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第一章
23跡継ぎとしての資格
しおりを挟むこの国の法律では長男であっても無条件で当主になれるわけではない。
平民であっても色々と面倒な手続きがあり、後を継ぐ三年前に準備期間が行われる。
貴族であれば当然だった。
宮廷貴族と異なり領地持ちの貴族は領地を任された身である故に、当主として相応しい作法を身に着け、領地経営の勉強もしなくてはならない。
シェパードはそんな勉強をしなかった。
お父様に言われても受ける必要はないと言っていた。
「恐らく知らないのだろう」
「馬鹿ですね」
「ああ、当主になるのが面倒で良い所だけ取る気だったんだろう」
実際面倒な仕事はアンリに押し付けていた。
その所為か、隣近所の領主はアンリを時期当主だと思っていたし、他の領主がシェパードを認めるはずがない。
「子爵を賜るのだけでも成り上がりの商人からしたらどれだけ大変か解っていない」
「ええ」
「今のシェパードはただの子爵の子息にすぎない…いや、三か月後には男爵家の子息になる」
そうなるとシェパードの婚約者はどうなるのかしら?
子爵の子息と男爵の子息ではだいぶ違いがある。
男爵の爵位を持つ者は元平民が多いのだから。
「何があっても私は知らん」
「そうですね」
相手とそのご両親には詐欺だと言われたとしても私は知らないわ。
それだけの事を今までして来たのだから。
自業自得だし、援助を頼まれても私にその義務はない。
もう他人なのだから。
伯爵令嬢を妻に迎えて好きにしてくれたら良い。
「大丈夫だマリー、今なら私が守ってやれる。すまなかった」
「お父様…」
「不甲斐ない父で…ずっと君を守ってやれなくて」
どうしてお父様を責めることができるのか。
婿養子で姑にも厳しめで見られて当主であるのに侮られ、蔑まれて。
なのにお父様はずっと家族を、領民を守ってくれた。
「ありがとうございますお父様、でも、もうご自分の幸せを考えてください」
お父様は十分過ぎる程に家の犠牲になって来たのだから。
「私も大丈夫ですから」
「強くなったね」
「はい」
もう過去の弱い自分とサヨナラしなくては。
母親になってのだから。
その一週間後、お父様は王都内に邸に構えることになり、傍にいてくれた。
お父様に見守られる形で私は穏やかな暮らしを送ることができたけど、その一方で元実家ではひと騒動起きているなんて知るはずもなかった。
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