヌの魔力を感じていた。
そしてここ数日でオンディーヌの魔力を強く感じていたのだがとても不安定で心配していた。
「君にも話があるんだ」
「え?」
馬車は静かに王宮の門に入っていた。
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