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番外編~その後の僕等
とある元公爵子息の末路③
しおりを挟むこれまでキャルティは誰よりも優れていると自負していた。
父親は王弟殿下であることは勿論、自信も素晴らしい人間だと。
才能あふれる選ばれた存在だと思い込んでいた。
第一王位継承権は王女の縁寿リークであるが、自分が次のお王になるべき存在だと思い込んでいたんのに、オンディーヌは一切キャルティに尊敬の念を抱いていなかった。
(なんて奴だ!この俺の婚約者にしてやったのに!)
キャルティはさも自分と婚約できたことを感謝しろと言っていたが…
「オンディーヌ、公爵子息との婚約は」
「解っていますわ。貴族令嬢としての義務です。私はアンジェリーク様の為にもこの婚約はどんなに嫌でも従います。仕方ない事です」
(しかたないだとぉ!)
キャルティが聞いているにも関わらず、オンディーヌは義務だと再度告げた。
「お兄様は無理に人身御供になる必要はないと仰せでした。ですが私は侯爵令嬢として役目を果たさなくてはなりません。お飾りの妻だとしても」
「オンディーヌ…そんな事は」
「私はあの方に義務以外の感情はありません。どうしても尊敬の念を抱けません。そもそも政略に感情は不要ではありませんか。あの方も私を侍女、もしくはそれ以下にしか思ってませんわ」
オンディーヌは最初からキャルティに一切の情を持つ事がなかった。
それでも歩み寄ろうと努力をしたが、最初の一日でそんな気がなくなったのだ。
それどころか傍若無人の態度に絶望した。
唯一の救いは敬愛するアンジェリークと親族となり、これまで以上に傍で支えられる事ぐらいだった。
「私はアンジェリーク様の為に嫁ぎます」
「オンディーヌ、今の君は処刑される罪人の顔だぞ」
(処刑だとぉぉ!)
柱に隠れながらキャルティは歯ぎしりをしていた。
「何だ?この音は」
「床が古くなっているのかしら」
キャルティの歯ぎしりに気づいた二人は床を歩く音かと勘違いをする。
(おのれぇぇ!何処までも俺を!)
知らず知らずキャルティの神経を逆なでする二人は気づきもしなかった。
この場でキャルティが見ている事も。
(公爵夫人になれるのだぞ…貴様程度の女が!)
誰もが欲しがる栄誉が手に入るのに何故喜ばないのか、どうして好意を寄せないのかキャルティは不満に思った。
「私は心映えの美しい方が好きですわ」
「え?」
「フェルのように誠実な方がいい」
(なっ!)
本人が聞いている傍だとは知らずにオンディーヌは愚痴をこぼした。
この言葉が決定打となり、キャルティはオンディーヌに憎悪を抱いた。
そして、フェルリスにもその怒りの矛先が向けられるようになるのだった。
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